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桔平

では、奥様

桔平

我々への質問はありますか?

桔平

些細(ささい)なことでも、分からないと思う所があれば、遠慮なく仰(おっしゃ)ってください

カエデ母

わ……わ……

カエデ母

カエデ母

分かるわけないでしょ、こんなデタラメ!

桔平

へえ、デタラメですか

カエデ母

そうよ、かえちゃんがそう言ったんだもの

カエデ母

運営の協力?自分の協力者?

カエデ母

よくそんな妄想を垂れ流せたものね!

カエデ母

あんたみたいな人間がいるから、世の中がどんどん汚れていくんだよ!

カエデ母

この詐欺師(さぎし)共が!!

桔平

なら、証拠書類をもう一度、イチから見直していきますか?

桔平

俺が言ったことは全て、本当のことですからね

桔平

何度でも同じように説明しますよ

カエデ母

だから!それ自体が嘘だって言ってんでしょ!

カエデ母

あんたがどう言おうと、私達はそんなの信じないから!

カエデ母

これ以上かえちゃんを傷付けるなら、アンタら2人共訴えるからね!?

カエデ

ママ!?

カエデ母

貴方達は学生だから、こんなこと出来ないでしょうけど?

カエデ母

私は収入のある大人ですからね!

カエデ母

弁護士でも雇って、クズの掃除でもすることにするわ!

真由美

それは本気ですか?

カエデ母

本気だけど!?

真由美

ふーん……

真由美

だ、そうですよ?桔平さん

桔平

そうですか

桔平

そう仰(おっしゃる)ならば、もちろん知ってますよね、奥様?

桔平

訴えると言って、実際に訴えない

桔平

俺達を怖がらせる目的で、そう言ったのなら……

桔平

それだけで、犯罪が成立するかもしれないって事

カエデ母

……は?

真由美

今のは立派な脅迫罪(きょうはくざい)になると思いますよ

カエデ

ママ、コイツなに言ってんの?

真由美

簡単に言えば、『怖がらせて、怯えさせようとするのはいけない事ですよ』って事です

真由美

脅迫罪とは、相手に生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪(がいあく)の告知を行い

真由美

相手の意思決定に不当な影響を与えることだとされています

真由美

奥様、貴方は先程、『弁護士を雇ってクズの掃除を……』って言いましたよね?

真由美

これは『生命・名誉に対する害悪の告知』になると思われます

真由美

そして、私達の判断に不当な影響を与えました

真由美

『これ以上、自分達に不利な事を言わせないようにしよう』と考えたのでしょうけど……

真由美

逆に、奥様が不利になりましたね

真由美

こうして言った以上、もし我々を訴えない場合は、罪に該当(がいとう)する可能性が極めて高い

カエデ母

な、な、な……!

桔平

まあまあ、真由美さん、落ち着いて

桔平

中立の立場から少しズレてきてるよ

真由美

はっ……!すみません!

桔平

さて、さっきの訴えるだなんだの発言ですけど

桔平

別にいいですよ、聞かなかったことにしても

桔平

俺達も法的によろしくない手段で、貴方の娘さんの情報を特定しましたからね

桔平

それに、裁判になって困るのはそちらでは?

カエデ母

は?私達は別に困らないけど?

桔平

そうでしょうか?

桔平

たしかに、なりすまし自体は犯罪ではありません

桔平

ですが、なりすましの一環(いっかん)として彼女がした事には、罪名があります

桔平

当たるとすれば、名誉毀損(めいよきそん)と侮辱罪(ぶじょくざい)ですかね

桔平

ですが、これらは非親告罪(ひしんこくざい)……

桔平

俺達が訴えなければ、娘さんのしたことは、罪にはならない

桔平

娘さんを、犯罪者には、できないんです

桔平

もし裁判になったなら、多少減刑されたとしても、重たい罰(ばつ)があるでしょう

桔平

未成年とはいえ、被害者は何十人といるのですから

桔平

ですが、裁判にはしたくないんです

桔平

何故だと思います?

カエデ母

知らないわよ

カエデ母

そんな事まで私に分かるわけがないじゃない

桔平

簡単ですよ

桔平

裁判になれば、お互いに都合の悪い事実を晒(さら)すことになる

桔平

それは俺達も避けたい

桔平

なにより、娘さんの未来を考えると、こんな事している場合ではないのでは?

カエデ母

な……!?

桔平

俺のしたことではありませんが、話は聞いていますよ

桔平

流出した個人情報を使って、セラーノベルでの事件を、学校側に悪意を持って話した人がいると

桔平

そのせいで、志望校、全落ちしたんですよね

桔平

であるならば、俺達に構う時間はないはずだ

カエデ母

そんなこと!言われなくても分かってるわよ!

カエデ母

で、いくら欲しいわけ!?

カエデ母

この金の亡者(もうじゃ)共!

