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加賀春樹

"僕は正気だ"

理性

物事を正しく判断する力のこと

僕からしばらくの間 欠けてしまっていたものだ

しかし

全てを思い出した

全てを理解した

"この事件の首謀者さえ分かった"

これは 幸運なことだった

逆に言えば "マインドコントロールをかけられなければ絶対に分からなかったからだ"

であるのに 犯人がマインドコントロールを用いた その理由について推理するなら……

既に、奇しくも結論として出ている

"バレる自信がなかったからだ"

そうに違いない

但し、僕の心は心を守ろうとした

その働きこそが……

加賀春樹

もう見えない者。

加賀春樹

"金田夫妻と佐久間浩樹" ということだったんだな。

周囲を見たわしても もう、どこにも見えない

呆気に取られた 傀儡たちが見えるだけである

その中には 異変を感じ取った操作者がいた

いや、正確には操作は当の昔に 破棄していたのだろうが

今こそ こちらが逆襲をする番だ

椅子に座った天使を見る

新城綾乃……

必ず仇を打ってあげよう

僕は胸に誓った

黙っていると 賢太郎が話しかけて来た

新城賢太郎

か、加賀くん。

新城賢太郎

君はいよいよおかしくなってしまったのかい?

加賀春樹

いいえ、新城さん。

加賀春樹

むしろ僕は、いまやっとおかしくなくなったというべきです。

新城秋穂

えっ、え?

新居宗介

あのう……とにかくこの事態をどうすればいいのですか?

新居宗介

そうだ。もうこれ以上の被害が出ないためにも、助けを無理にでも呼びに行くべきでは……。

加賀春樹

無理ですよ。

新居宗介

はい?

加賀春樹

新居さん、少し呆気に取られすぎではないですか。窓を見てください。

新居宗介

あ、あれ?

新城秋穂

そんなっ!!

外は再び雨が降り始めていた

かなり勢いが強いようである

でも、好都合だと思った

可能性があるとすれば 警察が来る前しかないのだ

必ず追い詰めてみせる

加賀春樹

さあ、皆さん。いつまでもこうはしていられませんよ。

加賀春樹

食堂へ向かいましょう。

加賀春樹

そこで、"真犯人に裁きを下してやりましょうよ"

新城賢太郎

裁きだと?

加賀春樹

ああ、そんな物騒な意味ではないですよ。ただ、言い逃れができないように合理的解決をしようという話です。

加賀春樹

じゃあ、行きましょう。

僕はさっさと歩き出した

後ろでは突然のことに 反応が遅れるものがほとんどだった

しかし、慌てて後を追ってくる

賢太郎はこちらを凝視して 真剣な眼差しで口を結んでいた

秋穂は綾乃の亡骸に 自身のカーディガンを被せてやっていた

新居はあたふたとしながらも 姿勢正しくついて来ている

綾香は不安そうな顔をして 視線を下に落としている

僕は何となく 書斎を出る際に書棚にある本を見た

背表紙には タイトルが記されていた

「慧眼の使者」

作者の名前は 高島詩乃だった

……探偵か

加賀春樹は 決意を改めて固くした

探偵くんは何かに気付いた?

何に気付いたというのだ

まさか

本当に真犯人が解ったと言うのか?

あれは ハッタリではないのか

いや、そんなはずがない

それよりも 解ったことがある

あの反応を見るに……

探偵は マインドコントロールにまだかかっていたのだ

しかし それを今解かれてしまった

互いの力が拮抗していたのだ

不測の事態

だが

解っている

やることはただ一つだけ

必ず逃げ延びてやる

  犯人は決意を改めて固くした

食堂

晩餐は用意されなかった

早いからではない

それどころではなかったためだ

僕でも理解が追いつかない

彼の身に何が起こった?

新城賢太郎

……。

新城賢太郎

それで、加賀くん。

加賀春樹

はい。新城さん。

新城賢太郎

真犯人が解ったと言っていたようだが、それは誰なのかな?

