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【 繁華街 路地裏 】

荒くれ者

な、なあ!

荒くれ者

もっと安く売ってくれよ、長い仲だろう!?

荒くれ者

今回はこれっぽっちしか集められなかったんだよ!

少女

額の低い紙幣を十数枚掲げて、血走った目をした大男が私に懇願する。

少女

まあいいわ、足りない分は私が立て替えておいてあげる

皺だらけの紙幣の確認し、財布にしまう。

それと同時に茶封筒を鞄から取り出すと…

荒くれ者

…早く、「ダイヤ」を…!

待ちきれない荒くれ者が震える手を差し出してきた。

少女

…はい。

少女

次は約束の金額を守ってね

荒くれ者

へへへ…

釘を刺す言葉を聞いているのかいないのか、にやつきながら表通りの人混みへと消えていった。

少女

…融通を効かせてやったのにお礼もないの?

少女

これだから「ダイ中」は視野が狭くて困る

…「ダイヤ」。

それはこの街に蔓延る違法薬物の俗称。

透き通った結晶体を成す為にそう呼ばれている。

私は上からの命でダイヤを捌く売人として、この街に溶け込んでいる。

チンピラA

おい!おい姉ちゃん!

チンピラA

姉ちゃんはいくらだよ?

酒臭い息をした若者が、私を娼婦と勘違いしているのか後ろから私の首に腕を絡めてきた。

チンピラB

アニキ、酔っ払いすぎですよ

チンピラB

金欠って言ってたじゃないで…

兄貴分を止めようと他の若者が、ふらつきながらも私の正面に回ってきた。

チンピラB

…アニキ、その方ウリじゃないです!!

チンピラB

「ホワイト」です!
胸のバッヂ見てください!

チンピラA

…あ゛??

チンピラA

チンピラA

…そうか、「ホワイト」の眼帯ちゃんかあ

この街の組織の人間は、組織のエンブレムがあしらわれた胸のバッヂの色でランク付けされている。

一般人は無印、末端構成員のブロンズ、兄貴分のシルバー、それらを纏めるゴールド。

そして幹部級のプラチナと…

ボスのみに許されたブラック、 そしてその側近、又はボス直々の命令で動く私兵のホワイト。

若干18歳にしてホワイトバッヂを持った珍しさと

私の右目を覆う眼帯が悪目立ちする事から、「ホワイトの眼帯」などと呼ばれることも珍しくない。

チンピラA

なあなあ、前から気になってたんだけどさあ?

相当悪酔いしているのか、まだしつこく絡んでくる。

チンピラA

…なんでお嬢ちゃんなんかがホワイトなの?

チンピラA

ゴールドやプラチナに「女の武器」でも使ったのぉ?

チンピラB

アニキ!!!

弟分であるブロンズの顔色が、一瞬のうちに青くなった。

それでも兄貴分であるシルバーの暴言は止まらない。

チンピラA

なあなあ、せっかくだから教えてくれよ!

チンピラA

顔に欠損があった方が興奮するっていう変態でも幹部にいるのか!?

チンピラA

一体誰のをくわ…

聞くに耐えない下世話な話ばかり出てくる男の口は

私が腰から抜いた拳銃で塞がった。

チンピラA

お、ごお…!!

少女

右目が見えない「欠損」だとしても

少女

この距離だったら外さないでしょうね?

見せつけるように撃鉄に親指をゆっくりと掛ける。

チンピラB

も、も、申し訳ありません!

チンピラB

アニキを許してください!!

チンピラB

普段は弟分思いのいいアニキなんです!!

許しを乞おうともう片割れの男は、タバコの吸い殻や吐き捨てられた痰の汚れも構わず路地裏に土下座した。

少女

…頭を起こしなさい

少女

酒は人の本性を丸裸にする、普段からそんな事をこいつは考えていたんでしょう

少女

あなたがそこまでするほどの価値、こいつにあるとも思えない

私の言葉も聞かず、ぶるぶると震える頭をコンクリートに擦り付け続ける。

少女

…わかった。

少女

そこまですると言うのなら…

少女

貴方、そう貴方の事よ

さっきの威厳は何処へやら、もはや涙と鼻水でぐしょぐしょになっている奴の胸ぐらを掴み、口内にさらにぐいぐい銃を押しつけた。

少女

貴方、男娼街に行きなさい

少女

そこなら貴方でも需要がある

少女

幹部が客として来る時もあるから

少女

「男の武器」を振るったら、
のし上がれるかもね

チンピラA

あ、あぐ、あぐ!!!

