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話が長いと思うけどどうぞ! パスされたボールをドリブル、 それから思いっきりシュート!
あたしがけったボールは ゴールネットにズバッと つきささった。
あたし
同じチームの男子たちから わきあがる声に答えて、 あたしはこぶしをふりまわす
男子
キーパーがくやしそうにじめんを たたきたがら、 負けおしみを言ってる。
へっへ~んだ。
見たか、あたしの スーパーシュート!
パンツくらい見えたって、どうってことないもんね~っだ。
野球もバスケも得意な あたしだけど、 近ごろマイブームは サッカーなんだ。
朝早く学校に来ては、男子と いっしょに校庭を かけずりまわってる。
あたしにとって、 男子っていうのは、 ただの遊び仲間。
最近「〇〇くんが好き」って恋バナで盛りあがってる女子多いけど……
正直、この話題、 ピンとこないんだよね。
だいたい、サッカーで あたしに勝てない男子なんて、 恋の相手にならない。
あ~、授業なんかタイクツ。
それに、朝から いっぱいあばれたから、 おなかペコペコ。
……って思ってたら、 背中をツンツンつつかれた。
つついてきたのは、 後ろの席に座ってる、 さっきのキーパー。
キーパー
あたし
わーい、やっときた 二時間目の休み時間🎵
男子にまじって、ベランダに あぐらをかいて座り、 お弁当を広げる。
く~っ、ウマイッ!
そんなあたしに目を留めた男子が、あきれたように話しかけてくる。
男子
あたし
あたし
キーパーがいそがしくお弁当を かきこみながら、口をはさむ。
キーパー
うわ、ムカつく……
けど、まぁ女の子らしくないのは 認める。
あたしは言い返した。
あたし
キーパー
キーパー
キーパー
口にエビフライをつけこんだこ だったから、あたしは返事のかわにガッツポーズを作ってみせた。
当ったり前だよ!
次もシュート決めてやっからね!
昼休み。
買ってきたサンドイッチを牛乳といっしょに三分でながしこむと、 あたしは男子たちと校庭を走った。
あれ?
もうだれかいる。
だれだ?
アイツ?
ゴールポストをねらってボールを けり、はね返ってきたボールをまたポスト目がけてける……
っていうのをくり返してる。
すごい、全部、命中されてるよ。
すらっとした身長……。
ちょっと見とれるぐらいで キマッてる。
キレイにリフティングしたと 思ったら、今度はボールを いっしゅんふわっとうかせて、 そのまま強烈なシュートを はなった。
めっちゃうまい!
そのとき、サッカー部の先生が 来て、言ったんだ。
先生
先生
あたし
先生
先生
うおぉ!
マジかよ~⁉️
まわりの男子たちから、 どよめきが起きる。
アイツがこっちへやってくる。
風がふいて、髪でかくれてた するどいまなざしが、見えた。
先生
先生の提案で、試合が始まった。
新顔のエーススライカーは、 あたしのチーム。
フン、全国大会出場だかなんだか 知らないけど……。
どのくらいデキるのか、 たしかめてやるかな。
あたしは合図もなしに、アイツに いきなり速いパスを出す。
と、すばやくボールに追いついて トラップ。
そして、かっこよく ロングシュート。
決まった!
アイツは片手をふりあげながら、 あたしのほうにはしってきた。
王子
すれちがいざま、 顔の横にすっと手をあげる。
パーン!
その手に無意識のうちに ハイタッチしてた。
茶色がかったサラサラ髪が、 太陽の光をあびてかがやいている。
ズキュ~ン💘
……ヤバイ。
何これ?
胸が打ちぬかれたみたいな……
ショーゲキ!
それにしても、あたしが一本も ゴール決められないなんて ど~いうこと!
ゲーム中、アイツばっか目で 追っちゃってたせい⁉️
気がついたらいつのまにか、 女子たちがグラウンドのわきに いっぱい集まってて
女子
ってキャーキャーさわぎたててた。
その日から、アイツのあだ名は 「王子」に、決定。
王子は、あたしのクラスになった。
だけど……、王子が来てから、 あたしはなんか おかしくかっちゃったんだ。
なんだかキモチがモヤモヤしてる。
テキトーにしばってた髪が 恥ずかしく思えて、 おろしてみたけど……。
授業中、窓に映った自分の髪が あんまりボサボサなのに気づいて、がく然とする。
あわてて髪をなでつけてみたもの……
お手入れなんて、 したことないんだもん。
急にキレイになるわけなによね。
あれ以来、サッカーじゃ、得意の ボレーシュートが全然決まらない。
それはスカートのすそがやけに 気になって、思いきっり 走れないせいで……。
あたし、どうしちゃったんだろ?
