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いないけど!出てこなかったけど一言! 「おい柚月くんの母親てめぇ!あとで(ピーーー)するからな!」←冗談ですすいません もう泣きそうになりましたマジで... テストで目標?達成できることを願います... (そんな簡単にいけるか心配...全ては非リア弟さんの判断にかかってる...)←メタい
柚月くん頑張ってー!
私はその時ゲームをしていた。
だから柚月君のラインに気づかなかった。
届いたのは 私を気遣う言葉と
「何があっても大丈夫」が嘘にならないようにすると、決意のこもった、長文。
私が気づかないでいた数時間、柚月君に1人で戦わせてしまった。
「私は大丈夫」とラインするには遅すぎた。
どうしてゲームなんかしてたんだろう。
いつも二人がかりで倒していたボスは、1人で倒せるわけないのに。
今日は少し高い酒を買って帰ろう。
そう思ったのは、「あの時」以来だ。
「あの時」とは のぞみとの交際経験が、はっきりと過去形に出来た日。
完全下校時刻間近。 校内の見回りをしていると、2年の教室の1つがまだ灯りがついていた。
一声かけるべく その教室のドアを開ける。
西谷春翔
言葉が止まったのは、告白現場を目撃したからとかではない。
教室に居たのは男子生徒1人。
机の上に数学の教科書やノートを広げ頬杖をついて
その男子生徒は数学の問題を解いていた。 夢の中で。
___睡眠時間が足りない人が、睡魔と闘う時間帯は給食の後の5時間目だけではない。
夕食前の時間も眠い時は眠い。 要するに教室に居る男子生徒は睡魔に負けて居眠りしているのだ。
だけど問題はそこじゃない。 睡魔に負けた男子生徒は、俺と浅からぬ因縁がある。
男子生徒の名前は鳴沢柚月__「元カレVS今カレ騒動」を繰り広げた仲である。
「放課後の教室に、元カレと今カレ(無防備)が二人きり」とか 誰が得するんだろう…
とりあえず呼んでみた。
西谷春翔
………… 返事がない。ただの屍(しかばね)のようだ。
って違う! 肩を掴んでそっと揺らした。
鳴沢柚月の目が開いた。瞬きを繰り返す。
鳴沢柚月の視線が数学のノートと時計を往復し、すっごい絶望した顔になった。 寝落ちは本当に良くない。
鳴沢柚月がため息を吐いて勉強道具を片付け始める。
俺はその姿に苦笑しながら声をかけた。
西谷春翔
柚月
柚月
今 その名前を聞くとは思わなかった。
少なからず動揺した俺に構わず、鳴沢柚月が次の言葉を発した。
柚月
鳴沢柚月は確かに優秀だけど、それはあまりにも非現実的すぎる気がする。
そんなことを口に出すのは、余計なお世話と言うモノだろう。
その揺らがない決意を秘めた 横顔と声を目にしたのなら、かける言葉は1つだ。
西谷春翔
「頑張れよ」なんて俺が言うのは変か。
俺は昔この中学生を、物凄く傷つけたから。
それでも鳴沢柚月は少しだけ笑顔を見せると、会釈して去って行った。
迷いはない。
見てるこっちが清々しくなるから、結局 言葉は滑り出た。
西谷春翔
たまにラブコメの神様は えげつないことをする。
1人楽しく晩酌をしようと、近くのコンビニに寄ると___
いた。
昔の彼女が。
数時間前に、今カレと密室で過ごすと言う結構なイベントを終えたのに
今度は 彼女の方とエンカウントだ。
やはり俺の青春ラブコメは間違ってる気がする。
昔の彼女___のぞみは清涼飲料水が並んでいる棚の前で、ぼんやりと立ち尽くしている。
と、思ったらのぞみが急にこちらを向いた。
逃げる間もなく、二人の視線がぶつかった。
山川のぞみ
すっごい冷ややかな声が流れた。
走って逃げたい衝動にかられたが、不審者を見る目で俺を見ているレジの店員の存在に気付き、頑張って我慢する。
俺は無理やり笑みを作った。気まずすぎる。
西谷春翔
山川のぞみ
まだ俺を知り合いとして扱ってくれる所が、のぞみの良い所だと思う。
良い意味でも悪い意味でも優しすぎる。
のぞみは再び清涼飲料水の並んでいる棚に視線を戻した。
その視線の先にあるのは、コーラとかサイダーとか…。 のぞみは炭酸は飲めないはずだ。
西谷春翔
山川のぞみ
山川のぞみ
声が濡れていた。
どんな表情を浮かべているのか、容易に想像出来た。
__俺は今日も明日も明後日も、酒の気分だ。 炭酸の気分じゃない。
西谷春翔
西谷春翔
のぞみが目だけ動かして俺を見た。
山川のぞみ
西谷春翔
西谷春翔
俺が言うのも変か。言わずにはいられなかったんだけど。
でもやっぱり恥ずかしいから、取り消すことは出来ないだろうか。
山川のぞみ
西谷春翔
目の前の大学生と、数時間前に話した中学生が俺にメスを入れた。
だから その言葉は、出て来る。
西谷春翔
西谷春翔
心から思う。頑張って欲しい。
二人には。
一度 口にした言葉は消えない。
ヨリを戻したい一心で放った言葉も
消せはしない。
数時間前に漏らした、「頑張れ」という言葉は
消したくはない。
傷つけた言葉も消えないのなら、 その逆の言葉も消えないはずだ。
ならせめて 心からの言葉を贈ろう。
頑張れよ と、誰にともなく言いながら飲む酒は
いつもより美味いはずだ。
今日は少し高い酒を買って帰ろう。
1人でゲームをするには長すぎて
私も何か出来ないか、と考えるには短かすぎた。
1日の終わりに、カレンダーにバツ印をつけていく。
前までは、柚月君が遊びに来る日は数字を赤ペンで囲っていた。
最近はバツ印だけ。
あ、でも違う。 翌日の数字には蛍光ペンでアンダーラインが引かれている。
明日から学年末テストだ。
この7日間、私はバツ印をつけることしか出来なかった。
せめて 応援のメッセージを送ってあげようとラインを開いたけど
あの長文のメッセージが目に入り、結局送信ボタンは押せなかった。
とても大事な戦いがあるのに、邪魔するわけにはいかない。
「長続きしそう」とか、照れたパンダのスタンプとかを眺めて 無理やり目を瞑った。
二人でゲームしていた時のことが、走馬灯のように瞼の裏に浮かんでは消える。
二人で対戦した時もあったし、二人で協力した時もあった。
私の回復スキルが弱すぎて、充分にヒール出来ない時もあった。
「回復全然意味ないじゃん」
私の隣で、柚月君が笑いながら言った。
「このままじゃ絶対に勝てないから、」
「お姉さん前に出て、敵の攻撃受けといてよ。僕は必殺技チャージしとくから」
「要するに囮ですね」
私も笑いながら言った。
「盾役だよ」
「物は言い様だね_______あっ、死んだ」
「早」
目を瞑ることで、せき止められると思っていた涙は たやすく私の頬を流れた。
どうして涙が出るのかなんて、考えるまでもない。
あの幸せな時間が、過去になってしまうかもしれない恐れ。
そんな瀬戸際の戦いに、私は何も参加出来ない無力さ。
今の自分は盾役にもなれない。
結局あの時のゲームでボスは倒せなかった。
ジト目を向けて来る柚月君に、あの時の私は言った。
「気持ちはMAXだったんだけどなぁ」
例えどんな結果になろうとも
詰(なじ)ることはしない。
あの時と同じ
「頑張れ」という気持ちはMAXだから
柚月君
頑張ってね