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神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。

『旧約聖書』3章24節

このクラスは、何かがおかしい

先日、同級生が死んだ

事故だった

僕ら生徒たちの動揺が激しかったため、1週間ほど高校は休みになった

その間に

担任が自殺した

教え子の死にショックを受けて?

だけど、それは本当に自殺だったのだろうか?

御上玲司

おい、席につけ

拓海

コソ(おい、あれって……)

コソ(うん、新しい担任らしいよ)

拓海

コソ(もともとうちにいた先生じゃないよな?)

コソ(たぶんね あんな人いたら、絶対気づいてるはず)

御上玲司

何をこそこそ話している?

(おっと あとでな、拓海)

拓海

(おう)

御上玲司

今日からこの2年A組の担任になった ミカミ・レイジ だ

御上玲司

担当は英語だ

御上玲司

では授業を始める

こうして学校はこの見知らぬ先生の訪れとともに再開された

だけど教室は、いやもしかしたら学校中が

なんともいえない異様な空気に包まれていた――

放課後

はぁ なんか疲れたな

拓海、帰ろうぜ

拓海

あー、すまん!

拓海

今日はちょっと用事が出来ちまって

拓海

先に帰ってくれ

そうか わかった

それにしても、新しい先生、

「御上」って名前だから、日本人だよな

どこか、日本人離れしてるっていうか、人種不明っていうか

まあ変わった人だったな

それに拓海のやつ 用事ってなんだったんだろ

明日聞いてみるか

実は今日はいっしょに帰りたかった

というのも――

ここを通るのが近道なんだよなぁ……

そこはほとんど人の通らない森の道

普段でも、帰りが遅くなるとちょっと怖い

ましてや、こんな日は――

けど、ここを通らないと

20分は余分にかかるんだよなぁ

えーい、何を怖がってるんだ、僕は!

いくぞ!

ガサガサッ

ヒッ

拓海

おい!

なんだ、拓海か

おどかすなよ

拓海

それどころじゃないんだ、こっちにきてくれ!

な、なんだよ

拓海

急いでくれ!

何なんだよ!?

拓海

ここに隠れよう

そこは、森の中の小さな祠だった

隠れるって?

拓海、いったいどうしたんだよ

拓海

説明している暇はないんだ! 早く中に入ってくれ!

誰かに追われているのか?

拓海

いいから静かにしろ。くるぞ

僕らは祠の中で息を殺していた

そこに現われたのは……

御上玲司

…………

(先生!?)

御上玲司

呼吸音が ひ と つ

御上玲司

隠れるのなら 一人でやるべきだったな

拓海

(助けてくれ、実は先生に追われているんだ)

(追われているって、どういうことだよ?)

御上玲司

出てこい

………

拓海

…………

御上玲司

出てこないのなら、こちらから行くぞ

そういうと突然扉がバンッと開いた

う、うわ……

御上玲司

お前は確か……秋川光(あきかわ ひかり)だったな

御上玲司

秋川、そこをどけ

拓海

秋川助けてくれ! こいつ、人殺しだ!

ひ、人殺し? 先生が?

何が起きているんだ? 僕は混乱してしまった

けれど、そのときふと違和感があった

た、拓海? お前、拓海だよな?

拓海

なんだよ、こんなときに!?

いや、だって

お前、僕のこと「光」って呼ぶだろ? 急に秋川って、どうしたんだ?

拓海

…………

御上玲司

いかん、伏せろ、秋川!

!?

先生の鋭い声に僕は思わず伏せてしまった

そのとき、僕は見てしまった

拓海の、普段とはまるで違う、獣のような眼差しと、

僕を掴もうとして空を切ったその腕を。

拓海

チッ 避けられたか

た、拓海?

御上玲司

離れろ秋川 そいつは加藤拓海ではない

そう言いながら先生は懐から何かを取り出し――

ガンッガンッガンッ

三度響いたそれは――

銃声? なのか?

拓海

グゥ!

御上玲司

そいつは――

御上玲司

<死人>だ

ガンッガンッガンッ

拓海

グハッ

た、拓海! 大丈夫か!?

だが先生の銃弾は確実に拓海にヒットしており

吹き飛ばされた拓海は半分頭がなかった

それでも――

拓海

グォォォォォ!!

拓海は立ち上がり、こちらに向かってきた

御上玲司

離れていろ

うわっ

先生は僕を片手でつかむと、かるがると後ろに投げた

ガンッガンッガンッ ガンッガンッガンッ

御上玲司

3点バーストで殺傷力をあげても牽制にしかならんか

御上玲司

まあいい

そういうと先生は銃を捨て、懐から十字架を――

いや、十字架にしては一ヶ所だけが長く伸びていた。それは

十字架型の剣!?

御上玲司

天軍の栄えある総帥、大天使聖ミカエルよ

拓海

グオォォ!

先生は拓海の攻撃をかわしつつ、何かを唱え始めた

御上玲司

かつて悪魔の大軍が全能なる天主に反きし時

御上玲司

御身は『たれか天主にしくものあらん』と叫び

御上玲司

あまたの天使を率いてかれらを地獄の淵に追い落とし給えり

御上玲司

故に我らは御身をその保護者となし、守護者と崇め奉る

御上玲司

願わくは霊戦に当りてわれらを助け、悪魔を退け給え

御上玲司

われらをして御身にならいて

御上玲司

常に天主に忠実ならしめ、その御旨を尊み、その御戒めを守るを得しめ給え

御上玲司

かくてわれら相共に天国において、天主の御栄えを仰ぐに至らんことを

詠唱の間も、拓海は先生に襲いかかり続けている

先生はそれをかわし、ときには剣で受け止めている

だけど、拓海の力が強いのか

拓海の拳がかすめると服が破れ、

剣で受けとめると後ろに数歩分はじかれていた

少しずつ先生が押されている? そう思ったとき

御上玲司

御身の御取次によりて天主に願い奉る

御上玲司

アーメン!

先生の詠唱が終わった

すると、その剣が鈍い銀色の光を放ち始め

拓海

グオォォォォォォォォォォ―――!!!

拓海の体が青い炎に包まれた

御上玲司

見よ、その焔はウリエル、邪悪な魔力を燃やす、神の炎だ

激しい炎に包まれているはずなのに

拓海の体や服が炎で燃え尽きる様子はなかった

それはまるで、何かの幻影を見ているようだった

やがて、苦しそうに転げまわっていた拓海は動かなくなり

あの邪悪な獣のような眼が消え

今は穏やかな表情で横たわっている

先生、これは何だったの?

御上玲司

生きる屍(リビングデッド)だ

リビングデッド?

御上玲司

ゾンビの一種だ。だが

御上玲司

普通のゾンビはすぐに腐るし、知性も持ち合わせていない。

御上玲司

なのにこいつは腐敗もせず、一部とはいえ生前の知識も持っていたようだ

御上玲司

れほど高度な死霊術は、俺も初めて見る

えっ

生前の知識って……、じゃあ、こいつは本物の拓海なのかよ!?

さっき、先生は、こいつは拓海じゃないって……

御上玲司

説明が足りなかったな

御上玲司

こいつはもう、お前が知っている加藤拓海ではない

御上玲司

すでに殺され、邪悪な術者に操られる化物になっている

なんだよ、それ……

続く

回る炎の剣(チャットノベル版)

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