それから数ヶ月
あの日出会った野良猫は 小春により「みかん」と命名され
山都家の一員として 幸せに暮らしていた
山都小夏
まだ寝てるのかな?
山都小春
グータラしちゃってさ
山都小夏
山都小夏
山都小夏
みかん
山都小夏
山都小夏
みかん
みかんは小夏に言われると 駆け足で大輝が眠る 寝室にかけて行った
山都小春
山都小夏
山都夏輝
目が覚めるからな
山都大輝
みかん
みかんは扉の隅にに造られた 小さな扉から抜き足差し足で 忍び込む
みかん
みかんはそう叫ぶと 大輝の顔に覆い被さる
山都大輝
みかん
山都大輝
山都大輝
(分かったから)
山都大輝
(起きる!起きる!)
みかん
山都大輝
(起きるから)
山都大輝
(苦しい)
山都大輝
大輝は顔にしがみつく みかんを振り解く
山都大輝
山都大輝
みかん
みかんはすぐさま リビング向かって走り去る
山都大輝
山都大輝
山都大輝
どうにかなんねーのかよ
山都夏輝
山都小春
山都大輝
かなわねーよ
みかん
寝てるからだよ
山都大輝
休みの日くらい!
山都大輝
寝てたいわ
みかん
山都大輝
使っちゃいけません!
山都大輝
謙虚さはどこ行った?
山都大輝
って言ってたみかんは
どこ行っちまったんだよ
みかん
受け入れてくれたから
山都大輝
山都大輝
山都大輝
寝るんじゃなくて
山都大輝
ハグし続けてやるー
みかん
みかんを追っかける大輝と それから逃げ惑うみかん
山都大輝
山都大輝
ハグくらいいいだろーが!
山都大輝
山都大輝
みかん
山都夏輝
山都小春
なんだかんだ
言いながら
山都小春
大好きじゃん
山都夏輝
山都小夏
そこまで!
山都小夏
台所に持って行って
山都大輝
大輝は小夏に言われ 食器を台所へ持って行く
山都小春
小さく見える
山都夏輝
言ってあげるな
山都小夏
みかんを猫吸いぃぃ
小夏はみかんを抱き抱え 猫吸いをする
みかん
山都小春
山都小春
オスなんだね
山都夏輝
言ってあげるな
数日後の深夜
みかん
みかんは皆が寝静まった頃
家の中を歩き回っていた
みかん
みかんは戸棚に並べてある クロ、ハル、ルプの写真を 黙って見つめている
みかん
クロ
珍しいのか?
みかん
みかんは驚きながら 声がする背後に振り向く
ルプ
ダメでございまするよ
ハル
俺たちがこの場に
居る時点で
ハル
みかん
みかんは驚いた様子で 目の前のクロたちと 写真を何度も交互に見る
みかん
クロにハル──
みかん
クロ
ハル
ルプ
ございまする!
ルプ
みかん
死んじゃったんでしょ?
みかん
生き返ったの?
クロ
クロ
クロ
みかん
みかんはクロに言われるがまま 前足でクロに触れようとする
しかし前足には感触はなく すり抜けてしまった
みかん
みかん
クロ
ハル
触れねーよな
みかん
みかん
君たちが居るの?
ルプ
会いにきたので
ございまするよ!
みかん
みかん
僕の名前を知ってるの?
クロ
みかん
ハル
天国ってヤツだよ
みかん
ルプ
実に可愛い名前をつけたで
ございまするなぁ
みかん
会いにきてくれたの?
クロ
伝えたくてな
みかん
クロ
クロ
伝えたかった
みかん
ハル
みんなを見守る事さえ
出来なくなっからさ!
ルプ
みかん氏に家族を
託したかったので
ございまする!
みかん
クロ
ハル
ルプ
任せれるでございまする
みかん
足早に立ち去ろうとする クロたちをみかんが呼び止める
クロ
みかん
ハル
みかん
ルプ
言うでございまする
みかん
みかん
なれてるのかな?
クロ
なんだ?それは?
みかん
みかん
クロ
クロ
勘違いをしている
みかん
クロ
クロ
クロ
代わりなんて
思っていない
みかん
ルプ
ハル
ハル
見てたかもしれねー
ハル
名前を与えられた
ハル
ハル
みかん
クロ
クロ
なんかじゃ決して無い!
クロ
みかん
ハル
ルプ
行かなければならないで
ございまする!
みかん
みかん
忘れないから!
クロ
クロは微笑むと みかんに背を向けて歩き出す
クロ
みかん
クロ
みかん
ハル
しがみ付くヤツだよ!
みかん
ルプ
ございまするよ!
クロ
やっていいぞ!
