ジリリリリリリッ‼︎
灯原
灯原
うわぁっ⁉︎
僕は、けたたましい目覚ましの音で強制的に起こされた。
灯原
灯原
はぁ...
今日はいつもと違う日だ。
灯原
学校に行きたくないけど、昨日の夜約束したしなぁ...
あの夢だか現実だかハッキリとしない出来事。
信じるか信じないかは置いておいて、ただ気になりはする。
灯原
灯原
行くか...
僕は久しぶりに学校に行く支度を始めた。
正午を少し過ぎた頃、僕は屋上の扉の目の前にいた。
灯原
予定だと大体、この時間かな...
僕は力一杯に扉を開けた。
すると彼女はこちらに気付いた様子で笑みをこぼした。
水鏡
やっほー‼︎昨日ぶりだね‼︎
灯原
やっぱり、夢じゃなかったんだ...
水鏡
えー?夢だと思ってたの?
灯原
だって昨日別れた後、僕は部屋にいたから...
水鏡
あー、あれはね...
水鏡
水鏡
雫マジックだよ‼︎
灯原
は?
水鏡
まあ、要するに秘密ってことだよ‼︎
灯原
(何だか、はぐらかされたような...)
水鏡
それより、早く本題に入ろうよ‼︎
灯原
あ、うん...
言われるがまま、僕と水鏡さんは対面をするように座った。
水鏡
で、小説が炎上して暴露されて今に至る訳だけど...
水鏡
灯原君は小説を書くことはどのくらい好きなのかな?
灯原
ど、どのくらいって...
僕は両手を目一杯に広げて表した。
水鏡
あははっ‼︎なるほどね‼︎
水鏡さんは僕をからかう様に笑った。
水鏡
じゃあさ、その小説は誰の為に書いてるの?
誰の為...?
灯原
それは...僕の小説を見てくれる人の為だよ...
水鏡
ホントニー?
灯原
な、何だよ...
水鏡
まあ、いいや。
水鏡
じゃあさ...
水鏡
水鏡
炎上した時にいつも読んでくれている人は君を助けてくれた?
灯原
それはもちろ...
...あれ?
どうして即答しないんだ...?
水鏡
いつも、いいねをしてくれる人は?いつも、コメントをくれる人は?
灯原
....
水鏡
もしかしてさ...
水鏡
水鏡
誰も助けてくれなかったんじゃないかな?
灯原
そ...そんな筈...
『いつも楽しみにしてます‼︎』
あれ...?あの人は確か...
『謝るってことは認めたってことですよね?さっさと消してください。』
灯原
灯原
う、嘘だ...
水鏡
思い出したかな?
僕はショックで頭を抱えた。
灯原
じゃあ僕は...
灯原
灯原
誰の為に小説を書いているんだ...?
水鏡
....
水鏡
灯原君。君はさ、難しく考え過ぎなんじゃないかな...?
水鏡
私も昔、小説じゃないけど詩を書いていた時期があってね...
水鏡
私はそれを何も考えずにSNSで発信したんだよ。
水鏡
そうしたら、いいねやコメントがたくさん来たんだよね。
水鏡
その時に私は、共感者がたくさんいて嬉しい‼︎...とかは思わなかったんだ。
水鏡
水鏡
お前らに私の何が分かるんだよ...って思ったんだ。
灯原
えっ...
水鏡
だって私は私の為に書いただけなのに、知らない人達が同情してくるんだもん。
水鏡
...だからね、灯原君。
水鏡
水鏡
小説を書くのなら人の為じゃない。自分の為に書いてごらん。
灯原
自分の為に...?
水鏡
そう‼︎自己中で何が悪い‼︎
灯原
ふふっ...
水鏡
おや?今、笑ったね?
灯原
あっ...いや、これは...
水鏡
あははっ‼︎恥ずかしがらなくてもいいよ。
僕は落ち着いたのか、不思議と笑みがこぼれた。
そんな僕を見て水鏡さんも笑った。
だがそれは、からかう様な笑みではなかった。
心の底からの笑顔だと分かった。