新城賢太郎

そして、どのようにして3人もの人間の命を奪ったというんだ。

そして

加賀春樹

事件の流れを追いましょう。

加賀春樹

その方が皆さんも納得してくれるはずですから。

この事件の真相とは何なんだ?

僕……新城賢太郎は困惑していた

正直に言えば、肝を冷やしていた

この男、加賀春樹に追い詰められ 何とか反論をして容疑を晴らしたのだが

全てが解ったというような物言いだ

……だとすれば

"僕は非常に不味い立場にある"

思案している間に、加賀は口を開いた

加賀春樹

新居さんも居ることですから、第一の殺人についての概要も簡単に説明しておきます。

加賀は寝室で述べたことを もう一度説明した

簡単にまとめると 時刻: AM3時から4時の間 場所: 聡太郎の自室 被害者: 新城聡太郎 死因: 失血死(即死) 凶器: 賢太郎のキャンプ用ナイフ ということであった

加賀春樹

……そして、この事件の最大の謎は "聡太郎さんは椅子に座ったまま、尚且つ起きている状態で額にナイフを突き立てられて死んでいる" ということです。

加賀春樹

この謎を作る要因が、事件の背景にある"財宝の問題" にあります。

新居宗介

……なるほど。私と貴恵様がお話ししたことですね。

これも 寝室で話した例の経緯のことだろう

加賀春樹

そうなんです。聡太郎さんの警戒心によって、一定の距離を取って話しをしないと、深夜に大騒ぎをされて必ず他の人にバレてしまいます。

加賀春樹

ましてや、ナイフを持って飛びかかろうとしたのなら尚更ですよね。

新城秋穂

それは誰でも騒ぐでしょうね。

新城賢太郎

しかし、不可解な謎を裏付けるように父は起きていた。

新居の証言で午前1時頃には部屋の明かりが漏れていたこと。父の部屋の鍵が開いており、また、細工もされていなかったこと。即死であるのに、父の死相は驚愕していたこと。

これらが、その根拠ということだね。

加賀春樹

ええ。そんなところです。

加賀春樹

では、第二の事件についてもおさらいをしていきましょう。

加賀春樹

第二の事件については、僕も混乱していて、間違った推理と併せて伝えてしまいました。それに、あまり詳細に触れる前にあんな事が起こってしまいましたから、もっと具体的に謎について考えていきましょう。

新城賢太郎

そうだね。じゃあ、第一の事件と同じように基本的なことを、まずは確認していこうか。

簡単にまとめると 時刻: AM1時から4時の間 場所: 貴恵の自室 被害者: 新城貴恵 死因: 失血死(即死) 凶器: 賢太郎のキャンプ用ナイフ ということであった

加賀春樹

この事件の謎は、"密室殺人であること" と、"クローゼットに隠された20センチ四方の謎の穴の正体" "聡太郎さんの机の鍵の行方" 辺りでしょう。

新城賢太郎

君が言っていた"金田直斗" という架空の男が殺されていたという件は何だったんだい?

加賀春樹

それは、後で触れます。今は混乱を招くだけかもしれないので、説明は遠慮しておきます。

新城賢太郎

ほう。僕はずっとそれが気にかかっているんだが……。

新城秋穂

でも、まとめてみても、全部分からずじまいになっているわね。

新城秋穂

本当に真犯人を突き止めることなんてできるのかしら……。

加賀春樹

解明するためにも、一つずつ見ていきましょう。

加賀春樹

まず、密室殺人ということですが、それを確認したのは、新城さんと秋穂さんだけですね?

新居宗介

私は、その時刻は寝ていました…。

新城綾香

私も……。

加賀春樹

ありがとうございます。お二人は確かに部屋の鍵がかかっていたと証言できるのですね?

