イガラシが開けた扉は――先ほどと同じ教室。
同じクラスの生徒達と何度も目を合わせることになるのは、なんとなく気まずいような気もしないではないが、イガラシがとりあえず一勝をあげるのであれば、今一度【パー】を出しておきたい。
イガラシ
(これまでの流れで考えるならば、俺はここで【パー】を出しておくべきなんだ)
イガラシは生徒達に向かって小さく頷くと、改めて廊下に戻る。
革命軍
さて、今のジャンケンの結果だ。
革命軍
1年【パー】
革命軍
2年【パー】
革命軍
3年【グー】
革命軍
よって1年と2年の勝ち。
革命軍
これにより1年は1勝。
革命軍
2年は2勝。
革命軍
3年は1勝となる。
イガラシ
(よし、思った通りの手が出てくれた)
イガラシはこの数戦で、それぞれの大まかな動きを観察し、そしてこの結果を導き出した。
イガラシ
(まずオオタ先生。彼女はもしかすると、このじゃんけんの本質に気づいているのかもしれない)
イガラシ
(もしくは、特定の教室の生徒に思い入れがある――とか)
イガラシ
(でも、彼女は保健養護であって、担任を持っていないから、どちらかと言えば前者の可能性が高いだろう)
イガラシ
(だから、変わらず【グー】を出してくれると思っていた)
革命軍
まだ続けるか?
革命軍
まぁ、今やめてしまったら、1年と3年が全滅となる。
革命軍
被害は最小限に抑えないとな。
イガラシ
(言われなくても分かってる。被害は最小限に抑えるに越したことはない)
イガラシ
(そう、可能な限りの最小限に――)
心の中で【革命軍】に反論しつつ、イガラシは思考の淵へと戻ってくる。
イガラシ
(このじゃんけんにおいて重要なのは、おそらくキョウトウ先生の動きになる)
イガラシ
(でも2回戦が終わった時点で確信した。キョウトウ先生は当てずっぽうに教室の扉を開けているわけじゃない)
イガラシ
(むしろ、教師――生徒の命を守る預かる身としては、当然の行動なのかもしれない)
イガラシ
(つまり、キョウトウ先生は安否確認をして回っていたんだ)
イガラシ
(どこかの教室に執着するわけではなく、ひとつずつクラスを見て周り、何よりも生徒の安否をまず確認しようとした)
イガラシ
(その結果として、初戦は【グー】を出し、続いて【チョキ】を出した。となれば、次――今の勝負でキョウトウ先生が開ける扉は、まだ安否確認ができていないクラスの教室ということになる)
イガラシ
(よって、この勝負では、まず確実にキョウトウ先生が【パー】を出すことが分かっていた)
イガラシ
(結果として、俺とキョウトウ先生が勝つ形になってしまったわけだが、これで一歩前進だ)
革命軍
なんというか、こう何度も勝負を積み重ねていくと、緊張感が薄れていくな。
革命軍
勝った時の重みが違う――とでも言うべきか。
イガラシ
(なんだ、急に変なことを言い出したぞ)
革命軍
うん、ならばこうしよう。
革命軍
勝負は何度続けても構わないルールだったが、それを変更しよう。
革命軍
――次だ。
革命軍
――次の勝負で決着としよう。
イガラシ
(……なんだって!?)
革命軍
1年と3年は次勝てないと、総合的な負けが確定するな。
イガラシ
(くそ、好きなだけ勝負を繰り返すことができるなら、きっといずれは理想の形に持っていけると思っていたけど――)
イガラシ
(そこに制限――しかも、勝負できるのが一度のみとなってしまうと厳しいぞ)
イガラシ
(どうすればいい?)
イガラシ
(俺だけ勝っても仕方がないんだ)
あちらから、考える時間を与えられたのであろうか。
しばらく間を置いた後、またしても放送が響き渡る。
革命軍
それでは、そろそろ行こうか。
皮肉にも、また件の掛け声が響き渡る。
それは生徒達にとっての死刑宣告か。
それとも――。
革命軍
じゃんけん――ぽん!
悪魔の掛け声が響き渡る。






