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文明が滅んだ地球を歩き回った
無限の退屈は、自分を何者であるかも忘れさせたが、それでも、この星を歩くのを止めようは思わなかった
過度な栄養であまりにも大きく育った巨木の下にしゃがみ、夜空を見上げる
とても多くの星がそこにはあった
そのほとんどが、かつての輝度を失っているのにも関わらず、今もまだ、自身を見下ろすように輝いている
星々に注視する探索者であれば、いつになく月が明るく輝いているように見えるかもしれない
星々が輝度を失ってより数万年、今日ほど月が明るかったことはない
再び歩き出したあなたは、お気に入りの場所に向かう
生命の溢れる深い湖や、その周辺に生えている木々の元は、あなたにとって素敵な場所だ
あなたが訪れると、湖がさざ波に揺れ、木々がざわめく
この植物たちの成長は、あなたの数少ない楽しみだろう
そして、文明の名残である建造物がいくつか地表に点在するこの場所は、遥か昔の歴史を想起させ、少しだけ自身の心が沸き立つのだ
ざわめく木々に寄りかかり、数万年ぶりに明るい月を見上げる
紅楽 てらんぺ
これはあなたにとって日課のような願いだが、今日は本当に何かが起こる予感がするのだった
全身の激痛と吐血を誘う咳で目が覚める
四葉 はるる
病に蝕まれた身体は移動中の仮眠すら長く許されない
あなたはイギリス南西部のグロスタシャー州の山奥にある、ゴーツウッドに向かう電車に揺られている
日本を中心に蔓延し始めた、数日で死に至る不治の病に侵されたあなたは、数ある大学病院の医師に治療不能と診断された
高度な延命治療を受けるには金銭的にも、人脈的にも現実的では無かったあなたは、現状死を待つだけの人である
打開策の無い窮地に追いやられた者が最後にすがるのは、宗教か奇跡だ
ゴーツウッドに伝わる山羊の乳が、数々の奇跡をもたらすという話しを知ったあなたは、人生最後の海外旅行を兼ねて、現地へ向かうことにしたのだ
この時、あなたは信心深くある必要は無い
どうせ死ぬのならと、投げやりな気持ちで向かうこともあるだろう
ブリチェスターから列車に乗って30分が経った頃、車窓から景色を見ているはるるは、密集した木々の隙間からチラホラと建造物を見つけることができるかもしれない
四葉 はるる
その中で、ひと際高い丘の上に、円錐状の奇妙な建造物が見える
四葉 はるる
その建造物に設置されているのは多数の鏡であり、それらが多方面に向けて光を反射させることのできる装置であることがわかる
しかし、それが何の用途で存在しているかは想像もつかない
四葉 はるる
5分後、列車はゴーツウッドの駅に停車する
あなた以外誰も降りないその駅は、プラットフォームがむき出しの滑りやすい板で作られ、待合室の窓は薄汚れて落書きが書かれている
四葉 はるる
固い木製の椅子は塗装もされていない
四葉 はるる
四葉 はるる
四葉 はるる
フードを被った住人とすれ違う
四葉 はるる
その者は、不健康な茶ばんだ肌をした、歯並びが悪い山羊のような角を持った亜人に見えた
四葉 はるる
四葉 はるる
四葉 はるる
四葉 はるる
バタッ
はるるは僅かに意識を取り戻すことができるかもしれない。あなたは仰向けに寝転がされているようだ
四葉 はるる
視界の端に、奇妙な円錐形の建造物と、石造りの扉で閉じられた洞窟のような入口が見える
ふと、動かない体で周囲を見渡すあなたの視線を遮る者達が目に入る
それらは、目の下にクマを作っている不健康な人間と、頭に山羊のような角を持った亜人達だった
四葉 はるる
あなたを囲むようにして覗き込むその異型達は、黄ばんだ乳白色の飲み物をあなたの口に流し込む
四葉 はるる
仰向けに寝ているあなたは、この得体のしれない液体を飲むしかない
四葉 はるる
直後、身体が焼けるように熱くなる
四葉 はるる
体中の筋肉が脈打ち、病気の症状がマシだったと思えるほどの激痛に見舞われた
四葉 はるる
既に虫の息だったあなたは、意識を暗転させる
四葉 はるる