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江藤ルミエール
195
111
#ミステリー
鬼霧宗作
61
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生徒たちの間に、張り詰めた沈黙が落ちた。
誰もが自分の携帯端末を見つめ、他人の番号を気にしている。
01。
02。
03。
早い番号を持つ者の顔は青ざめていた。
遅い番号を持つ者は、目を伏せていた。
凪津美は、震える詩鶴を横目で見た。
詩鶴の画面には、01。
自分の画面には、39。
花屋敷凪津美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
声が裏返った。
花屋敷凪津美
室内にざわめきが走った。
視線が、一斉に凪津美へ向く。
ついさっきまで胸の内に広がっていた安堵は、跡形もなく消えた。
細い脚が震える。
喉がひくつく。
唇が、意味もなく開いたり閉じたりしている。
花屋敷凪津美
凪津美は天井を仰ぎ、どこにいるかもわからない相手へ訴えた。
花屋敷凪津美
その声は、もう質問ではなかった。
助けを求める悲鳴に近かった。
【SYSTEM】
凪津美の顔から、血の気が引いていく。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
凪津美の目から、涙が零れた。
詩鶴を見て、自分ではなくてよかったと思っていた。
その感情が、今になって自分の喉を締めつける。
花屋敷凪津美
花屋敷凪津美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
凪津美は叫ぶように答えた。
震える脚を必死に動かし、テーブルの前へ進んでいく。
誰も彼女を止めなかった。
誰も近づかなかった。
同級生たちは、少し離れた場所から凪津美を見ていた。
これから死ぬかもしれない人間として。
凪津美の目の前に、ロボットが立っていた。
大きな人間を模した姿。
異様に長い両腕と、メタリックシルバーのボディ。
天井からの白い光を受け、表面が鋭く光っている。
ロボットの前のテーブルには、銀色のカップが3つ。
レモン色のピンポン玉が1つ。
あまりにも単純な道具だった。
だからこそ、逃げ道がなかった。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
3つの文字が、目まぐるしく点滅する。
凪津美は息を呑み、モニターを凝視した。
花屋敷凪津美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
時間だけが、正確に減っていく。
凪津美の指先が、手前のボタンの上で震えていた。
押さなければ、“速い”。
押しても、運。
花屋敷凪津美
凪津美は、祈るようにボタンを押した。
モニターの文字が止まる。
表示されたのは――
“速い”。
花屋敷凪津美
その声が消えるより早く、ロボットの右腕が動いた。
銀色の指がピンポン玉を摘む。
真ん中のカップへ入れる。
カップを裏返し、テーブルに置く。
次の瞬間――
3つのカップが、信じられない速度で動き始めた。
右へ。
左へ。
中央へ。
また右へ。
1秒間に4回も5回も、銀色の腕がカップを滑らせる。
目で追える速さではなかった。
花屋敷凪津美
花屋敷凪津美
カップが銀色の残像になっていく。
視界が揺れる。
呼吸が乱れる。
頭の中で、さっきまでの言葉が反響する。
花屋敷凪津美
10秒が経過した。
カップの動きが、ぴたりと止まる。
テーブルには、3つのカップが横一列に並んでいた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
指が動かない。
どれも同じに見える。
どれも違うように見える。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
【SYSTEM】
【SYSTEM】
凪津美は、ほとんど反射的に真ん中のカップを指さした。
花屋敷凪津美
人差し指が、小刻みに震えていた。
自信はなかった。
ただ、選ばなければ死ぬ。
だから選んだ。
それだけだった。
【SYSTEM】
ロボットの右腕が、ゆっくりと真ん中のカップを持ち上げる。
その動きだけが、やけに遅かった。
花屋敷凪津美
凪津美は両手を胸の前で握りしめた。
菜々美も、穂乃花も、他の生徒たちも、息を止めて見つめていた。
真ん中のカップの下には――
何もなかった。
花屋敷凪津美
白い天板だけが、そこにあった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
凪津美の口が、声にならない形で開いた。
【SYSTEM】
花屋敷凪津美
凪津美は月桂冠を掴み、必死に引き剥がそうとした。
爪が金属を掻く。
皮膚が赤くなる。
それでも、月桂冠はびくともしない。
彼女はふらふらと他の生徒たちの方へ歩き出した。
花屋敷凪津美
けれど、誰も近づけなかった。
助ける方法がないからではない。
自分まで巻き込まれる気がしたのだ。
月桂冠の中央に埋め込まれた白い球体が、激しく点滅している。
白。
白。
白。
その光が、彼女の涙を照らしていた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
ピーッ。
次の瞬間、凪津美の身体が硬直した。
花屋敷凪津美
目が見開かれる。
口元が歪む。
月桂冠を掴んだ両手が震える。
両耳から、鼻から、口元から、赤いものが流れ落ちた。
凪津美の腕が力を失う。
だらりと垂れた。
細い身体が、後ろへ傾く。
そのまま、凪津美は床に倒れた。
生徒たち
悲鳴が弾けた。
生徒たちは、倒れた凪津美から一斉に離れていく。
誰かが泣いていた。
誰かが吐きそうになっていた。
誰かが、目を閉じたまま震えていた。
菜々美は、動けなかった。
さっきまで話していた少女が、床に倒れている。
怒っていた。
怯えていた。
助けを求めていた。
そのすべてが、たった10秒で止まった。
【SYSTEM】
何事もなかったように、声が続いた。
ロボットの右腕が動く。
残された2つのうち、右のカップを持ち上げる。
そこに、ピンポン玉があった。
レモン色の、小さく、何の感情もない球体が。
【SYSTEM】
白い壁の中央が、音もなく開いた。
そこから、人型の白い光の塊が2体現れる。
光の人影たちは凪津美に近づき、動かないことを確かめた。
1体が両脇を。
もう1体が両脚を掴む。
凪津美の身体が、物のように持ち上げられた。
頭が傾く。
髪が揺れる。
開いた目は、どこも見ていない。
その死に顔には、最後の恐怖だけが貼りついていた。
白い光の人影たちは、凪津美を抱えて壁の向こうへ消えた。
誰も声を出せなかった。
凪津美がいた場所には、何も残らない。
床に落ちた数滴の赤だけが、彼女がここにいたことを示していた。
菜々美は、その赤を見つめた。
そして初めて理解した。
このゲームでは、人は死ぬ。
本当に。
簡単に。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
コメント
1件
凪津美ちゃんが「39番だから大丈夫」って安堵してたのに、まさかの最初に呼ばれて…あの絶望の落とし方が怖すぎました。カップの前で祈るように指をさして、「何もなかった」瞬間の描写が目に焼きついています。さっきまで「助かった」って思ってた人が、たった10秒で消える重さにゾッとしました…続き、読ませてください🤍🥀