自分のことがわからなくって 混乱状態。
………そんなとき、友だちにこんな 心理ゲームを聞いたんだ。
恋の心理ゲーム
今、いちばん気になっている男の子を思いうかべながら、答えてね。
風船 ひこうき 鳥 ほかの気球
風船を選んだなら…… その男の子に 恋 をしているよ
ひこうきを選んだなら…… その男の子のことを 友だち以上恋人未満 って思っているよ
鳥を選んだなら…… その男の子のことを 友だち って思っているよ
ほかの気球を選んだなら…… その男の子のことを ただの知り合い って思っているよ
王子を思いうかべて、「風船」を 選んだあたしは………
どうやら、王子に 「恋をしている」 ってことになるらしい……。
そっかぁ、これが初恋ってヤツか!
ってわかってから、あたしは 「恋する乙女」 へと変わったのだ。
サッカーは、 もうやんない。
見るの専門に。
サバサバ洗うだけでほったらか だった顔には、化しょう水を コットンでパタパタ。
生まれてはじめて、 色つきのリップクリーム も買った。
髪はヘアパックでお手入れ。
ドライヤーで毎朝ブローしてる。
早弁なんて、もちろん、 もうしない!
だけど……。
女の子らしくするのって、 けっこうたいへんだね。
慣れないあたしは失敗も しょっちゅうで……。
そもそも 朝食、早弁、昼食、おやつ、夕食……
とがっつり食べる派だったあたし。
だから、悲しいことに、三時間 にはもうおなかがグーグー 鳴っちゃうんだ。
リップクリームはぬりなおすのを わすれて、ときどきハゲてる。
ドライヤーのかたかけが ヘタクソなせいか、 すぐあちこち髪がハネちゃう。
そんなこんなで毎日、 アタフタして ばっかなんだよね。
しかも、サッカー やらなくなったから 王子と話す きっかけが、ない!
っていうか……。
王子の姿が見えると、 それだけでドキドキしちゃって、 近よれないんだぁ~!
あたし
あたし
と思っても、なんか体が ギクシャクしちゃって、 結局、素通りしちゃったり。
それで、王子が女の子に かこまれてしゃべってるのを、 こっそり見てたりする。
こんな状態、やだ~!
え~い。
遠くから見つめるだけなんて、 全然あたしらしくないっ!
好きなら好きって、 さっさと伝えちゃえばいいじゃん⁉️
あたし
実は、ウチの学校には、 告白にぴったりの 言い伝えがあるんだ。
終業式の日にハート型の スケートリンク 「ロマンスリンク」 に行ったカップルは、 幸せになれる……。
っていうの。
だから、 「ロマンスリンク」 に来てくださいって 手紙にかいたため
パステルピンクのレターセットを 買って。
書きあがった手紙を、ふたつに 折ってふうとうに入れる。
仕上げに、これもピンクの ハートシールでふうをした。
生まれてはじめての ラブレターだよ。
ダメならダメでいいよ。
それはそれでサッパリ できるはずだもん。
と・に・か・く!
これをわたすぞ!
よ~し。
次の日の放課後、あたしは 書きあげたラブレターを にぎりしめ、げたばこのそばで 王子を待っていた。
あたし
来た!
声をかけようとしたけど、 口が固まっちゃった みたいに開かない。
王子は、ゆっくりと近づいてくる。
あたしのこと、 気づいてないみたい。
手紙をわたしたいのに。
手足がカチンコチンに なって動かない。
王子が……
目の前を通りすぎていく。
王子は、げたばこのシューズに 手をかけた。
ホントに今しか、ない。
今、なんとかしなきゃ。
このままじゃ、行っちゃう!
待って!!
次のしゅんかん、あたしは 力をこめて王子のカバンを 引っぱっていた。
目を見開いて、王子がふり返る。
両手をまっすぐ差しだして、 王子の胸にぐっと 手紙をおしつけて……。
そのまま、あたしは 走り出したんだ……!
やった!
とにかくわたせたぁ!
難しいシュートが決まったとき みたいに、ソーカイな気分。
あたしは思いきりかけていって、 校庭で大きくジャンプした!
あたし
次の日、終業式が終わって……。
あたしはひとり、 ロマンスリンクに走った。
さっきから、ものすごい ドキドキして、心臓が はれつしそうだよ。
王子………
来てくれるかな?
来てくれますように!
一秒が、一時間ぐらいに 思えちゃうよ。
あ、となりのクラスの子が、 男の子と手をつないで 近づいてくる。
いいなぁ。
あたしも、あんなふうに なれるのかな?
そのとき。
向こうから、背の高い男の子が やってくるのが見えた。
あれは、もしかして?
あたし
王子だ!
あたしを見つけて、片手をあげる。
来てくれた。
来てくれたんだ。
やった~!!
あたしは王子に向かって、 ちぎれるぐらい強く、 大きく手をふった!
その時のほんのちょっとの勇気が 君を大きく変えてくれたよ。