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お節介アゲハと弱虫ヒナタ

第8話 - チャンス

228

2022年09月11日

#ドラマ

#青春恋愛

#高校生

#一次創作

#第3回テノコン

×××

翌日

日向志津香

奏星遅いわね・・・

日向志津香

いつもは今頃
弁当作ってる頃なのに

日向志津香

まだ寝てるのかしら？

奏星は朝になっても部屋に閉じこもったままリビングに顔を見せなかった

日向康文

・・・・・

康文は朝食を口に運ぶが昨日の事が気がかりなようで口には入らずテーブルにこぼす

日向綾星

パパ！こぼし過ぎ！

日向康文

あ、ああ、ごめん

日向志津香

・・・・・

日向綾星

お姉ちゃん・・
部屋から出てこないね？

日向康文

まだ寝てるのかな？
あはは！まったく
困ったもんだ！あはは

日向康文

あは・・はは・・

日向康文

・・・・・

日向康文

やっぱ・・昨日のが
原因なのかな？

日向志津香

たぶんね

日向康文

やっぱり・・そうかな？

日向綾星

パパのせいだよ！絶対！

日向康文

うぐっ・・・

日向志津香

どうする？

日向志津香

話しに行く？自分で

日向康文

あ、いや──

日向志津香

当然いくわよね？自分で

日向志津香

あなたが原因だものね

日向康文

あ、いや、その

日向康文

えっと、あの

日向康文

お願いします

日向志津香

まったく・・・

日向志津香

こういう時の男って
ホント頼りないわよね

日向綾星

頼りないわよね！

日向康文

ダブルパンチは
やめてくれよ・・・

コンコン

志津香は奏星の部屋のドアをノックする

日向志津香

奏星？起きてる？

日向志津香

早く出なきゃ遅刻よ？

日向奏星

行きたくないっ！

日向志津香

え？

日向奏星

今日は学校休むっ！

日向志津香

あんたねぇ・・・

日向奏星

だって・・・
どんな顔して

日向奏星

揚羽くんに会えばいいか
分からないんだもん・・

日向志津香

素直に言えば
良いじゃないのよ！

日向志津香

あれはパパの
勘違いだったって！

日向奏星

でも揚羽くんに
無視されたりしたら？

日向志津香

無視って・・・

日向奏星

だってそうでしょ？

日向奏星

絶対嫌われちゃったもん

日向奏星

無視されるかも
しれないじゃん！

日向奏星

もしそうなったら・・
私・・立ち直れないよ

日向志津香

奏星？あなた・・・
よく揚羽くんの話を
してくれるわよね？

日向奏星

う、うん・・・

日向志津香

お昼を一緒に食べようって
誘ってくれた！とか

日向志津香

お弁当を褒めてくれた！とか

日向志津香

色々話してくれたわよね？

日向奏星

それがどうしたの？

日向志津香

私が思うに、揚羽くんって

日向志津香

昨日の事を恨んで
奏星を無視するような子
だとは思えないんだけど

日向志津香

奏星どう思う？

日向志津香

私より奏星の方が
揚羽くんについては
詳しいでしょ？

日向志津香

揚羽くんは奏星を
無視するような人なの？

日向奏星

ち、違う・・・

日向奏星

揚羽くんは
そんは事しない・・・

日向志津香

だったらそんな心配する
必要なんてないじゃない

日向志津香

もう答えは
出てるじゃない

日向奏星

そう・・だけど・・

日向志津香

大丈夫よ！

日向志津香

分かってくるってば！

日向志津香

ね？綾星？

日向綾星

そうだよ！お姉ちゃん！

日向綾星

揚羽お兄ちゃんは
許してくれるよ！

日向綾星

絶対に許してくれるっ！

日向綾星

大丈夫だよ！！

ガチャ

日向奏星

・・・・・

日向奏星

