私は自宅近くの飲食店で、友人と有り余った休日の時間を使い ダラダラと世間話に花を咲かせていた
私の友人、仮に速水と呼ぶが、 速水は隣の窓の外を眺めながら ふと思い出したかのように私に尋ねた
速水
ねぇ
速水
藤堂って妹っていたっけ?
ここで言う藤堂さんと言うのは速水の友人のことである
私と藤堂さんは学校では部活もクラスも違う
速水経由で少し話したことがある程度で 仲がいいというわけでもない
速水もそれを知っているはずなので 私にその事について尋ねるのは少し奇妙に思えた
私
いなかったはずだけど。
一人っ子だって言ってなかった?
一人っ子だって言ってなかった?
速水
だよね?
私
急にどうした?
私
聞くなら私じゃなくて藤堂さんに聞いた方が良くない?
速水
ん〜?何でもないよ
私
いや、それって何でもなくないときの常套句だよ?
私
何かあったの?
速水
うーん
速水
まぁ、あんたに言って困るような話でもないし良いかな
私
なになに?
私
地味に気になる
速水
いやいや、本当になんでもないって
速水
ただ昨日さ
速水
藤堂から電話かかってきて
藤堂
もしもし?
藤堂
起きてるか?
速水
どうかした?
藤堂
今日、父さんと母さん家でてるから
話し相手いなくて
話し相手いなくて
速水
それでわざわざ電話かけてきたの?
藤堂
お前の声がどうしても聞きたくて
速水
嬉しくないわw
そんな意味のない雑談を続けていると 藤堂の声に混じってボソボソとした声が聞こえてきてね
最初は気にならなかったけれど だんだん大きくなっていくその声は 雰囲気的には小学生くらいの女の子の声だった
藤堂がそれに気づかず話を続けているのは どうにも気味が悪かったし
それ以上にその少女の声が不気味で仕方がなかった
速水
ごめん
速水
明日、用事があって朝早いから
もう寝ないと
もう寝ないと
藤堂
あ、そうなんだ
長いこと付き合わせてごめんな
長いこと付き合わせてごめんな
藤堂
それじゃあ、おやすみ〜
速水
うん、おやすみ
適当に理由つけて、一旦そこで電話を切ったんだけど そしたらすぐに藤堂がかけ直してきてね
スルーするのはなんか悪いから 渋々電話に出たら
少女
ギャはハハハはははは!!!あはは!!きゃははっははは!!!
ギャハハははハハハ!!!!あっははっっっは!!ギャああぁ゛
ギャハハははハハハ!!!!あっははっっっは!!ギャああぁ゛
さっきの女の子の悲鳴じみた笑い声が聞こえてきて 思わず電話切っちゃったんだよね
速水
ということがあって
私
何が、何でもないだよ
速水
そんな電話かかってきたあとに藤堂に会うのは怖いから
速水
なんとなくあんたに聞いてみた
私
なるほどね
私
でもそんなことがあった時点で
その女の子は妹じゃないよ
その女の子は妹じゃないよ
速水
それもそうなんだけど
速水
ただ今日の朝、小学生くらいの女の子が私の家に来てさ
速水
インターフォン越しに
藤堂の妹です。開けてください。
って言ってきて
藤堂の妹です。開けてください。
って言ってきて
私
やばくないか?それ
速水
私もそう思って、居留守使った
速水
その子は、10分間くらい同じ言葉をずっと繰り返し続けて
やっと諦めて帰ったの
やっと諦めて帰ったの
速水
妹だって本人が言ってるし
実際妹だったら面白くない?
実際妹だったら面白くない?
私
いや、面白くないよ
私
めっちゃ怖い
速水
そうかな?慣れたら可愛いもんだよ
私
そりゃ10分もその子の声聞いてたら
慣れてもくるだろうけど....
慣れてもくるだろうけど....
速水
なんか、ごめんね
私
え?
速水
さっき気付いたんだけど、窓の外のからこっち見てるんだよ
速水
つい目があっちゃったから、
店内から出たくなくて、話をついつい引き伸ばしちゃった
店内から出たくなくて、話をついつい引き伸ばしちゃった
彼女は涼しげに微笑みながら、 窓からそっと視線をそらした