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コメント
1件
うわ、心に来た……。玖玖瑠、最後にウサコちゃん呼びながら倒れるとこ、めっちゃグッときた。あの幼い名前を叫ぶ感じが、彼女の孤独とか防衛みたいなのを全部表してて、読んでて胸が痛かったわ。菜々美が一人だけ名前を覚えてる描写も、この世界の残酷さを引き立ててる。「誰だっけ」って言われる虚しさ、やばい。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
武藤玖玖瑠
勢いよく右手を挙げたのは、生徒ナンバー34・武藤玖玖瑠だった。
赤い縁の洒落た眼鏡を愛用する、“眼鏡っ娘4人組”の1人。
素直な優等生タイプだが、引っ込み思案で、なかなか親友を作れない少女でもある。
そして、玖玖瑠には誰にも言っていない趣味があった。
美少女フィギュアの収集。
特にお気に入りなのは、ローティーンに人気のアニメキャラクターである“ウサコちゃん”だった。
武藤玖玖瑠
心の奥から染み出す恐怖を、玖玖瑠は懸命に押し込めた。
顔は強張り、足は震えている。
それでも、唇を噛みしめてテーブルへ歩き出した。
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
そう言い聞かせながら、玖玖瑠はテーブルの前まで辿り着いた。
目の前には、3つのカップとピンポン玉。
その奥には、鈍い銀色のロボットが立っている。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
3つの文字が、目まぐるしく点滅する。
玖玖瑠は、表示が完全にシャッフルされるのを待てなかった。
待てば、余計に怖くなる。
迷えば、押せなくなる。
そう思った瞬間、勢いよくボタンを押した。
モニターの文字が止まる。
表示されたのは――
“普通”。
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
ロボットの両腕が動いた。
銀色の指がピンポン玉を摘み、中央のカップへ入れる。
そのままカップを伏せた。
3つのカップが左右に動き始めた。
先ほどの凪津美の時とは違う。
1秒間に1、2回ほど。
決して遅くはない。
けれど、目で追えないほどでもなかった。
玖玖瑠は必死に見つめた。
右。
真ん中。
左。
カップが滑る。
銀色の腕が動く。
白いテーブルの上で、3つの影が入れ替わる。
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
ロボットの腕が止まった。
3つのカップが、横一列に並んでいる。
【SYSTEM】
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
玖玖瑠は、虚勢を張るように左手を腰に当てた。
自分から見て左のカップを右手で指さし、声を張り上げる。
武藤玖玖瑠
その声は、思ったより大きく響いた。
強く見せたい。
怖がっていないように見せたい。
そうしなければ、そこに立っていられなかった。
【SYSTEM】
ロボットの右腕が、玖玖瑠から見て左のカップをゆっくり持ち上げる。
武藤玖玖瑠
武藤玖玖瑠
カップが持ち上がる。
その下には――
何もなかった。
武藤玖玖瑠
白い天板だけが見えた。
玖玖瑠は、左手を腰に当て、右手でカップのあった場所を指したまま固まった。
姿勢だけが、自信満々だった。
表情が、遅れて壊れていく。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
玖玖瑠の全身から、冷や汗が吹き出した。
顔がみるみる引きつっていく。
同時に、月桂冠の白い球体が点滅を始めた。
武藤玖玖瑠
先ほどまでの虚勢は、一瞬で崩れた。
玖玖瑠は月桂冠を外そうとしながら、取り乱して周囲を見回した。
誰かに助けを求めたい。
けれど、誰の目もまっすぐには見られない。
助けてくれる人など、ここにはいない。
彼女自身、もうわかっていた。
武藤玖玖瑠
言葉が、途中で潰れた。
凪津美の時と同じだった。
両耳から。
鼻から。
口元から。
赤いものが流れ始める。
玖玖瑠の目が大きく見開かれた。
月桂冠を掴んだ手が震える。
そして、細い身体が力を失った。
どさり、と床に倒れる。
衝撃で、眼鏡が床に落ちた。
誰かが短く悲鳴を上げた。
誰かが、声も出せずに口元を押さえた。
菜々美は、玖玖瑠の赤い縁の眼鏡を見ていた。
床に落ちた眼鏡。
歪んだフレーム。
その奥で、動かなくなった少女。
ついさっきまで、その子は何かを信じようとしていた。
自分の運。
自分の未来。
たぶん、誰にも言えない小さな支え。
それが何だったのか、菜々美にはわからない。
けれど、最後に叫んだ名前だけは耳に残っていた。
ウサコちゃん。
誰なのかもわからない。
でも、その響きだけが妙に幼くて、哀しかった。
白い壁の中央が、音もなく開いた。
そこから、人型の白い光の塊が2体現れる。
光の人影たちは玖玖瑠に近づき、動かないことを確かめた。
1体が両脇を。
もう1体が両脚を掴む。
玖玖瑠の身体が、物のように持ち上げられた。
赤い眼鏡が、床に残る。
生徒の誰か
菜々美は、その言葉に息を止めた。
誰。
今、目の前で死んだばかりなのに。
赤い眼鏡。
震えた声。
押し殺していた恐怖。
最後に叫んだ、幼い名前。
菜々美は覚えている。
けれど、その生徒は名前を言えなかった。
隣で、穂乃花が眉を寄せる。
新倉穂乃花
その声には、確信がなかった。
生島菜々美
菜々美は小さく呟いた。
口にした瞬間、その名前だけが、自分の中で重く沈んだ。
白い光の人影たちは、玖玖瑠を抱えたまま、壁の向こうへ消えていく。
床には、赤い眼鏡と数滴の血だけが残された。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
#デスゲーム
りんご
747
江藤ルミエール
195
#ネタバレ注意