マ、ママ・・・

日向志津香

なぁに？

日向奏星

私・・・

日向奏星

揚羽くんに
ちゃんと話す！

日向奏星

パパの勘違いだったって
正直に話すっ！

日向志津香

そう！そうよ奏星！

日向志津香

ちゃんと話せば
分かってくれるから！

日向奏星

うん・・・

日向志津香

ホラ！顔洗ってきなさい！

志津香は奏星の背中をバジンと手のひらで叩く

日向奏星

う、うん・・・

日向康文

奏星・・・

康文が申し訳なさそうに隅で縮こまっている

日向康文

なんか・・ごめんなぁ

日向奏星

パパ・・・

日向康文

あの・・その・・なんだ

日向康文

まだパパの事・・

日向康文

嫌いか？

日向奏星

うん・・嫌い

日向康文

うぐっ・・・

日向志津香

ふふふ

日向奏星

パパの事はまだ
許してないから

日向奏星

でも・・・

日向奏星

揚羽くんは昨日の事は
話せば分かってくれる
って思うから

日向奏星

揚羽くんが許してくれたら
私もパパの許す

日向康文

そ、そうか・・・

日向奏星

じゃあ顔洗ってから
学校行ってくるね

日向志津香

うん♫行ってらっしゃい♫

日向志津香

綾星も！ホラ！
遅れちゃうわよ！

日向綾星

はぁーい♫

日向奏星

・・・・・

日向綾星

大丈夫だよ！
お姉ちゃん！

日向綾星

揚羽お兄ちゃんなら
分かってくれるから！

日向奏星

そう・・かもだけど

日向綾星

私は分かってくれるって
信じてるのに

日向綾星

お姉ちゃんは
信じてないの？

日向奏星

いや・・・

日向綾星

なら私の勝ちかな？

日向奏星

勝ち？何よ勝ちって

日向綾星

なんでもない！

日向綾星

じゃあお姉ちゃん！
私こっちだから！

日向奏星

う、うん・・・

日向綾星

お姉ちゃん！

日向綾星

頑張ってね！

日向奏星

あ、ありがとう・・

日向奏星

・・・・・

日向奏星

頼りない
お姉ちゃんだな、私

奏星は教室前の廊下で右往左往している

日向奏星

（はぁ〜どうしよ）

日向奏星

（揚羽くんに
なんて声かけよう・・）

日向奏星

（でも大丈夫だよね）

日向奏星

（きっと揚羽くんの事だから）

日向奏星

（昨日はごめんな？とか）

日向奏星

（そんな風な事
言ってくれるよね）

和久井龍也

日向？何やってんだ？

和久井龍也

教室の前でウロウロして

日向奏星

あ、和久井くん・・

和久井龍也

入らねーの？教室

日向奏星

あ、うん、入るよ！
うん、今入るとこ・・

和久井龍也

ふー・・ん

和久井龍也

（なんか挙動不審じゃね？）

ガラガラ

奏星と龍也が教室へ入るがそこには凛太郎の姿はなかった

和久井龍也

あら？リンのヤツ
まだ来てねーのか

和久井龍也

この時間に
来てねーなんて
珍しいな

日向奏星

あっ！そう言えば
いつも一緒に登校
してるんじゃないの？

和久井龍也

まぁ、いつもじゃ
ねーけどな

和久井龍也

別々な日もあるよ

日向奏星

そっか・・・

和久井龍也

どうかしたのか？
そんなにリンに
会いたかったか？

日向奏星

ち、違うっ！
そうじゃなくって

和久井龍也

何かあったのか？

日向奏星

実は昨日ね・・・

奏星は龍也に昨日の家での出来事をすべて話した

和久井龍也

へぇ、そんな事が・・

日向奏星

だから、その
どうしても揚羽くんに
謝りたくて・・・

和久井龍也

んな事、リンは
気にしてねーよ

日向奏星

で、でも・・・

和久井龍也

そんな泣きそうな
顔すんなって！

和久井龍也

大丈夫だって！

日向奏星

そ、そうかな？

和久井龍也

心配なら電話してみっか？

日向奏星

え？いいの？

和久井龍也

ああ！ちょっと待ってろ

