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ドンドンドン!
扉が激しく叩かれている
吐き気を催すような汚い声が 薄い扉一枚隔てて聞こえてくる
こんなに恐ろしいことはないのに
他人事のようにしか感じられなくて
もしもこれがマンガであれば
アニメであれば
小説であれば
もう顔も思い出せないお母さんが 助けに来て
もう大丈夫だよって手をさしのべて
あったかい家とご飯をもらって
それできっと、ハッピーエンドなんだ
けれど、ここは現実で
そんな妄想なんて 億が一にも起こらない
全部
全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部
ただの空想
扉を叩く音が止んだ
きっと大家さんのところに行ったんだ
大家さんにここの鍵を開けさせて
ぼくを殺しにやってくる
そう考えた瞬間 自分の死がまざまざと目の前に見えた
包丁の切っ先
奴の瞳
声もあげられずに立ちすくむ自分
腹を割かれ
目を潰され
口を削がれ
最後は首を締められ
縊死
ぞわりと背中の産毛が逆立つ
しにたくない
台所の戸棚
触ることを許されていない包丁を
そっと手に取った