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じいちゃんのタイムマシーン

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じいちゃんのタイムマシーン

30 - 第三十話:最低なキス

♥

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2022年05月21日

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気がついたら部屋にいた

どうやって帰ってきたか思い出せない

覚えているのは

必死に私を引き留める恭也さんの姿

恭也

一緒に行こう

恭也

三年も離れるなんて耐えられない

もう気持ちはないと何度も伝えたのに

嘘だと言って信じてくれない

恭也

君のことを

恭也

心から愛してるんだ

その間にも涙が止まらなくて

そんな私に

恭也さんは何度も同じ言葉を繰り返した

恭也

愛してる

恭也

愛紗……

恭也

僕は君を……

愛紗

もう無理……

恭也

だったら何で泣くの?

恭也

僕のことが好きだからじゃないの?

確かにずっと好きだった

あの日のことがあって

恭也さんを拒絶してしまったけれど

楽しかった思い出は消えない

だから涙が溢れたのかもしれない

でも確信した

あの日のことがなくても

私はきっと別れる運命だったんだ

あんな雑な言い方で結婚しようなんて言われても

嬉しいとは思えない

愛紗

好きだったよ

恭也

だったら!

愛紗

わからない?

恭也

え?

愛紗

私は"好きだった"って言ったの

愛紗

今はもう好きじゃない

突然、恭也さんが立ち上がり私の腕を掴んだ

愛紗

痛っ……

回りに普通に人がいるのに

強引に自分の元に引き寄せ

愛紗

やっ……

唇を……

愛紗

んんっ!?

凄い力だった

逃れようとしても

掴まれた腕を簡単に離してはもらえず

恭也

僕は諦めない……

回りのお客さんも驚いた様子でこっちを見ていた

店員

あ、あの……

店員

お客様……

見かねた店員が声をかけてきて

恭也さんの手か怯んだ隙に逃げるようにお店を出た

恭也

愛紗!!

そこからの記憶はなく

どうやって帰ってきた思い出せなかった

私を繋ぎ止めるための雑なプロポーズ

一方的に愛情をぶつける身勝手で最低なキス

しかもあんな

不特定多数の人がいるカフェの中で

ギュィィィィィィン!!

明日夢

あー!

明日夢

痒い!!

突然の機械音と共にあの子が現れる

最初は驚いてばかりいたけど

もうすっかりこの音にも慣れていた

必死に涙を拭って平静を装おうとしたけど

顔を見たら余計に涙が溢れてしまった

明日夢

母ちゃん?

愛紗

明日夢……

安心する優しい声

ホッとしたのもあって

いつも以上に泣いてしまった

伝えたいことがうまく言葉にできず

涙となって溢れ出てくる

そんな私の頭を撫でて

明日夢

大丈夫?

その言葉が嬉しくてたまらなかった

落ち着くまでに時間がかかってしまったけれど

私が話せるようになるまでずっと待っていてくれた

明日夢

もう平気なの?

愛紗

うん……

愛紗

あのね……

愛紗

私……

何があったかを全て話した

別れる決意を伝えるために恭也さんに連絡したこと

直ぐに会いたいと言われてこの前のカフェに行ったこと

何を話しても聞いてはもらえず

何度も引き留められた挙げ句、雑なプロポーズを受けたこと

そしてあの身勝手で最低なキスのことも

明日夢

は!?

明日夢

他のお客さんがいたのにしてきたの!?

愛紗

うん……

耳を疑うその内容に

驚いた様子で私を見ている

愛紗

ねぇ……

愛紗

私、本当に運命の人と出会えるのかな?

愛紗

本当に出会えて……

愛紗

幸せになれるのかな?

不安で押し潰されそうな私の心に

優しい笑顔を向けてくれる

明日夢

俺がここにいるでしょ?

明日夢

それが証拠だよ

愛紗

証拠……

明日夢

だって

明日夢

母ちゃんが幸せにならなかったら

明日夢

俺は生まれてこないもん

明日夢

母ちゃんは絶対に幸せになれるんだよ

明日夢

幸せになって俺が生まれて

愛紗

本当に……

愛紗

乗り越えられると思う?

明日夢

うん

明日夢

だって俺がここにいるんだもん

明日夢

母ちゃんが諦めてしまったら

明日夢

俺は生まれてこないことになるんだ

愛紗

そっか……

明日夢

大好きな母ちゃんに会うために……

明日夢

タイムマシーンで来たんだよ

愛紗

明日夢……

愛紗

ありがとう

とても嬉しい気持ちになった

いつかきっと

幸せになれる時が来る

だから前を向かなければ

幸せな未来のために

じいちゃんのタイムマシーン

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