クロ
みかん
クロ
行かなければならない
ハル
みかん
ルプ
ございまするよ
ルプ
ルプ
ございまする!
みかん
クロ
クロがそう言うと 部屋全体をまばゆい光が 包み込んだ
みかん
みかんはあまりの閃光で 目を閉じる
みかん
みかんが目を開けると すでにそこには誰の姿もなかった
みかん
みかん
ありがとう・・・
山都大輝
山都大輝
そこに大輝が寝ぼけ眼を こすりながらやって来た
みかん
山都大輝
みかん
みかんは言葉を詰まらせる
山都大輝
みかん
みかん
山都大輝
山都大輝
山都大輝
山都大輝
大輝は再び寝室へ行こうとする
みかん
それをみかんが呼び止める
山都大輝
みかん
みかん
山都大輝
みかん
どんな猫だったの?
山都大輝
みかん
みかん
みかん
知りたいんだ
山都大輝
大輝はみかんから 何かを察したのか
山都大輝
ならちょっとだけ
話してやるから
大輝はみかんを抱き抱え クロたちの写真が飾られている 戸棚の前に腰を下ろす
山都大輝
みかん
山都大輝
山都大輝
みかん
山都大輝
言葉遣いが変なんだよ
山都大輝
ございまする
って付けるんだよ
みかん
山都大輝
会った事あったっけ?
みかん
みかん
そんな感じするな〜って
山都大輝
みかん
そんな喋り方なの?
山都大輝
知らねーな
山都大輝
そうだったからさ
山都大輝
テキトーなキャラ付け
したかったんじゃね?
みかん
何?それ?
山都大輝
山都大輝
マイペースなヤツだったな
山都大輝
御構い無しって感じでさ
みかん
感じだね
山都大輝
そんな感じだな
山都大輝
山都大輝
山都大輝
不思議と明るくなったんだ
みかん
みかん
って感じだね
山都大輝
山都大輝
山都大輝
みかん
山都大輝
口が悪いんだわ
山都大輝
チンピラだな!
みかん
みかん
みかん
悪かったね
山都大輝
みかん
やっちゃった)
みかん
みかん
悪そうだなぁって
山都大輝
顔見ただけで
わかるもんなのか?
山都大輝
みかん
だいたいは
山都大輝
みかん
どんな猫だったの?
山都大輝
よく憎まれ口叩く
ヤツだったけどさ
山都大輝
山都大輝
友情にアツいヤツだったよ
みかん
山都大輝
なった事があってさ
みかん
山都大輝
みかん
みかん
山都大輝
山都大輝
獣医さんのおかげで
完治したんだけどな
みかん
なっちゃうのかな?
山都大輝
山都大輝
超一流だからよ
山都大輝
すぐ治してくれる
みかん
山都大輝
みかん
名前テキトーじゃない?
みかん
山都大輝
同じ事言うのかよ
みかん
山都大輝
みかん
山都大輝
とにかく人を舐めてる
山都大輝
逆撫でする事ばっかり
言いやがるんだよ
山都大輝
まるで感じられん!
みかん
出会った時に
言ってたよね?
みかん
事だったんだ
山都大輝
頭が悪くてデカい猫
山都大輝
思ってねーんだよ
みかん
山都大輝
山都大輝
コイツのおかげなんだよ
みかん
山都大輝
同じ職場にいてさ
みかん
山都大輝
みかん
山都大輝
みかん
山都大輝
小夏の事が
好きだったんだよ
山都大輝
みかん
山都大輝
なかったし──
山都大輝
山都大輝
ある訳じゃなかった
山都大輝
不釣り合いだ!って
そう思ってたんだ
みかん
山都大輝
クロと出会って──
山都大輝
山都大輝
山都大輝
小春っていう可愛い
子供まで授かった
山都大輝
幸せを運んでくれた
幸運の黒猫だ
みかん
山都大輝
感謝を伝えたかった
山都大輝
足りないくらいに
クロには感謝してんだよ
みかん
山都大輝
山都大輝
無理しようとすんなよ?
山都大輝
みかん
山都大輝
代わりじゃ無い!
山都大輝
みかん
山都大輝
みかん
山都大輝
大輝はそれとなく 部屋の中を見回す
山都大輝
そこには黒い毛と白い毛 それから茶色の毛が落ちていた
山都大輝
大輝はそれを優しく拾う
山都大輝
みかん
山都大輝
みかん
山都大輝
山都大輝
ありえねーんだけどさ
みかん
山都大輝
山都大輝
みかん
山都大輝
みかん
みかんの視界が 大輝の手に握られた 黒い毛と白い毛を捉えた
みかん
山都大輝
明らかに変だ
山都大輝
山都大輝
みたいな口調で喋るし
みかん
山都大輝
みかん
みんなが来てたんだ
山都大輝
みかん
みんなの事を
見守ってたんだって
山都大輝
山都大輝
そう言ってんだよ
山都大輝
山都大輝
大輝は涙を流しながら 写真を優しく撫でる
みかん
山都大輝
みかん
最高だから
みかん
言ってた
山都大輝
山都大輝
バカにしやがってよ!
