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小学校3年生の夏休み──

由貴

今日はいつもと違う道で行ってみようよ!」

虹雨(コウ)

えー、大丈夫か? 雲、変な色してるぞ?

由貴

雨なんて平気平気! 
冒険しよ!

天狗山の裏道に入っていく2人。

しかし──

ザァアアアアアアア!!

由貴

わ、やばっ……足滑──

虹雨(コウ)

由貴っ!? 

虹雨(コウ)

あ、ちょ、お前──

虹雨(コウ)

ぐあっ!

崖下に転げ落ちる2人

由貴

足首……痛い……

虹雨(コウ)

俺も……右手が動かねぇ……

びしょ濡れになりながら、 這うように前進

由貴

あそこ、祠がある……
屋根……ある……

2人、祠の中で横たわる

由貴

ごめんね、僕が誘ったから……

虹雨(コウ)

違う、俺が“雨くらい平気”って言ったんだよ

由貴

だよね、コウが全部悪い!

虹雨(コウ)

はぁ!? 
そもそもこの道に決めたの、お前やろ!

由貴

うるさい! 
怪我しても口は達者か!

虹雨は何か頭に温かいものを感じる

虹雨(コウ)

うわ、なにこれ……

虹雨(コウ)

あ、血!? 俺、頭切れてる!?

由貴

いつもは別の意味でキレてるくせに!! 

虹雨(コウ)

もう喋らないで、これ以上動かないで!

ハンカチで止血する由貴

虹雨(コウ)

お前も鼻血出てんぞ……

由貴

あっ……ホントだ……

そのまま目眩がして横になる

2人、祠の中で寄り添いながら、 ただ静かに雨を聞く

虹雨(コウ)

なんか、変な石像あるぞ。鼻デカい

由貴

天狗様じゃないか?

虹雨(コウ)

ばーちゃん言ってたな。

虹雨(コウ)

この山には、街の幽霊をまとめてる天狗様がいるって

由貴

幽霊をまとめるって、それ天狗の仕事じゃなくない?

静かに目を閉じる2人

由貴

……コウが喋らなくなったら……
この世、つまんなくなるな……

由貴

祠の石像を見る由貴

由貴

ねぇ、天狗様……助けてよ。

由貴

この街を守ってるんでしょ……? 僕たちも……助けてよ……

祈るように、命乞いをする由貴

???

お前か。さっきから呼んでるのは

声のする方を見る由貴。

由貴

え、天狗様!? 石像が……喋ってる!?

天狗様

命は助けてやる。

天狗様

ただし……その代わり、

天狗様

“力”を背負え

由貴の視界がぐにゃりと揺れる。 何かが流れ込むような感覚

由貴

ああ、そうだった。
そんなことを、言われたんだっけ……

由貴

助かればそれでよかった。
僕だけじゃなくて、コウも。
それだけだったのに……

天狗の力が、2人の体に宿っていく

由貴

やっぱり、あの時からだったんだよな

虹雨(コウ)

あの時……って、天狗山のことか

由貴

うん。崖から落ちて、祠の中で……『助けて』って願った時。

由貴

あれ、ちゃんと届いてたんだよね。天狗様に

虹雨(コウ)

ああ……助けられた。
でも、代わりに──

虹雨(コウ)

変わっちまった

由貴

僕は、幽霊が見えるようになった。

由貴

それだけじゃない……来るんだよ。どこにいても、幽霊が

虹雨(コウ)

お前の体は、幽霊を引き寄せる灯みたいなもんだ

由貴

そんな体、望んでないよ

由貴

俺もだよ。こっちはこっちで、“祓え”って言われたようなもんだ。幽霊が見える上に、祓う力まで宿った

由貴

見えるだけじゃなくて、追い払えるんだよな。

虹雨(コウ)

多分、俺の声に“力”が乗るんだ。
怒鳴れば消える奴もいる。

由貴

僕は見えるだけ。いつも、気づいたら幽霊に囲まれてる。

由貴

でも、コウがいれば……怖くても、なんとかなるって思えるんだ

虹雨(コウ)

お前が引き寄せて、俺が祓う……
そういうセットになってるのかもな、俺たち

由貴

セットって……おまけみたいに言うな!

虹雨(コウ)

俺はまぁ今となっちゃ重宝してるけどさ。お前はどうなんだ?

由貴

正直? 
実に無駄。東京で一人の時とかもう、無駄無駄の極み

虹雨(コウ)

天狗様に聞かれたら祟られるぞ……

由貴

だってさ、見えるだけ。惹きつけるだけ。驚くだけ。終わり。
お前みたいに祓えりゃ違ったのにな〜

虹雨(コウ)

だから言ったんだよ、あのとき。“一緒にいよう”って。
なのにお前だけサクッと東京行っちまって

由貴

それはコウがアホだから大学落ちて、実家の居酒屋継ぐしかなかったからでしょ

虹雨(コウ)

アホじゃねぇ! たまたまだよ、たまたま!」

由貴

だったら、“落ちたら一緒に東京行かない”って言っとけよ……

虹雨(コウ)

言えるか! お前が俺のために進路変えるわけないだろ!

由貴

一緒にアホにはなりたくなかったもので

虹雨(コウ)

はい出ました、毒舌ぅ〜

虹雨(コウ)

現実主義です

天狗様に命と力をもらった二人。

だが“進学”という現実の分岐点で、能力はバラバラに分断された。

幽霊が見えるだけの由貴。 祓えるが活かしきれないコウ。

そして30を越えた今、 ようやく――再会を果たす。

由貴

これからはさ、上手くこの能力使って生活してみようよ

虹雨(コウ)

おう。……上手くいくかは知らんけど、腐らせるのはもったいないしな

由貴

では、再会に──乾杯

虹雨(コウ)

って、ちょっ……お前いつの間にビール頼んでんだよ?!

虹雨(コウ)

いや〜、雨降ってたし、ちょっと一杯くらいね……くはぁ〜! 久々のビール、沁みるぅ!!

虹雨(コウ)

このやろ、調子乗りやがって……

また始まった。

けれど、目が合った瞬間、2人はふっと笑ってしまう。

そう。こうして喧嘩して笑える日が、ようやく戻ってきた。

虹雨(コウ)

さて……まずはお前の肩の除霊から始めるか

由貴

うん、マジで。さっきからずっと重くて……

虹雨(コウ)

今までどうしてたんだよ。てか、平気で杏仁豆腐にビールとかいくし。

虹雨(コウ)

まったく……お前は俺がいないとダメだな

由貴

お前もな

由貴の肩には、真っ赤なヒールを履いた“脚だけ”の女性の幽霊が座っていた。

妖艶さと不気味さが同居する、 得体の知れない霊。

由貴

ていうかさ、目の前の湯切りしてるバイト幽霊の方がうるさくて気になるんだけど

虹雨(コウ)

ああ、自殺した見習いの子な。延々ラーメン湯切りしてるな。……マジで成仏させてやりてぇわ

由貴

なぁ、コウ。どっちが“撮れ高”あると思う?

虹雨(コウ)

それは……お前のリアクション次第だな

由貴

また僕の間抜けな顔を撮る気か……

虹雨(コウ)

任せろ、撮影はベストアングルで

由貴

……ほんっと、最低だなお前

虹雨(コウ)

でも、相棒だろ?

由貴

うん。相棒だな

続く

最強で最高な2人

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