龍也はポケットからスマホを取り出し凛太郎に電話をかける

しかし何度かコールが鳴ろうとも凛太郎が電話に出る気配がない

和久井龍也

あら？おかしいなぁ

日向奏星

揚羽くん、出ないの？

和久井龍也

ああ！いつもだったら
すぐに出るんだけどなぁ

和久井龍也

あっ！出た！

和久井龍也

よう！リン！

揚羽凛太郎

ああ・・龍也か・・

和久井龍也

お前、どうしたんだ？

和久井龍也

学校来てんのか？

揚羽凛太郎

いや・・今日は無理だ

和久井龍也

どうしたんだ？

揚羽凛太郎

ゴホッ！ゴホッ！

揚羽凛太郎

盛大に風邪ひいた・・ゴホッ！

和久井龍也

はぁ？風邪？

揚羽凛太郎

ああ、昨日の雨の
せいだと思う・・多分

和久井龍也

何やってんだよお前！

日向奏星

ど、どうしたの？

和久井龍也

あ、リン！
ちょっと待ってくれ

和久井龍也

どうした？日向

日向奏星

今風邪って言ったけど

日向奏星

揚羽くんって
風邪ひいちゃったの？

和久井龍也

ああ！そうみたい！

和久井龍也

昨日の雨に打たれたのが
原因っぽいよ・・・

日向奏星

和久井くん！
スマホ貸して！

和久井龍也

え？

日向奏星

揚羽くんと話したい

和久井龍也

ああ！分かった！

和久井龍也

リン！ちょっと
日向に変わるわ！

和久井龍也

ああ！なんか
話したい事があるみてぇだ

和久井龍也

ああ！だから変わるわ！

和久井龍也

はい！日向！

龍也は奏星にスマホを渡す

日向奏星

ありがとう

日向奏星

揚羽くん？大丈夫？

揚羽凛太郎

ああ・・日向か

揚羽凛太郎

なんか・・昨日はごめんな

揚羽凛太郎

俺のせいで雰囲気
悪くなってないかな？

揚羽凛太郎

大丈夫？

日向奏星

そんな心配いいからっ！

日向奏星

自分の心配しなきゃ！

日向奏星

薬は飲んだの？
病院は？行ったの？

揚羽凛太郎

ああ、一応
市販の薬飲んだから

揚羽凛太郎

今はベッドで寝てる

日向奏星

ちゃんと暖かい恰好して
寝なきゃダメだよ？

揚羽凛太郎

あはははは

揚羽凛太郎

小学生じゃないんだから！

揚羽凛太郎

でも心配してくれて
ありがとう日向！

揚羽凛太郎

多分明日には
治ってると思うからさ

日向奏星

そっか・・・

揚羽凛太郎

だから、頼みがあるんだ

日向奏星

なに？何でも言って

揚羽凛太郎

俺の代わりに先生に
俺が休むって
伝えてくんないかな？

揚羽凛太郎

自分で言わなきゃだけど
気力がなくってさ

日向奏星

わかった！伝えとく！

揚羽凛太郎

悪いな日向！

揚羽凛太郎

こんな事
頼んじゃって！

日向奏星

そんなの
謝らなくていいよ

揚羽凛太郎

じゃあ俺は寝るわ

日向奏星

お大事にね！揚羽くん

揚羽凛太郎

うん・・ありがと

和久井龍也

リンはなんだって？

日向奏星

今日は休むって

和久井龍也

そっか・・・

日向奏星

やっぱり昨日、私が
無理矢理にでも
傘渡しとけば・・・

和久井龍也

いやいや、それは
関係ねーよ！

和久井龍也

あいつが帰った後に
ちゃんと体拭かずに
寝ちまったんだよ

日向奏星

でも・・・

和久井龍也

そんなに自分を
責めてんじゃねぇよ

和久井龍也

リンが居たら

和久井龍也

「日向！そんなに
自分を責めちゃダメだ！」

和久井龍也

「ホラ！いつもみたいに
笑ってくれよ」

和久井龍也

とかって言ってるよ！きっと

日向奏星

そうだといいけど・・・

昼休み

教室で美咲と共に昼食のパンを食べる奏星は終始うつむいたまま元気がない

姫川美咲

奏星？

日向奏星

・・・・・

姫川美咲

おーい！奏星！

日向奏星

・・・・・

姫川美咲

奏星ってば！ねぇ！