桔平

いやいや、俺達は別にお金が欲しいわけではありませんよ

桔平

それに、カエデさんに犯罪者の汚名(おめい)を被ってほしいわけでもない

桔平

貴方の娘さんには、ご自身の行いについて反省して欲しい

桔平

桔平

ただそれだけです

桔平

貴方方が誠意を見せてくれたなら、私達はこれ以上事を荒立てるつもりはない

桔平

真由美さんもそうですよね?

真由美

はい

真由美

真由美

私達が要求するのは、3つ

真由美

1つ目は、なりすましアカウントの事について、本アカであるむぃぷるで、本件の謝罪をする事

桔平

謝罪文はカエデさんに書いていただきますが、掲載する前に1度、俺に見せてください

桔平

俺が納得できる文章が書けたなら、投稿するように伝えますので、それまでは待機でお願いします

真由美

2つ目は、なりすましアカウントの削除

真由美

これは本日中にでも出来ますよね

真由美

3つ目は、俺の名前を貶めるために使われた、セラーノベルのユーザーさん全員に、カエデさんから謝罪をする事

真由美

これが私達が譲歩(じょうほ)できる、最大限の条件です

真由美

これらを呑(の)んでいただけるのであれば……

真由美

今、カエデさんの個人情報を握り、悪さをしている人達のデータを消去させます

真由美

酷い場合は、こちらで相応の措置(そち)を取りますし

真由美

今後一切カエデさんに関わらないように誓(ちか)わせます

真由美

真由美

以上ですが、いかがですか?

カエデ母

いかがもなにもない!

バンッ!

叩かれて揺れた机の上。 顔を赤くして怒鳴るカエデの母の顔を、お冷のグラスが、ぐにゃぐにゃと歪ませる。

醜(みにく)くなったその顔を顕(あらわ)に、カエデの母は桔平達に顔を近づけた。

カエデ母

こんなことを言ってくる時点で、誠意が見えないんだけど!?

カエデ母

かえちゃんを責めるようなことを、まだ言うなんて!

カエデ母

アンタ達の勝手に、かえちゃんを巻き込むな!!

カエデ母

カエデ母

とにかく、あんた達の言っている事は嘘だって分かったんだから!

カエデ母

さ、かえちゃん行くよ!この人達頭おかしいわ!

カエデ

えっ

カエデ母

こんな奴らの話を聞いてたら頭がおかしくなるから!さっさと帰るよ!

カエデ

でも

カエデ母

いいから!

真由美

桔平さん……!

桔平

桔平

その判断はご自由にどうぞ

桔平

ですが結論も出さずに退出するということは、俺達の要望を呑まないということ

桔平

そして、悪意を持ってカエデさんの個人情報をばら撒く奴らを、野放しにすることになりますが?

カエデ母

は……はあ!?

カエデ母

それはアンタたちの戯言(ざれごと)を真に受けてる連中の事でしょ!?

カエデ母

かえちゃんは何も悪くない!

カエデ母

だからあんな人達は気にしなくていいんだよ、かえちゃん!

カエデ母

さあ、早く帰りましょ!

桔平

なるほど、そういう態度を取るんですね

桔平

俺は『話し合いが出来る』と思っていたんだけど……

桔平

それは間違いだったようだ

真由美

そのようですね

真由美

これ以上話しても、お互い時間の無駄(むだ)でしょう

真由美

私達も帰りましょうか

カエデ母

は、はあ!?

桔平

え?この話は終わりになったんですよね

桔平

桔平

ああ!そういう事か、安心してください

桔平

カフェの代金は全部俺持ちにしますから

カエデ母

ちっがーう!

カエデ母

アンタ達、まずかえちゃんにした事を謝りなさいよ!

カエデ母

かえちゃんの未来を滅茶苦茶(めちゃくちゃ)にしておいて、よくもそんな平然としていられるね!?

カエデ母

アンタが特定なんてするから、かえちゃんが悲しんでるんだけど!?

カエデ母

かえちゃんをこんな目に遭わせたんだから、せめて謝罪くらいしてもらわないと割に合わない!

カエデ母

土下座して謝りなさい!

真由美

うわ

桔平

桔平

……は?

桔平

先に謝罪するべきなのはそっちだろ

カエデ

ひっ

距離があるとはいえ、いきなり額に人差し指を突きつけられたカエデは驚きのあまり、硬直(こうちょく)する。

だが、そんな子供の様子を気にもせず、桔平とカエデの母の睨(にら)み合いは続く。

カエデ母

な……なによ、その態度は!

カエデ母

大人に向かって!

桔平

大人だ子供だ関係ねえだろ

桔平

そこのクソガキは、俺と真由美さんに迷惑をかけた

桔平

お前ら2人が散々喚(わめ)き散らしやがったおかげで、こっちは時間と金を使った

桔平

なのにそっちはなんにも言わねえで、『はいサヨーナラ』は筋が通らねえ

桔平

元はと言えば、あんたが目を離した隙に、子供がやっちゃいけねえ事に手ぇ出してんだよ

桔平

それで方々(ほうぼう)から恨みを買って、個人情報特定?