新城秋穂

ええ。マインドコントロールがかけられていないのなら、絶対に扉は開かなかったと証言できますわ。

新城賢太郎

僕もマインドコントロールなんてかけていないから、安心信頼の証言者ということになるね。

加賀春樹

そうですね。

加賀は苦笑いをしている

間違った推理で人を追い詰めたことを 反省しているようだ

もう少し 傷口をえぐってやろうかと思っていると

新居が発言した

新居宗介

マインドコントロール……とは一体何の話ですか?

加賀春樹

新居さんには説明していないのでしたね。後々、また関係してくる重要な概念なので改めて説明しておきます。

新城賢太郎

後々、関係してくるだって?

新城賢太郎

加賀くん。また君のお騒がせ探偵を披露するつもりなら御免だよ。僕はもう、疑われることに飽きている。

加賀春樹

いえ、同じことを繰り返すわけではありませんよ。今度は、真実を掴んだつもりでいます。それに……

加賀春樹

"本当に貴方は、今回の事件にマインドコントロールが関係しないとお考えなのですか?"

新城賢太郎

な、何を……。

何だこの物言いは

まるで

……僕を疑っているようだ

それは、一度否定されたはず

まだ、疑っているのか?

僕は平静を保つように努めた

加賀春樹

まあ、いいでしょう。

加賀春樹

マインドコントロールについて、でしたよね。簡単に説明すると……

加賀春樹

他者の思考や行動を操作してしまうこと、です。操作されている人物は、自身が操作されていることには気付かず、自分の意思で考えたり行動したりしていると思ってしまいます。それが、マインドコントロールです。

新城秋穂

何度聞いても、恐ろしいわ。

新居宗介

なるほど。そのようなものが事件と何か関係するのですか?

加賀春樹

残念ながら、ですね。本来、こういった使い方をするものではないのですが……。

加賀春樹

さて、話を戻しましょう。とにかくお二人は密室であることを確認したということですが、その際に室内から物音などは聞こえませんでしたか?

新城賢太郎

物音?

加賀春樹

例えば、人が歩き回ったりする音とか……。

新城賢太郎

……聞こえた。

新城秋穂

ええ?本当?

新城秋穂

私は聞こえなかったわ。とにかく、お義母様が心配で……。

加賀春樹

そうですか。とりあえず、密室についての情報はこれ以上集まりそうにないですね。

加賀春樹

では次に、謎の穴について考えてみようと思いますが、その前に。

加賀春樹

以前から、あの穴のことを知っていたという人は居ませんか?

沈黙

僕を含めて 誰も知らないようだった

それにしても 密室殺人を簡単に破ってしまう手掛かりが隠されていたとは……

加賀は穴について話し始めた

加賀春樹

ということは、僕と新居さんだけが確認しているということですね。

新居宗介

ええ。私も貴恵様のクローゼットと、聡太郎さんの部屋のテレビスタンドの中に通じている穴は確認いたしました。

新居宗介

まさか、あそこに穴が開けられているとは考えもしませんでした。

加賀春樹

僕もです。たまたま調べている時に見つけることができました。あれは、今思えば貴恵さんが伝えてくれたメッセージだったのかもしれませんね。

新城秋穂

……お義母様が?

加賀春樹

いえ、すみません。話を戻します。

加賀春樹

僕と新居さんで実験をしてわかったことですが、あの穴を通り抜けるのは成人男性では不可能で、小柄な女性あたりが限界といった所でしょうね。

新居宗介

秋穂様は本当にぎりぎり通り抜けられるか、どうかといった所でしょうか……。

新城秋穂

わ、私は関係ないわよ。

加賀春樹

そして、僕はもう一つ不審に思った事があります。

新城賢太郎

不審な事とは何かな?