日向奏星

あっ！美咲！
ど、どうしたの？

姫川美咲

いや、それは
コッチのセリフだし

姫川美咲

ボーっとして
どうしたの？

姫川美咲

なんか暗いし・・

日向奏星

そ、そうかな？

日向奏星

そんな事ないよ

姫川美咲

いや、明らかに
いつもと違いすぎだよ？

姫川美咲

今日だっていつもの
手作り弁当じゃなくて
売店で買ったパンだし

日向奏星

その、時間がなくて

姫川美咲

まさか、誰かにいじめ
られたりしてるとか？

姫川美咲

もしそうなら私が──

日向奏星

違う・・・

日向奏星

そうじゃ無いんだけど

姫川美咲

無いんだけど？なに？

姫川美咲

ふーん

姫川美咲

そんな事があったんだ

日向奏星

けど・・・

姫川美咲

何？まだ何かあるの？

姫川美咲

だって揚羽くんは
許してくれたんでしょ？

姫川美咲

他に何を心配する
必要があるの？

日向奏星

いや、それはもう
悩んでないんだけど

日向奏星

揚羽くんが心配で

日向奏星

だってホラ！揚羽くんって
一人暮らしらしいから

姫川美咲

ああ、そういう事

日向奏星

一人で大丈夫かなぁって

姫川美咲

ならお見舞いに
行ってあげたら？

姫川美咲

あ！そうだ！
学校抜け出して
今から行っちゃえ！

日向奏星

え？抜け出すの？

日向奏星

そんなのまるで
不良じゃん！

姫川美咲

え？だって奏星は
揚羽くんが
心配なんでしょ？

日向奏星

そうだけど・・・

日向奏星

学校抜け出すのは

姫川美咲

じゃあ私が
行っちゃおうかなぁ

日向奏星

え？

姫川美咲

そうだよねぇ。
真面目な奏星には
学校抜け出すとか

姫川美咲

そんな事
出来ないよねぇ

日向奏星

むっ！

姫川美咲

私がお見舞いして
看病してあげてぇー

姫川美咲

誰も邪魔されない
二人っきりの部屋でぇー

姫川美咲

あんな事やこんな事
しちゃおっかなぁー

姫川美咲

きゃー❤️

日向奏星

だ、ダメだよ！
そんな事！

日向奏星

ふ、不純だよ！不純！

姫川美咲

なにが不純よ！
これは愛よ！純愛！

日向奏星

でも・・・

姫川美咲

いや、だって心配だし

姫川美咲

奏星は心配じゃないの？
揚羽くんの事

日向奏星

そりゃ心配じゃないって
言ったら嘘になるけど・・

姫川美咲

なのに行かないんでしょ？

姫川美咲

だから私が代わりに──

日向奏星

私・・行ってくるっ！

姫川美咲

え？

日向奏星

私・・揚羽くんの
看病してあげたいっ！

姫川美咲

（やっとその気になったか）

姫川美咲

（まったく奥手なんだから）

姫川美咲

うん！うん！
それがいいよ！

姫川美咲

揚羽くんだって
きっと喜んでくれるって！

日向奏星

そ、そうかなぁ・・？

姫川美咲

ホラ！チャンスじゃん！
揚羽くんとの距離を
一気に縮めるチャンス！

日向奏星

チャンスって・・

日向奏星

それってなんか
卑怯じゃ無い？

姫川美咲

何言ってんのよ！
こういうのは
早い者勝ちよ！

日向奏星

そうかもだけど・・

姫川美咲

なら奏星はいいの？

姫川美咲

揚羽くんが自分とは
別の女の子と
付き合ったりしても

日向奏星

それは・・・

日向奏星

いや、てか何で
そんな話になってんの？

姫川美咲

え？

日向奏星

わ、私はただ

日向奏星

友達の揚羽くんが
心配だから看病を──

姫川美咲

はぁ〜・・・

美咲は呆れたように大きくため息をつく

日向奏星

な、なに？

姫川美咲

奏星・・バレバレ

日向奏星

え？

姫川美咲

嘘下手くそ過ぎ

日向奏星

・・・・・

姫川美咲

揚羽くんの事──

姫川美咲

好きなんでしょ？

日向奏星

・・・・・

日向奏星