桔平

どう見たって自業自得、全部お前らが招いたことだろうが

カエデ母

それはアンタがさあ!

桔平

正直な話、俺、そこのクソガキは可哀想(かわいそう)だと思ったんだよ

桔平

調べれば調べるほど、こいつは自分のことしか見えてねえ

桔平

向上心もねえどころか、相手を引きずり下ろすことでしか満足できなくなっちまっててさ

桔平

同情したよ、本当に

桔平

お前も……カエデも可哀想だよなあ

カエデ

えっ?

指が離れていくのを見送った先にあったのは、眉(まゆ)の寄った桔平の顔面だった。

桔平

悪いことも悪いと言ってもらえねえ

桔平

何が正しいのか教える人もいねえ

桔平

自分の間違いを直そうとする気持ちが、まず育ってねえ

桔平

まだ俺の近所の幼稚園児(ようちえんじ)の方が、善悪の判別(はんべつ)、ついてるぜ

桔平

親の教育って、残酷(ざんこく)だよなあ……

もう少ししたら泣き出すのではないか、とすら思える顔は、カエデが幾度(いくど)となく思い描いた、『桔花の泣き顔』。

しかし、その泣き顔は想像の中よりももっと暗く、痛々しいものであった。

私、こんなものが見たかったの?

思わず降って湧(わ)いた疑問に、カエデはフタをする。

桔平

こんな風に育っちまったのは、お前が……親が、ちゃんと叱(しか)ってやらなかったからだろ

桔平

そうじゃなきゃ、こんないい加減な奴が育つわけねえ

桔平

だから自分のやらかしてきた事と向き合って、反省してもらおうと思った

桔平

その上で、これからは頑張って生きていこうぜって言いたかったんだよ

桔平

なのに、母娘揃(そろ)って自分の都合ばっかで、何もしようとしねえ

桔平

特に母親!お前、娘のために動いてやろうって気持ちすらねえのかよ

桔平

結局お前もあのクソガキと同じ、自分と自分の身内がよければそれでいいって考えなんだろ?

桔平

そういうところ、本当によく似てるよ、マジで血の繋がりを感じる

カエデ母

ああ!?

店員

お、お客様〜?

桔平

ああスンマセン、うるさくして

桔平

すぐ出ますから

カエデ母

何を勝手に!

桔平

俺はさあ!

桔平

謝罪してくれるならば、俺達はそれを尊重して、事を穏便(おんびん)に済ませるつもりだったんだよ

桔平

だけど今、お前はその機会を棒(ぼう)に振った

桔平

挙句の果てに俺達に対して、暴言を吐き、罵倒(ばとう)までしてきた

桔平

俺達はそんな奴らに謝罪する気はないし、これ以上付き合ってらんねえ

桔平

お前らにはほとほと愛想(あいそ)が尽きたよ

桔平

じゃ、そういう事で

桔平

もう二度と、会うこともないだろうよ

真由美

真由美

私の好意も弄(もてあそ)んで

真由美

では、私もこれで

真由美

この度はお忙しい中、お越しいただきありがとうございました

真由美

カエデさん、そしてそのお母様

真由美

私はお二方を心の底から軽蔑(けいべつ)します

真由美

他人の物を何もかも勝手に使って、その人の振りをして

真由美

桔花さんの名誉を傷つけるために、他のユーザーを誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)した

真由美

挙げ句の果てに、私に対してはセクハラも行った

真由美

さぞかし楽しかったでしょうね

真由美

ニセモノに釣られて、踊ってくれる人間が沢山いて

真由美

真由美

貴方達の行いのせいで、傷ついた人は数知れない

真由美

貴方達が傷つけた人達に謝罪をしないなら、お二方が許される事は一生ないでしょう

真由美

それが貴方達の選択した結果です

真由美

後悔しながら生きていってください

真由美

お次にお二方の顔を見るとしたら、きっとニュースの記事で……になるでしょうね

真由美

お二方のどちらかが、将来どんな罪を犯すのか、今から恐ろしくてなりませんよ

真由美

それでは

カエデ母

待ちなさ……!

その時、カエデの母は見た。

目の前の男女の顔に浮かぶ、能面のようなのっぺりとしたソレを。

感情のこもっていない二対(につい)の目は、カエデの母をじっと見つめていた。

カエデ母

ひっ!

――知っている。これは完全に怒りを通り越した時の目だ。

それも普通の怒りじゃない。

まるで底なし沼のような、深い黒色をした眼(まなこ)には、自分に対する強い敵意が満ちている。

カエデ

ママ?

店員

あ、ありがとうございました〜

桔平

ホント、ご迷惑おかけしました

桔平

申し訳ないです、店員さん

店員

い、いえ……

真由美

では、行きましょうか

桔平

ああ

桔平

桔平

そうしてぼーっと立ってても別にいいけどさ、出入口前からは退(ど)けよ

桔平

邪魔

カエデ

ま、待って……

カエデ

待ってよ!

カランカラン……

必死の声は虚(むな)しくも、揺れる鈴と雨音によってかき消された。

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