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#ギャンブル
りんご
904
19
朽華 歌仙
78
赤い隔壁の向こうに、6つの人影が並んでいた。
生徒ナンバー38・若林安曇。
生徒ナンバー07・小野田摩智。
生徒ナンバー09・加藤麻冬。
生徒ナンバー18・立花瞳子。
生徒ナンバー31・牧原志穂。
生徒ナンバー17・曽我部小恋奈。
全員、椅子に拘束されたまま動かない。
けれど、菜々美は6人の顔も声も覚えていた。
輪郭は薄れていない。
血も。
傷も。
脱落者の発表もない。
生島菜々美
答えのないまま、赤い部屋に声が響いた。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
モニターに、最後の質問が表示された。
【SYSTEM】
生徒たち
あまりにも不穏な問いだった。
今いる9人の中で、いつか人を殺しそうな者。
わかるはずがない。
実際に人を殺した者もいない。
少なくとも、生徒たちが知る限りでは。
それでも、選ばなければならない。
新倉穂乃花
生徒ナンバー25・新倉穂乃花は、8人の名前を見つめた。
新倉穂乃花
気の強さ。
冷静さ。
感情の読めなさ。
それだけで、“人を殺しそうな人物”に仕立てなければならない。
そして、自分もそう見られているかもしれない。
新倉穂乃花
第3試練で菜々美からペアを誘われた時、穂乃花は断った。
互いを完全に理解することはできない。
間違えれば、菜々美まで危険に晒す。
正しい判断だったはずだ。
だが他の生徒には、親しい相手さえ冷静に切り離せる人間と映ったのかもしれない。
新倉穂乃花
タイマーが減っていく。
2:11。
2:10。
2:09。
生島菜々美
生徒ナンバー03・生島菜々美は、自分へ言い聞かせた。
生島菜々美
そう信じなければ、誰かを選べなかった。
菜々美は画面へ指を伸ばす。
3人を選び、“完了”に触れた。
正しいとは思えない。
ただ、生きるためだった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
タイマーが激しく点滅する。
最後まで迷った生徒も、追い立てられるように投票した。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
モニターに“集計中”と浮かぶ。
菜々美は穂乃花の姿を探した。
だが、フィルターに阻まれて見えない。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
和久井莉乃
最多の8票は、生徒ナンバー39・和久井莉乃。
自分以外の8人全員が、莉乃を選んだ。
和久井莉乃
第3試練で、幼馴染みの生徒ナンバー27・納富由香利は、莉乃の隣で命を落とした。
助ける方法などなかった。
それでも、親しい相手を失い、自分だけ生き残った事実が、冷酷さに見えたのかもしれない。
和久井莉乃
その声に、菜々美の耳の奥で由香利の死の直前の声が甦った。
痛いのは嫌――
消えかけた声。
それでも、菜々美は覚えていた。
根来歌音
2番目は、生徒ナンバー26・根来歌音。
6票だった。
前髪を横一直線に切り揃えた、肩までの髪。
幼い頃から歌手を夢見て、専属トレーナーの下で練習を続けている。
夢のためなら努力を惜しまない。
弱さを見せず、自分の道を譲らない。
その意志の強さが、追い詰められれば何をするかわからないという印象に変わったのだろう。
根来歌音
新倉穂乃花
3番目は、生徒ナンバー25・新倉穂乃花だった。
新倉穂乃花
汗が頬を伝う。
生真面目で、感情より正しさを優先する。
信頼できる一方、極限状態では冷静に誰かを切り捨てる。
そう見た生徒がいたのかもしれない。
新倉穂乃花
生島菜々美
菜々美の胸が締めつけられた。
誰よりも真面目で。
誰かの死を、自分のことのように悲しんで。
投票するたび、心の中で謝っていた穂乃花。
そんな彼女が、人を殺しそうだと思われている。
生島菜々美
菜々美は穂乃花へ投票していない。
だが、投票した者にも理由はあったのだろう。
本当の人格ではない。
他人にどう見られているか。
それだけが数字になる。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
莉乃、歌音、穂乃花の椅子が180度回転し、フィルターが消えた。
中央には、隔壁の向こうで動かない6人が並んでいる。
新倉穂乃花
根来歌音
和久井莉乃
中央の球体が3方向へ開き、赤い光が漏れ出す。
3人
【SYSTEM】
球体から、3本の光線が放たれた。
和久井莉乃
根来歌音
新倉穂乃花
赤い光が3人を包む。
やがて力が抜け、項垂れたまま動かなくなった。
生島菜々美
フィルターに阻まれ、姿は見えない。
けれど、最後に自分を呼んだ声は、はっきり聞こえた。
生島菜々美
返事はない。
それでも、存在は薄れていなかった。
穂乃花の声。
表情。
怯えた息遣い。
すべて鮮明に残っている。
生島菜々美
そう思わなければ、耐えられなかった。
コメント
1件
この第3問の投票結果、かなり重い展開でしたね…。和久井莉乃が8票も集めた理由に「由香利だけ死んで、私だけ生き残った」という自己分析が刺さりました。極限状態で“傍観者”がどう映るか、という問いを突きつけられている気がしました。そして穂乃花が「そんなふうに見えてたんだ」と気づく場面、菜々美が「違う」と信じているのと対比になっていて切なかったです。システムの無機質な進行と、生徒たちの内面の熱がうまく対比されてるな、と。