う、うん・・・

日向奏星

好き・・・

奏星は顔を真っ赤に染めながら恥ずかしそうにうなずく

姫川美咲

ならこのチャンスを
利用するしかないじゃん！

日向奏星

だからその
利用って言い方が！

姫川美咲

大丈夫よ！

姫川美咲

男なんて単純なんだし！

姫川美咲

弱ってる時に
優しくされたりしたら

姫川美咲

普段意識してない相手でも

姫川美咲

好きになったり
しちゃうものだから！

日向奏星

そういうもんかなぁ

姫川美咲

可愛い奏星が
お粥なんか
作ったあげたりして

姫川美咲

食べさせてあげたりなんか
しちゃったりしたら、もう

姫川美咲

きゃー❤️

姫川美咲

イチコロよ！イチコロっ！

日向奏星

（イチコロ・・・）

姫川美咲

だから！さっさと
行ってあげなよ！

日向奏星

でも、先生に
何て言えば

姫川美咲

バカねー奏星は

日向奏星

え？

姫川美咲

黙って行く以外に
ないっしょー！

日向奏星

だ、黙って？

姫川美咲

あとは私たちが
テキトーに言っとくから

日向奏星

で、でも・・・

姫川美咲

ほら！さっさと行く！

日向奏星

ごめん！ありがと美咲！

日向奏星

私！行ってくるっ！

奏星は素早くバックを肩に背負い教室から走って出て行く

ガラガラ

姫川美咲

ったく奏星は・・

姫川美咲

ここまで言わなきゃ
動かないんだから！

姫川美咲

まぁ、これで
奏星も一歩前進かな

姫川美咲

てか奏星可愛すぎ

和久井龍也

あれ？日向？

日向奏星

（あっ、和久井くん）

和久井龍也

どうかしたのか？

日向奏星

えっと、その・・・

日向奏星

ごめん！今日は見逃して！

奏星は逃げるように外に走って行く

和久井龍也

どうしたんだ？
日向のヤツ・・・

クラスメイトA

でも美咲、いいの？

姫川美咲

なにが？

クラスメイトA

だって美咲は揚羽くんの事
好きだったんじゃないの？

クラスメイトB

そう！そう！いいの？
敵に塩送る真似して！

姫川美咲

まぁ、奏星は料理も
上手いし、可愛いし

姫川美咲

私が勝てる要素なんて
なにひとつ無いからさぁ

姫川美咲

揚羽くんには
奏星がお似合いだよ

姫川美咲

悔しいけど揚羽くんの事は
奏星に譲る事にしたの！

和久井龍也

なぁ姫川！

姫川美咲

なによ！

和久井龍也

さっきさ！日向が
急いで外に出て
行ったんだけどさ

和久井龍也

なんか知ってる？

姫川美咲

あんたに関係ないでしょ？

和久井龍也

まさかお前！また
日向何か言ったんじゃ
ねーだろーな！

姫川美咲

失礼ね！違うわよ！

姫川美咲

揚羽くんの看病して
あげたいんだって！

和久井龍也

リンの看病？

和久井龍也

ああ！それで学校
抜け出したのか！あいつ！

和久井龍也

なんか焚き付けるような事
言ったんじゃね？

姫川美咲

失敬ね！私はただ
奏星の恋を純粋に
応援したいだけよ

和久井龍也

ならいいけどさ

和久井龍也

つーか日向のヤツ
リンの住所知ってんのかな？

姫川美咲

あっ・・・

姫川美咲

た、たしかに・・・

和久井龍也

まさか日向のヤツ
何も考えないで
出て行ったのかな？

姫川美咲

あり得る・・・

日向奏星

あー！どうしよ

日向奏星

肝心な住所を
聞くの忘れちゃった

日向奏星

私の家よりちょっと
先って事しか知らない

日向奏星

わぁーどうしたら・・・

常盤小雪

話は聞いたわよ

姫川美咲

げっ！常盤！

和久井龍也

やばっ！

常盤小雪

まったく日向さん

常盤小雪

学校抜け出すなんて・・

姫川美咲

先生！お願い！
今回は見逃して！ね？

姫川美咲

奏星の恋の為に！
ね？お願いします！

奏星は両手を合わせて見逃すように懇願する