山都大輝
みかん
山都大輝
相変わらず元気で
いてくれてるんなら
山都大輝
山都小夏
騒いでるの?
大輝とみかんが話をしていると そこに小夏がやって来た
山都大輝
起こしたかな?
みかん
山都小夏
目が覚めちゃってさ
山都小夏
起きたりしないんだけど
山都小春
山都小夏
山都大輝
山都大輝
熟睡してるだろ?
山都小春
誰かに起こされたような
気がしたんだよねな
山都大輝
山都夏輝
山都大輝
山都夏輝
山都夏輝
なんか、クロに
起こされたような
山都大輝
大輝はクロの写真を手にする
山都大輝
山都大輝
大輝は写真を見つめながら 微笑む
山都小春
目が覚めちゃったなぁ
山都小春
山都小夏
山都大輝
みかん
山都大輝
みかん
もっと聞きたい
山都大輝
みかん
好きだったって話
山都大輝
山都夏輝
聞きたいって話?
みかん
山都小夏
何て言ってるの?
山都大輝
俺と小夏の出会いについて
色々聞きたいんだってさ
山都小夏
小夏は恥ずかしそうに 頬を桜色に染める
山都小春
山都小春
山都夏輝
ちゃんとは聞いた事
なかったかもな
山都大輝
山都大輝
山都小夏
山都小夏
夜更かししよっか♫
みかん
山都小春
それから皆は思い出話に 花を咲かせていた
山都小春
山都小春
何それwww
山都小春
ラブリー米って(笑)
山都小春
山都小夏
山都小春
どこに売ってあるの?
山都大輝
山都小春
山都大輝
ひと粒ひと粒を手作業で
ハート型に変形させたんだ
山都夏輝
山都小春
山都夏輝
それはキツいなぁ
山都大輝
山都小夏
山都小夏
山都小夏
小夏はみかんを抱きしめる
みかん
山都大輝
離してあげなさい
山都大輝
山都小春
そんな理由で
追い出した事あるの?
山都大輝
だったんだよな
山都夏輝
20代だろ?父さん
山都小春
山都小夏
みかん
みかん
山都夏輝
ラブリー米は
確かに笑うな
山都大輝
山都小夏
山都小夏
小夏はみかんを抱きしめる
みかん
山都大輝
離してあげなさい
山都大輝
山都小春
パパとママってさ
山都小春
山都大輝
山都小春
山都小春
見た事ないからさ
山都小夏
山都大輝
一回だけ激しく
言い合った事あったな
山都小夏
山都大輝
癲癇発症した時に!
山都小夏
山都小夏
山都小春
山都夏輝
させるさせないで
言い合ったんだよな?
山都大輝
話した時あったっけ?
山都夏輝
山都大輝
みかん
みかん
殺すって事だよね?
山都大輝
かなり重症化しててな
山都大輝
山都大輝
薬物で痛みを和らげる
ってヤツだから
山都大輝
もたないって言われたんだ
山都小夏
ハルちゃんはかなり
苦しむ事になるからって
山都大輝
安楽死を提案されたんだ
山都小春
安楽死を進めるなんて
山都小夏
癲癇の手術中に
山都小夏
亡くなっちゃった事が
あるらしいの
山都小春
山都大輝
喧嘩しちゃったんだよ
山都小夏
言う大輝と
山都小夏
強制された訳でもないのに
山都小夏
言う私とで──
山都小夏
喧嘩しちゃったの
山都小春
気持ちも分かるから
山都小春
山都大輝
間違ってるとか
山都大輝
なかったのに
山都大輝
主張ばかりして
山都大輝
否定したせいで
山都大輝
飛び出しちゃってさ
山都小春
しちゃったの!?
山都小夏
山都小夏
迎えに来て
くれたんだけどね
山都夏輝
聞いてたけど
山都夏輝
レベルだったなんてな
山都小春
そんな喧嘩するんだね
みかん
意外だね!
山都大輝
家出した事あったよな
みかん
山都夏輝
山都小春
山都小春
山都夏輝
山都大輝
猫の言葉が理解できる事は
山都大輝
言ってあったんだ
山都小春
山都大輝
理解できるんだ!」
山都大輝
山都大輝
山都小春
山都小春
居るから
山都小春
いるんだってなるけど
山都小春
理解できる人が
誰も居なかったら
山都小春
思われちゃうもんね
山都大輝
山都大輝
周りから除け者に
されるの避けたかったから
山都大輝
って言ってたんだけど
山都大輝
破った事があったんだよ
山都小春
約束破ったの?