加賀春樹

"テレビスタンドの引き出しの中が何もなかった" という事です。

新居宗介

あっ、そう言えば……。

新居宗介

私は普段、備品等を聡太郎さんに頼まれることもあるのですが、その際にテレビスタンドを開けて入れた事があります。しかし、コード類や電池、書籍などがいい加減に詰め込まれていたのを覚えております。

加賀春樹

でも、何もなかった……。

新居宗介

はい。そうですね……。

加賀春樹

僕はこの家の者ではありませんし、それぞれの家庭の細かな事情なんて千差万別だろうと思っています。しかし、あれだけ大きなテレビです。付属品も多数あるでしょうし、邪魔くさいからテレビスタンドに入れてしまうのが普通だと思います。

加賀春樹

いや、テレビが大きいなんてことよりも、この邸宅自体が迷子になってしまうほど広大です。それだけ物も必然的に多くなります。テレビスタンドだけではなく、他にも箪笥は置いてありましたが、あそこだけ使わずに空っぽというのも変な話です。だから僕は、あれを見た時に違和感を覚えた。

新城賢太郎

だが、それが何を意味すると考えているんだい……?

加賀春樹

つまり、"最近、あの謎の穴を何らかに利用するため、テレビスタンドの中を整備する必要があった。更に、それをした人物は元に戻す時間もなかった" ということです。

加賀春樹

言わずもがな、こんなことをするのは犯人でしかあり得ません。

何かに利用するため……

時間がなかった……

少し考えてみる

様々な可能性を考えてみるが どう繋がるのか見当もつかない

加賀くん、君は何を考えている?

心が解らない

加賀春樹

最後に、聡太郎さんの机の鍵の行方についてですね。

新居宗介

私が聡太郎さんが亡くなられた時に便宜を図って、貴恵様にお渡しになった。それから、貴恵様のポケットを確認してみましたが鍵は無くなっていて……。

加賀春樹

そもそも、その話を知っていたのは僕と新居さんと貴恵さんの3人だけだったんです。

新城賢太郎

君の推理では、犯人は掃除用具置き場のスペースに潜んでいたという話だったが……リアリティーはないね。

新居宗介

え、あの時、あそこに犯人がいたのですか?

加賀春樹

いや、分かりません。もしかしたら、いたということもあるし、"居なくても不都合はありません"

新城賢太郎

ん?

加賀春樹

この点は、深掘りをしても何も解らずじまいです。今は、置いておきましょうか。

加賀春樹

ただ、注意しておきたいのが"貴恵さんは鍵をずっとポケットに入れておく必要は別にない" ということ。部屋に戻ったのなら、鍵はそれなりに大事にしまっておける場所や、引き出しの中に入れておくのが自然だということ……。

加賀春樹

……ここまでが、第二の事件についてです。

新城秋穂

何だか謎も多いし、凄く複雑に見えてしまうわね。

新城賢太郎

しかし、分かっていることと、分かっていないことを区別できただけでも考える上では非常に有用になった。

新城賢太郎

まあ、迷宮の中に火を灯す英雄は未だ現れていないが。

加賀春樹

相変わらず、よく分からない比喩を使ってますが、第三の事件についても火を灯す必要があります。

新城秋穂

……綾乃……。

新城賢太郎

……。

新城綾香

……。

新居宗介

……綾乃ちゃん。

綾乃

お前は優秀だった

怖いほどに、である

父親の僕でさえ 心が見透かされているような気がした

成長していれば 偉大な心理学者になっていたことだろう

そう、僕を超える……

歴史に名を刻む者に……

……

だが

"もう居ないから、仕方がないか"

僕は 笑みを堪えるのに必死だった

加賀春樹

……あまり乗り気になれませんが、犯人を突き止めるために必要なことです。同じように、簡単に考えていきましょう。

簡単にまとめると 時刻: 午後4時25分 場所: 書斎 被害者: 新城綾乃 死因: 失血死(即死ではない) 凶器: 賢太郎のキャンプ用ナイフ ということであった

加賀春樹

この事件の謎は、"僕と賢太郎さんと秋穂さんが同時刻、同室にいた頃、綾乃ちゃんが殺されたこと" と、"喉にナイフが突き刺されて殺されていたこと" です。

新城賢太郎

これは、自明だろう。

新城賢太郎

紛れもなく "新居くんが犯人であることを示している"

新居宗介

ち、違います。

新城秋穂

……加賀さん、私は推理が得意ではないけれど、この事件ばかりは謎でも何もないわよ。

新城秋穂

この人……新居。あなたが綾乃を殺した犯人なんでしょう!!

