母親
……ねえ桜
キッチンで皿洗いをしている母親が テレビを観ている桜に声をかけた
桜
ん? なに、ママ
母親
あの……桜……最近、なんかあった?
桜
えっ?
母親
いや、あのね、ママの勘違いかも
しれないんだけどね?
最近、桜の様子がおかしいと思って、
なにかあったのかもって……ね
しれないんだけどね?
最近、桜の様子がおかしいと思って、
なにかあったのかもって……ね
桜
……別になんともないよ
母親
……親友、やめたりとか、してない?
桜
……
母親
独りじゃ、ないよね?
桜
それは……
母親
やっぱり。あなた、前帰ってきた時に、
「3人は親友……」とか、そんなことを
言っていたのよ。ずっと
「3人は親友……」とか、そんなことを
言っていたのよ。ずっと
桜
え……。それは無意識……
母親
でしょうね。それで? 大丈夫なの?
学校は?
学校は?
桜
……自分でなんとかする
母親
なんとかするって……。
どうやって?
どうやって?
桜
大丈夫だから。気にしないでよ、ママは
母親
先生には言わないの?
桜
言わない
母親
どうして?
桜
……私がやらないと、すっきりしないから
朝の会。 先生が教卓に立つと、教室が 静まり返った
担任教師
……みなさん、おはようございます
教室にいる児童たちが 挨拶を先生に返す
担任教師
昨日、雪希さんの体操服が
なくなりました。自分のと間違えた人は
いませんか?
なくなりました。自分のと間違えた人は
いませんか?
教室が騒めく
担任教師
静かに。昨日、名前のない体操服が
見つかっています。誰か心当たりの
ある人はいませんか?
見つかっています。誰か心当たりの
ある人はいませんか?
桜
(……雪希の体操服がなくなった?)
桜
(……体育は昨日、あったっけ?)
担任教師
念の為、確認を行ってください
児童たちは、体操服を確認し始めたが、 雪希の名前の書かれたものはなかった
桜はチラリと斜め後ろの席を横目で見る
雪希
……ねえ、璃乃じゃないよね?
璃乃
ちっ、違うよ!
雪希
でも、私の体操服を隠すなんて
璃乃しかいないじゃん!
璃乃しかいないじゃん!
璃乃
わ、私じゃ───
大きな声で話していたので、周りの クラスメイト達の視線が璃乃に集中した
璃乃
ち、違うって……!
わ、私じゃ……
わ、私じゃ……
璃乃
……!
璃乃が桜に見られていることに 気づき、一瞬驚いた顔をすると教室を 出ていった
桜
……まさか、ね
桜は真っ黒なノートを開けた 紙には前日書いた日記の 文字が並んでいる
─── ──雪希の体操服がなくなって、 疑われている璃乃は、 友達を辞めることになった
桜
ただの偶然……
桜
あ……
桜は、ノートのページを前に戻す
桜
これは……
桜
偶然、じゃない───







