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荒若駅~そのブローチは私のもの~

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荒若駅~そのブローチは私のもの~

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2020年12月06日

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女子高生1

知ってる?あの駅のこと

女子高生2

え?何?

私たちの住む町の荒若には不思議な噂が立ち並ぶ。

カフェで二人の少女が話している事もこの町の噂の一つだ。

女子高生1

あの古い荒若駅の話よ。新しくできた方じゃないもの。若い女の幽霊が何かを探しているって噂の

一人の少女が怖い顔をして言い出すと、もう一人の子も

女子高生2

あっ知ってる!それで、長い髪の女の人が話しかけると線路に突き落とすとか

女子高生1

そうそう

少女たちは盛り上がっている。

誰も近づかないあの駅の話で

土山花梨

あ…

彼女たちの話を背中で聞きながら 土山花梨は 携帯の着信が来ていることに気づいた。

ごめん、少し遅くなる

それを見て幸せな顔をして花梨は返信メッセージを送る。

土山花梨

大丈夫、いつものカフェで待っているから

わかった

花梨は携帯の電源を切った。

土山花梨

(私、知ってるのよね。そのうわさ話)

思い出したくもないあの思い出。

目を閉じれば確か今日と同じまだ暑さの残る日だった。

遡れば10年前になる。

花梨は大学4年生の夏、 就職先も漸く決まり友人の平田美奈子と本条綾子と 夏休みの計画をたてていた。

私たちは恋バナが大好きで2年の時から何かと話をしていた。

相手は同じゼミで同じ班の蓮田孝。

花梨はそうでもなく二人の楽しそうな話をいつものカフェで聞いていた。

平田美奈子

今日ね、話せたんだよ

本条綾子

一緒に研究しようって誘ったらOK貰えちゃった

花梨

よかったね

楽しそうに 顔を赤くしながら話す二人は 同じ人を好きに なってはいたが私の忠告で、 努力はするけど どちらが勝っても 恨みっこは無しだと弁えていた。

だから、 一緒に研究を誘ったとしても 結局は私含めての4人で 行ったこともしばしばあった。 彼は誰に対しても優しく、 普段は女子とは なかなか話さない彼が この集まりに参加してくれる だけでも嬉しかった。

そんなある日、私たち三人は夏休みの計画をたてるべく居酒屋に集まった。

LINEで話せばいいものをわざわざ集まるのはただの理由付け。 計画なんぞ結局はLINEで済ますのだ。

平田美奈子

就職決まった?

本条綾子

まぁまぁかな~?花梨は?

花梨

私は決まったよ

平田美奈子

そうなんだ…

美奈子の顔が曇った

綾子が慌てて話題を逸らそうと

本条綾子

そういえば、今度ゼミで…

と慌てて話し始めた。

それからは卒業論文の進み具合に、 その内容についての他者目線の意見など基本的な内容は学校関係だ。 ゼミの話に戻ったり、 酔いが回った途端、常に授業に来ない学生の不平不満を言い出し、 好きな男子のいい所を並べ立てる。 これもいつもと同じだ。

だけどなぜか楽しい。

大笑いして、恋愛の進行状況を語って大泣きして、 自分には無理かもと泣き叫び、私がそれを宥める。

平田美奈子

好きな人がいるって言ってもうまくいくような気はしないの

本条綾子

それ分かるー!それに蓮田くんって結構モテるじゃない?

平田美奈子

そうなんだよねぇ~。花梨に取り繕ってもらって今グループにいてもらってるけど、それすらも大変だし。

本条綾子

でもさ、最近思ったんだけど

平田美奈子

何か進展あったの?

本条綾子

平田美奈子

どうしたのよ、遠慮せずにしゃべって

本条綾子

花梨

私にこっそり話すんでもいいけど?

本条綾子

ううん、ただね…その…

綾子は恥ずかしそうな顔をして話し始めた。

本条綾子

なんか、この頃気づいたんだけど。蓮田くんて美奈子と話すとき楽しそうだなって

平田美奈子

え?そんなことないよ。ただのチームだもん。…でもうれしいなぁ

本条綾子

なんかうらやましいな

平田美奈子

え?笑

そんなこんなで終電間際になった

本条綾子

私そろそろ帰らなきゃ。恨んでないし、お互い頑張ろうね

平田美奈子

そうだね。電車私はあと一個あるけど綾子は?

本条綾子

うーん、私はタクシーで帰る

花梨

じゃあ、私が美奈子を駅まで送ろうか?

平田美奈子

あ、本当?助かる~

本条綾子

ごめんね、私先に帰る

花梨

気を付けてね~

残された私たちは、一緒に駅に向かった。

私は美奈子を改札で見送り手を振って別れた。

花梨

おはよう

本条綾子

おはよう

花梨

昨日はちゃんと帰れた?二日酔い大丈夫?

本条綾子

私のメッセージを読んだのは一人だった

本条綾子

帰れたよ。タクシー代凄まじかった

綾子のメッセージに笑っていると リビングから母親の声が聞こえてきた

花梨、これ貴女の友達よね?

何かと降りてみると昼のニュースがテレビに映し出されていた。

それと同時に手に握るスマホから通知音が鳴り響く

荒若駅~そのブローチは私のもの~

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