私の決定に異議があるのか、目を見開いて首を振る。

さらに拳銃をぐい、と押しつけたら諦めたように大人しくなった。

チンピラB

アニキ…!

首を上げて、勘弁してやって欲しいと目で訴えかける弟分。

少女

…自制心、忠誠心のある人間は出世する

少女

精進しなさい

そう言いつつ、不敬を働いた男を連れてその場を後にした。

【 男娼街 】 【 とある店の店頭 】

店主

ミス・パッチ、ピチピチの新しい子をありがとうねえ

店主

早速新人教育を古株の子たちに任せようかねえ

風俗店の店主は、これで商売にテコ入れができるとばかりに脂ぎった顔に笑みを浮かべた。

彼女にとっては、店のキャストが借金のかたに売られてこようが、組織に反抗的な態度をとった見せしめとして連れられてこようが関係のない事。

常連客が喜んでくれそうな風貌、技量であればそれで良い、と言わんばかりの態度を見せている。

少女

…いえ、これも仕事ですから

少女

では私はこれで

店主

あ、そうそう、ミス・パッチ。

店主

例の「バイト」の希望者が連絡先を置いていったよ

店主

いよいよ首が回らなくなったんだろうねえ、気の毒なこった

口ばかりの心配の弁を述べて、連絡先が書かれた紙を差し出した。

少女

…ありがとう

少女

追って連絡する

店主

はいはーい、ご苦労様

店主

店主

さあ、私も改めてピチピチボーイに挨拶しに行かなくっちゃ!

【バイト希望者とのLIME】

少女

少女

こんにちは

少女

今回は応募ありがとうございます

 

 

にたすれなま

 

なにすればいい

 

金をくれ

 

はやぬ

 

はやく

…ダイヤ中毒者特有の手の震えがある様だ、相手の誤字がひどい。

少女

貴方の性別、年齢、家族構成を教えてください

 

おとこ

 

30

 

ばばあとふたりくらき

 

2人ぐらし

少女

「ばばあ」とは誰でしょうか?

 

ははおや

 

てめえ説教するつもりか

少女

これまでのダイヤ代の工面はどうしていたのですか?

 

家のカネだよ

 

なんでそんなかぉ

 

こと

少女

これまでの生活から、貴方に適正のあるバイトを紹介する為です

 

なんでもいい

 

なんでもやる

 

かね

 

かねをくれ!!

少女

ええ、大丈夫です

少女

バイトをすればいくらでも、ダイヤを買えるお金が手に入ります

少女

では〇〇日の22時、組織のビル玄関前までお願いします

某日22時 組織本部 玄関前

警備

おい、何なんだよお前はよ!

警備

ずっと玄関の方チラチラ見やがって、何の用だ!

警備

カチコミってんなら相手になんぞ!

 

い、い、いや

 

違、俺、売人に聞いて…

警備

あ?売人?
ダイヤのか?

警備

オドオド気持ち悪い奴だな…

警備

服もシミだらけで臭えし

警備

ダイ中の浮浪者がうろつくんじゃねえよ、帰れ!

少女

少女

待って、その人はバイト希望者

警備

あ、お疲れ様です姉貴!

少女

遅れて申し訳ありません、私が本日バイトの紹介をさせていただきます

 

 

ふ、ふひひ

 

なんだよ、こんなガキの言う事を聞けってか?

男は先ほどまで縮こまっていたのが嘘の様に、尊大な態度を取り始めた。

女子供、老人にしか粋がることの出来ないなど本当にどうしようも無い男だ。

警備

おい!姉貴に向かって…!

少女

いいんです、組織に居ないと力関係など分からないのですから

少女

私のことは、ボスの秘書の様なものだとお思いください

少女

それか、私の言うことを聞かないとダイヤが手に入らない、と言った方が効きますでしょうか?

 

はいはい、これも金の為金の為

 

どこまでも着いて行きますよっと

かしずく警備の男に見送られ、2人はビルへと入っていった。

建物内 ボスの部屋

ボス

「…では首尾良く頼む」

ボス

「終わり次第また連絡する」

ボス

…ありがとう、通話をオフにしてくれ

秘書

かしこまりました

…コンコン。

ボス

時間通りに来た様だな

ボス

君、私の服を整えてくれ。

ボス

仕事の話の時は席を外す様に

秘書

はい。

秘書

秘書

では私は失礼します。

秘書

どうぞお入りください

私の襟元を整えた後出ていった秘書と入れ替わりに、私兵の1人と小汚い男の2人組が入ってきた。

少女

ボス、こちらの方がバイト希望者です

 

男は私に一瞥をくれると、格下を見るようないやらしい目つきになった。

ボス

…君はどうも、弱者が好きなようだね

そう声をかけると、一瞬意味が分からず訝しげな顔をしていたが

その意味を汲み取るや否や、冷や汗をかきながらしどろもどろ言い訳を始めた、

 

い、いやそう言うわけでは無くて

 

た、ただどうされたのかなあ、と…

ボス

不慮の事故だよ

ボス

四肢のない人間に従う人間がいる事が、そんなに不思議かね?