常盤小雪

・・・・・

しかし小雪はポケットからスマホを取り出しどこかに連絡をする

姫川美咲

ちょ！先生？

常盤小雪

日向さんに
電話してるのよ

姫川美咲

だから──

常盤小雪

揚羽くんの住所を
教えてあげるのよ！

姫川美咲

せ、先生♫

常盤小雪

仕方ないから今回は
見逃してあげるわよ

常盤小雪

でも、次は無いからね？

姫川美咲

ありがとう！先生！

日向奏星

あー！先生から電話だぁ

日向奏星

多分バレちゃったんだ

日向奏星

あーもう！どうしよ・・・

常盤小雪

日向さん・・出ないわね

姫川美咲

多分先生に
怒られるって
思ってるのかな？

和久井龍也

それあるかもな

常盤小雪

まったく・・

常盤小雪

あ！出た！

日向奏星

も、もしもし・・・

奏星はか細い声で電話に出る

常盤小雪

もしもし？
日向さん？

日向奏星

せ、先生・・・

日向奏星

あの・・・

常盤小雪

姫川さんから
話は聞いたわよ！

日向奏星

すいません・・

常盤小雪

まったく何考えてるのよ

日向奏星

・・・・・

常盤小雪

揚羽くんの住所
知らないのに
突っ走らないの！

日向奏星

え？

常盤小雪

揚羽くんの住所
教えてあげるから！

日向奏星

先生・・・

日向奏星

お、怒らないんですか？

日向奏星

私・・学校を
抜け出して・・・

常盤小雪

その事は後日
たっぷり怒ってあげる！

日向奏星

はい・・・

常盤小雪

でもまぁ、なんだ

常盤小雪

揚羽くんを看病
してあげたいって

常盤小雪

日向さんの気持ちも
理解できる

常盤小雪

だから今だけは
何も言わないわ！

日向奏星

ありがとうございます

常盤小雪

今言ってもいい？

日向奏星

はい！

常盤小雪

揚羽くんの住所は──

姫川美咲

先生！ありがとう！

常盤小雪

あなた達も！友達なら
止めてあげなさいよ！

姫川美咲

いや、友達だからこそ
奏星の恋を応援して
あげたいんですよ！！

常盤小雪

まったく・・・

和久井龍也

てか、常盤先生？

常盤小雪

なに？

和久井龍也

思ったんスけど──

和久井龍也

教師が生徒の
個人情報教えるのって

和久井龍也

マズイんじゃ
ないっスか？

和久井龍也

大丈夫なんスか？

常盤小雪

・・・・・

姫川美咲

・・・・・

和久井龍也

・・・・・

常盤小雪

ま、全く
考えてなかった

和久井龍也

ま、まぁ、先生が
日向にリンの住所
教えたのは

和久井龍也

教室にいる俺らしか
しりませんし

姫川美咲

まぁ、私たちが
黙ってればバレないし

常盤小雪

黙っててくれる？

姫川美咲

はい！もちろん！

姫川美咲

先生のおかげで奏星も
勇気振り絞れたし

和久井龍也

まぁ、俺も
黙っときますよ

常盤小雪

た、助かるわ

小雪は額からじわっと溢れる汗をハンカチで拭う

姫川美咲

でも、ちょっと
意外でした

常盤小雪

え？

姫川美咲

先生ってもっと
なんか・・こう

姫川美咲

規律を重んじる
厳しい先生って
イメージだったんで

常盤小雪

ま、まぁ、あれよ

常盤小雪

た、たまにはね

和久井龍也

まぁ、したことは
褒められた事じゃ──

姫川美咲

アンタは
一言余計なの！

美咲は龍也の尻を蹴る

和久井龍也

あー！先生！

和久井龍也

姫川さんに
虐められました

姫川美咲

うっさい！

常盤小雪

さ！そんな事より

和久井龍也

（そんな事・・・）

常盤小雪

午後からもしっかりね

姫川美咲

はぁーい♫

和久井龍也

はいはーい

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