新居宗介

だから、何度も申しておりますが私は何も知りません……!!

加賀春樹

……。

加賀春樹

この事件は、後回しで考えていくことにしませんか?

新城賢太郎

後回しに?

加賀春樹

はい。それよりまず、僕が見えていた "架空の人物" について説明した方がいいかと思いまして。

新城賢太郎

…‥いいだろう。

新城賢太郎

ついに、君の口から話されるということだ。

新城秋穂

……私、正直に言いますと、あの様子を見ていたら、加賀さんが犯人なのではないかと思ってしまっていました。

新城秋穂

でも、綾乃が殺されてしまったいま、犯人が誰なのか確信してしまいましたからね!!

新居宗介

ですから……いえ、加賀様がおっしゃったように今はその件についてです。

新居宗介

それも、事件と何か関係があるということですか?

加賀春樹

ええ。

加賀春樹

何から言えば良いのか分かりませんが、大事なことを一つ言います。

新城秋穂

大事なこと?

加賀春樹

それは、"僕がマインドコントロールをかけられていた" ということです。

また、それか……

マインドコントロール

かつては栄光の光となったが 今では忌まわしい言葉の響きだ

ずっと付き纏う容疑の源である

しかし

僕の不完全なマインドコントロールは 事件と何ら関係ないと証明された

大丈夫

何も、関係が……

加賀春樹

"関係はありますよ"

加賀春樹

"新城さん"

新城賢太郎

……。

新城賢太郎

なぜ考えている事がわかった?

加賀春樹

表情に出ていました。

新城賢太郎

ふっ。

新城賢太郎

君は忘れたのかな。僕に犯行は不可能だし、マインドコントロールが事件に関係のあることだとはとても思えない。

加賀春樹

そういうことを言ってはいませんよ。もう少し、気を軽くして話を聞いてみてはいかがですか。

新城賢太郎

無駄口は叩かなくていいよ。

新城賢太郎

それで、具体的にどういうことなのかな?

加賀春樹

はい。まず……

加賀春樹

僕が見ていた架空の人物達というのは、実は"マインドコントロールによるものではない" ということです。

加賀春樹

言い換えれば、"マインドコントロールによって生まれた心の防御作用" であり、"マインドコントロールの内容は別にある" ということです。

新城賢太郎

言っている意味がよくわからないね。

加賀春樹

僕は『狂想』という小説から着想を得たんです。追い詰められた者は、心の作用で何かを創り、何かを破棄することで自分を保っているのだと。

加賀春樹

僕の心も同じだった。マインドコントロールという攻撃に対して、心が本能的に危機を察知し、自我が失われて操作者の思うままの傀儡になる前に、"理性は佐久間浩樹という顔を借りて、客観的に保たれることとなった"。それが唯一の逃げ道だったんです。

加賀春樹

なぜ、佐久間浩樹の顔が選ばれたのかは分かりません。夢と同じで、恐らくは無意識的に選んだのでしょうが、それが妙にリアルな映像となって、なかなか真相に辿り着けなかった。

加賀春樹

……今思えば、あの佐久間浩樹とは僕そのものだったんです。だから、全てを知っていたのだし、やたらと心の働きについて考えさせるようにした。そうすれば、自然に矛盾に気付き、マインドコントロールが解かれると信じていたからです。

新城賢太郎

……なぜ、その理性という加賀くん自身は全てを知った上で、周りくどいやり方で真相を見つめさせようとしたんだい?

加賀春樹

第一にマインドコントロールが強力で完全に抵抗することはできなかったということ。そして、筋書き……プロットがあったということです。

新城賢太郎

プロット?