男は、もうこれ以上墓穴を掘るまいと黙り込んでしまった。

ボス

まあいい、勇気を出してバイトに来てくれたのだし話を進めさせてもらうよ

ボス

君はこれから工場に行ってもらう

ボス

…工場の場所はトップシークレット、だから道中の車内は目隠しをさせていただくよ?

 

…工場って、ダイヤの?

ボス

ご想像にお任せするよ

ボス

さあ、君は私の車椅子の準備と運転を頼む

ボス

…到着したよ

ボス

さあ、彼の目隠しを外してあげなさい

 

 

…うわあ…

男は工場の規模に驚いたのか、場違いな歓声を溢した。

私たち3人以外にも、工員達がこちらを見て作業の手を止め、集まってきた。

工員達

お疲れ様です、ボス!

ボス

頑張っているようだね、結構結構

ボス

…君、ダイヤの原料はなんだか知っているかい?

 

え、俺っすか?

 

 

知らないです、草とかですか?

ボス

確かに植物由来の薬物もあるが、ダイヤはそうじゃない

ボス

ダイヤは基本、他の薬の成分を集めて作られる

ボス

薬を溶かして、薬効成分を抽出して…

ボス

薬の効果を高めるために、車のバッテリー液やら洗剤を使う工場もあるらしいな

 

えっ?

 

そんなもの俺ら普段から飲んでるんですか?

 

…なんてもの飲ませてくれるんだ!

状況が分かってないのか自制が効かないのか、男は電動車椅子に乗るボスに掴みかかろうとした。

それを工員達に組み伏せられる。

 

おい!離せ!

 

高い金払ったのにゴミなんて飲ませやがって!!

ボス

…うちの薬はちょっと違うよ

その言葉を聞き、安堵の表情を浮かべた。

ボス

政府の取り締まりが厳しくなってしまってね、材料の薬が手に入れづらくなったんだ

ボス

だから…

ボス

原料として、ダイヤ中毒者そのものを使うようにしたのだよ

 

 

は?

ボス

ダイヤの成分は体に多く蓄積していく

ボス

金策に困り果てるほどダイヤ漬けになった君の体からは

ボス

多くの成分が抽出できるだろうね?

ボス

今から君はミキサーにかけられる

ボス

そこで血と臓物、骨と大まかに分けられて

ボス

血と臓物は煮詰めていって、骨は高温で焼いて砕く

ボス

それぞれから薬効成分を取り出したら元々の薬と混ぜて製剤、工員達の仕事だ

ボス

さあ、スイッチを。

ヴィィィィン!!

男の背後にあるミキサーのスイッチが入れられ、その入り口が開かれる。

両脇を抱えられて、唸りをあげる機械に運ばれてゆく。

 

う、嘘つき!嘘つき!!

 

金くれるんじゃなかったのかよ!!

 

ダイヤが買えるほどの金くれるって言ったじゃねえかクソアマ!

少女

ええ、確かに言いましたよ?

少女

…でもあなたがダイヤを買える、とは一言も言っていません

少女

お金は貴方が日常的に暴力を振るっていた、というお母様にお渡ししますので

ボス

冥土の土産に話をしよう

ボス

私と、ここにいるホワイトの工員達と私兵について。

ボス

ホワイトの選出基準は至ってシンプル。

ボス

薬物によって己、又は身内が傷つけられた経験があるかどうかだ。

ボス

そこの彼のほおの傷は幼少期父親から、あそこの彼の足は暴漢に襲われた時に失われた。

ボス

…そして彼女の目はかつて交際していた男から潰された。

ボス

私の遭った不慮の事故も、薬物中毒者の危険運転が原因だ

ボス

言うならば君達は「地域猫」のようなものだな

ボス

先細る薬物という供給を金を払い続けて我先に取り合い、自滅していく

ボス

これが組織を運用していかなければいけない、でも薬を無くしたいと言うジレンマを抱えた私の答えだ

ボス

さあ、君の愛するダイヤのために

ボス

尊い礎となりなさい

 

うわああああ!!!

男の悲鳴は、機械の轟音の中へと吸い込まれていった。

Twitterお題より ・手足を失った主人公 ・片目のない少女 ・秘密を抱えている

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