山都夏輝
山都小夏
山都夏輝
それは──
山都小春
小春は茶化すように 夏輝の横腹を突っつく
山都夏輝
山都小春
理由になるの?
山都夏輝
飼い猫が餌を食べないって
悩んでたんだよ
山都夏輝
つい言っちゃったんだよ
山都夏輝
理解できるって
山都小春
まどか先生の事
めっちゃ好きじゃん
山都夏輝
山都大輝
毛頭なかったんだけどな
山都大輝
里帰りしてた事もあって
山都大輝
言い合いになってな
山都小春
山都小春
されなくてよかったね
山都小夏
まどか先生から
怒られたんだったよね
山都小春
みかん
怒られちゃったの?
山都大輝
見つけてくれたんだけど
山都大輝
山都大輝
理解できるのが本当
山都大輝
まずかったんだな
山都大輝
誘拐されてたかも
しれないのに
山都大輝
山都大輝
山都小春
山都小春
立場でも同じ事言うかも
山都小春
そこまでまどか先生の事が
好きだったなんてね♫
山都夏輝
馬鹿にしやがって!
夏輝は小夏の体をくすぐる
山都小春
ごめんってwww
みかん
山都小夏
明るくなってるじゃん
山都大輝
大輝が窓から外を確認すると 既に夜が白々と開けようとしていた
山都小春
喋ってたの!?
山都夏輝
だったなぁ
みかん
時間が経つのが
早く感じるよね♫
山都大輝
大輝はみかんのの頭を優しく撫でる
山都小夏
急に眠くやって来ちゃった
山都小春
山都小春
山都大輝
山都夏輝
眠くなかったのに
山都大輝
山都大輝
山都夏輝
山都小春
山都小夏
山都小夏
みんなで寝ようよ
山都小春
ママ!ナイスアイデア!
山都小夏
山都大輝
何年ぶりだろうな
山都夏輝
以来じゃ無いかな
山都小春
山都大輝
布団準備するか
山都小夏
皆はリビングのソファや テーブルを協力してどかし 空いたスペースに布団を人数分敷く
山都小夏
山都大輝
山都小夏
山都夏輝
夜更かしして
好きな人言い合うヤツだな
山都大輝
そーゆー感じだな
山都小春
行った事ないんですけど
修学旅行の話題で盛り上がる中 経験の無い小春はひとりいじけている
山都小夏
修学旅行行けるって♫
山都小春
置いてけぼり・・
山都小春
みかんだけ・・・
小春はみかんを抱き寄せる
山都夏輝
山都大輝
旅行でも行くか!
山都小春
大輝の一言に 小春は満面の笑みを浮かべる
山都夏輝
山都大輝
小さい時に行ったっきり
行ってねーからな
山都小春
山都大輝
みかんも一緒な?
みかん
山都大輝
家族なんだから!
山都大輝
留守番は嫌だろ?
みかん
山都大輝
山都小春
みかん
(やったぁー!)
山都小夏
山都大輝
皆はリビングに敷かれた布団で 夕方まで深い眠りについた
クロ
そんな皆を暖かな眼差しで 見つめるクロ
ハル
クロ
どうかしたか?
ハル
じゃねーよ
ハル
起こして回ってた癖によ
クロ
さっぱり分からないな
ルプ
粋な計らいをするで
ございまするな♫
クロ
気持ちばかりの選別だ
クロ
共有できれば
クロ
などと口にしないだろう
ハル
だったか!
クロ
心の片隅にあった
疎外感が理由だろうからな
クロ
感じる必要はないと
クロ
ルプ
大丈夫でございまするよ
クロ
ハル
ハル
クロ
クロ、ハル、ルプは 美しい花畑の奥へと歩みを進める
クロ、ハル、ルプの想いは みかんへと受け継がれた
この想いは家族の幸せな未来へと つながる架け橋になるだろう
山都大輝
山都小春
山都小夏
出来てないー(T . T)
山都大輝
なんか買ってくるよ
山都小夏
ありがとう大輝
山都夏輝
山都小春
買って来てよ♫
チョコミントのやつ♫
山都大輝
みかん
山都夏輝
山都大輝
山都小夏
山都夏輝
行って来ます
山都小春
ちょっと頼りない父
お茶目な母親
心優しい息子
やんちゃな娘
そして元気な猫
どこにでも居る普通の家庭 しかし、その絆は強く逞しい
今後も皆が手を取り合い 困難を共に乗り越えて
その強い絆はさらに 強くなっていくだろう
END







