「音楽が好きだ」
そう言っただけだった。 なのに。
オーダム
そうか。
オーダム
君は、音楽が好きなんだね。
おと
は、はい、そうです。
おと
私、何か変な事言いましたか?
オーダム
安心して。君は良い子だね。
オーダム
そんな良い子の君に、お願いをしよう。
おと
は、はあ...。なんでしょう?
とある人を、 殺してくれるかな?
おと
...え?
おと
人を...こ、ころす?
オーダム
そうだよ。
オーダム
僕は何か、変な事を言ったかな?
おと
(いや、めっちゃ変な事...)
おと
(というか、怖い事言ってるよ...)
このかなり不思議な人と私は、 ついさっき出会ったばかりである。
ー通学路ー
おと
♪♪♪...
おと
うん、やっぱりこの曲いい!
おと
繊細なメロディに、綺麗な歌声
おと
「Dum」さん、会ってみたいなぁ...
最近話題になっている、 謎の歌手「Dum」。
顔出しはしておらず、 判明している情報は少ない。
男である
声がとても綺麗
日本在住
...ということだけだ。 どう考えても、少なすぎる。
おと
歌声はわかるから...
おと
もしどこかで会えたら、
声をかけてサインもらいたいな!
声をかけてサインもらいたいな!
謎の男性
君。
おと
どんなサインくれるのかな...
あんなの?こんなの...?
あんなの?こんなの...?
謎の男性
...君。君!
おと
もしかしたら歌ってくれたり
しちゃうかも!うわぁ〜っっ!
しちゃうかも!うわぁ〜っっ!
謎の男性
そこの、君!
おと
へっ?!?!
ブオオン....
私が止まった位置のすぐ前を、 バイクが高速で通過していった。
謎の男性
危なかったね。怪我はない?
おと
あ、は、はい。
おと
(助けて、くれた...?)
おと
あ、あの、ありがとうございます。
謎の男性
なに、礼には及ばないよ。
君が無事でなによりだ。
君が無事でなによりだ。
おと
(すごくいい人...!)
おと
(赤の他人をたすけてくれて)
おと
(気遣いもできるなんて!)
謎の男性
...でも、
謎の男性
恩返しの代わりに、
少しだけ...
少しだけ...
謎の男性
暇な僕に、付き合ってくれないかな?
これが、始まりだった。