加賀春樹

ええ。操作者の思い描いていたプロットとは、"マインドコントロールにかかった人間が、額にナイフを突き立てて他の人間を殺すこと" ですよ。

新城秋穂

ひ、ひどい……。

新城賢太郎

つまり、寝室で僕たちを襲ってきたのも、そういった指令があったからということなのかな。

加賀春樹

ええ。頭の中で声がするんです。何度も何度も「殺せ」と。その度に佐久間は現れた。

加賀春樹

ただ、寝室で新城さんたちを襲おうとした際は、「犯人に指名されれば、操作者以外を全員殺せ」という指示だった。それ以外には、「椅子に座ったままの人間の額にナイフを穿て」という指示が2度ほどあったんです。

新居宗介

それは正しく……。

加賀春樹

そう、"今回の事件そのままだ"

ふっ

 "やはり妄想か"

この様子だと 真相が明るみにはならない

だったら

少し乗ってやろう

新城賢太郎

なるほど。だから、プロットというわけなのかい。

新城賢太郎

しかし、そこで君の心は最大限の抵抗として、理性を支配化から逃した。

加賀春樹

そうです。だけど、マインドコントロールの力が強くてプロットからは逃れられない。

新城秋穂

難しくてよくわからないけれど、それって2人を殺してしまうことになってしまうんじゃ……?

加賀春樹

そのままでは、そうなります。しかし、まだ僕の心は抵抗した。

加賀春樹

つまり、"こちらもプロットを創り出した" ということです。

新居宗介

また、プロット……ですか?

加賀春樹

2人の人間を自分の手で殺すしかない。なら、創ればいいんです。それが……

新城賢太郎

"金田夫妻"

新城賢太郎

加賀くんがそう呼んでいた架空の人物ということか。

加賀春樹

そうです。金田夫妻の正体は理性というより、理性の働きとマインドコントロールの働きによって生まれた"僕の中の犠牲者" ということです。だから、殺意という感情が湧いてきていた……。

加賀春樹

金田夫妻の顔は残念ながら、どこから無意識に拾ってきたのか覚えていません。まあ、それは重要なことではないから良いんですが。

加賀春樹

だけど、一つ引っかかるのが、なぜ聡太郎さん殺しの際に、僕の中の犠牲者のどちらかが出てこなかったのかということです。

新城秋穂

それはどうしてなの?

加賀春樹

その答えは、"殺意が芽生えるプログラムが働く前" に、操作者はせっかちにも、僕という手駒によって"マインドコントロールは解かれた" と勘違いをしたからだ。

加賀春樹

それだけ操作者自身のマインドコントロールは即効力を持ち、非常に強力であることを示している。

加賀春樹

……ここまで、よろしいですか?

新城秋穂

私の中でまだ飲み込めない部分もあるけれど、大体はわかったわ。

新城秋穂

ねぇ、加賀さん。それで犯人は一体誰なの?ここまで聞いたら、全然分からなくなってしまったわ。

新居宗介

加賀様、私もかつて疑われた身ですし、容疑を晴らすためにもお聞きしたいです。

新居宗介

お願いします。

新城賢太郎

加賀くん。僕も推理をしてみたがさっぱり犯人は分からなかった。

新城賢太郎

君の口から、是非、今までの推理を総合して犯人の名を告げてもらいたい。

加賀春樹

……。

加賀春樹

…‥分かりました。

加賀春樹

僕の推理によって、今回の事件の犯人を指名して見せます。

加賀春樹

犯人の名は……

ついに

ついに この一連の事件の犯人が分かる

……だが

加賀くんの推理は的外れだ

この僕

"新城賢太郎が黒幕だというのに!!"

そして

犯人の名は告げられた

読者への挑戦状

この話以降は 犯人が明らかとなります

そのため、推理をして 誰が犯人かを当ててみたいという方は 一度、止める事をオススメします

以上の事を了解された方のみ 真相を解き明かして下さい

それでは 健闘を祈ります

 探偵諸氏

加賀春樹

犯人の名は……

加賀春樹

"新居宗介"

加賀春樹

"新城綾香"

加賀春樹

"貴方たち二人だ!!"

こうして

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