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もな
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14
#鬼滅
ユイ
108
朝、洗面所の鏡に向かって、私はきっちりと制服の襟を正した。 遅れてバタバタと洗面所に飛び込んできたのは、双子の姉の紗花(すずか)だった。 彼女は制服の第一ボタンを外したまま、ポニーテールを揺らして私の背中にぎゅっと抱きついた。
山中紗花
山中絃花
苦笑いしながら鏡を見ると、そこにはDNAレベルで全く同じ顔、同じ声の二人が映っている。 だけど、中身は正反対。 太陽みたいに弾ける笑顔でみんなから慕われるお姉ちゃんと、影に隠れるように生きている私。 同じ容姿なら、男の子はみんな、明るくて可愛いお姉ちゃんを選ぶに決まっている。 私は鏡からそっと目を逸らした。
家を出て、いつもの角を曲がると、電柱に背を預けてスマホをいじっている幼なじみ――御影壱也(いちや)の姿があった。 壱也は私たちの足音に顔を上げると、すぐに目元を和ませて手を振った。
御影壱也
山中紗花
紗花が嬉しそうに壱也の隣へ駆け寄る。 壱也は自然な動作で紗花の頭をぽんぽんと撫で、それから愛おしそうに彼女の手を握りしめた。恋人繋ぎ。それが二人の当たり前だった。 私たちのいつもの並び順は、【 絃花 ── 紗花 ── 壱也 】。 お姉ちゃんを真ん中にして、楽しそうに笑い合う二人の声を、私は一歩引いた通路の端っこで聞きながら歩く。 これが私の特等席だ。 中学2年の夏。 二人が付き合い始めたあの日、私の初恋は静かに終わった。壱也にとって、私はただの『幼なじみの妹』。 お姉ちゃんを愛おしそうに見つめる彼の瞳に、私が女の子として映ることは一生ない。 (これでいいんだ。私は、物分かりの良い妹の仮面を被っていればいい) そう自分に言い聞かせながら、痛む胸をぎゅっと抑え込んで歩き続けた。
学校の下駄箱に到着すると、紗花が「あ、部活の朝練にちょっと顔出してくる!」と嵐のように去っていった。 残された壱也と私が教室へ向かおうと階段を上りかけた時、後ろから低くて、どこか穏やかな声が響いた。
榛野吏玖
御影壱也
そこにいたのは、入学式で壱也と意気投合したというクラスメイト、榛野吏玖(りく)くんだった。 整った顔立ちに、どこかおっとりとした、でも掴みどころのない瞳。 榛野くんは壱也と拳を軽く合わせたあと、その視線を、壱也の少し後ろに隠れるように立っていた私へと移した。
御影壱也
壱也が私の紹介をする。榛野くんは私の顔をじっと見つめた。
榛野吏玖
その視線の丁寧さに、私は思わず一歩後ずさり、俯いてしまう。 (やっぱり、お姉ちゃんと比べられて、地味だって思われたかな……) 萎縮する私に気づいたのか、榛野くんはふっと目元を柔らかく緩めて、少しだけ屈んで私と視線を合わせた。
榛野吏玖
榛野くんは制服のポケットから、未開封のイチゴオレの紙パックをスッと差し出した。 そして、私が驚きながらもそれを受け取るのを、優しく待ってから手を離した。
山中絃花
榛野吏玖
壱也の肩を優しく叩いて、おだやかな足取りで歩いていく榛野くん。 手のひらに残る冷たいイチゴオレの感覚と、彼の柔らかい優しさに、私はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
コメント
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お疲れさまです、寺島あおいです🌷 読み終えました——冒頭からもう、胸がぎゅっとなりました。鏡に映る「DNAレベルで同じ顔」の双子なのに、中身の明暗がここまで鮮やかに描かれていて、絃花さんの「特等席」という言葉が切なく刺さります。幼い頃から恋を終わらせることを自分に言い聞かせてきた痛み、すごく伝わってきました。 そんな中で最後に差し出されたイチゴオレ——榛野くんの「間違えないよ」という一言と合わせて、とても優しい光が射したような終わり方で、続きが気になって仕方ないです。細やかな心情描写が丁寧で、ゆゆさんの作品、すごく好きです🍓