【 繁華街 路地裏 】
荒くれ者
荒くれ者
荒くれ者
少女
額の低い紙幣を十数枚掲げて、血走った目をした大男が私に懇願する。
少女
皺だらけの紙幣の確認し、財布にしまう。
それと同時に茶封筒を鞄から取り出すと…
荒くれ者
待ちきれない荒くれ者が震える手を差し出してきた。
少女
少女
荒くれ者
釘を刺す言葉を聞いているのかいないのか、にやつきながら表通りの人混みへと消えていった。
少女
少女
…「ダイヤ」。
それはこの街に蔓延る違法薬物の俗称。
透き通った結晶体を成す為にそう呼ばれている。
私は上からの命でダイヤを捌く売人として、この街に溶け込んでいる。
チンピラA
チンピラA
酒臭い息をした若者が、私を娼婦と勘違いしているのか後ろから私の首に腕を絡めてきた。
チンピラB
チンピラB
兄貴分を止めようと他の若者が、ふらつきながらも私の正面に回ってきた。
チンピラB
チンピラB
チンピラA
チンピラA
チンピラA
この街の組織の人間は、組織のエンブレムがあしらわれた胸のバッヂの色でランク付けされている。
一般人は無印、末端構成員のブロンズ、兄貴分のシルバー、それらを纏めるゴールド。
そして幹部級のプラチナと…
ボスのみに許されたブラック、 そしてその側近、又はボス直々の命令で動く私兵のホワイト。
若干18歳にしてホワイトバッヂを持った珍しさと
私の右目を覆う眼帯が悪目立ちする事から、「ホワイトの眼帯」などと呼ばれることも珍しくない。
チンピラA
相当悪酔いしているのか、まだしつこく絡んでくる。
チンピラA
チンピラA
チンピラB
弟分であるブロンズの顔色が、一瞬のうちに青くなった。
それでも兄貴分であるシルバーの暴言は止まらない。
チンピラA
チンピラA
チンピラA
聞くに耐えない下世話な話ばかり出てくる男の口は
私が腰から抜いた拳銃で塞がった。
チンピラA
少女
少女
見せつけるように撃鉄に親指をゆっくりと掛ける。
チンピラB
チンピラB
チンピラB
許しを乞おうともう片割れの男は、タバコの吸い殻や吐き捨てられた痰の汚れも構わず路地裏に土下座した。
少女
少女
少女
私の言葉も聞かず、ぶるぶると震える頭をコンクリートに擦り付け続ける。
少女
少女
少女
さっきの威厳は何処へやら、もはや涙と鼻水でぐしょぐしょになっている奴の胸ぐらを掴み、口内にさらにぐいぐい銃を押しつけた。
少女
少女
少女
少女
チンピラA
私の決定に異議があるのか、目を見開いて首を振る。
さらに拳銃をぐい、と押しつけたら諦めたように大人しくなった。
チンピラB
首を上げて、勘弁してやって欲しいと目で訴えかける弟分。
少女
少女
そう言いつつ、不敬を働いた男を連れてその場を後にした。
【 男娼街 】 【 とある店の店頭 】
店主
店主
風俗店の店主は、これで商売にテコ入れができるとばかりに脂ぎった顔に笑みを浮かべた。
彼女にとっては、店のキャストが借金のかたに売られてこようが、組織に反抗的な態度をとった見せしめとして連れられてこようが関係のない事。
常連客が喜んでくれそうな風貌、技量であればそれで良い、と言わんばかりの態度を見せている。
少女
少女
店主
店主
店主
口ばかりの心配の弁を述べて、連絡先が書かれた紙を差し出した。
少女
少女
店主
店主
店主
【バイト希望者とのLIME】
少女
少女
少女
…ダイヤ中毒者特有の手の震えがある様だ、相手の誤字がひどい。
少女
少女
少女
少女
少女
少女
少女
某日22時 組織本部 玄関前
警備
警備
警備
警備
警備
警備
警備
少女
少女
警備
少女
男は先ほどまで縮こまっていたのが嘘の様に、尊大な態度を取り始めた。
女子供、老人にしか粋がることの出来ないなど本当にどうしようも無い男だ。
警備
少女
少女
少女
かしずく警備の男に見送られ、2人はビルへと入っていった。
建物内 ボスの部屋
ボス
ボス
ボス
秘書
…コンコン。
ボス
ボス
ボス
秘書
秘書
秘書
秘書
私の襟元を整えた後出ていった秘書と入れ替わりに、私兵の1人と小汚い男の2人組が入ってきた。
少女
男は私に一瞥をくれると、格下を見るようないやらしい目つきになった。
ボス
そう声をかけると、一瞬意味が分からず訝しげな顔をしていたが
その意味を汲み取るや否や、冷や汗をかきながらしどろもどろ言い訳を始めた、
ボス
ボス
男は、もうこれ以上墓穴を掘るまいと黙り込んでしまった。
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
男は工場の規模に驚いたのか、場違いな歓声を溢した。
私たち3人以外にも、工員達がこちらを見て作業の手を止め、集まってきた。
工員達
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
状況が分かってないのか自制が効かないのか、男は電動車椅子に乗るボスに掴みかかろうとした。
それを工員達に組み伏せられる。
ボス
その言葉を聞き、安堵の表情を浮かべた。
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ヴィィィィン!!
男の背後にあるミキサーのスイッチが入れられ、その入り口が開かれる。
両脇を抱えられて、唸りをあげる機械に運ばれてゆく。
少女
少女
少女
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
ボス
男の悲鳴は、機械の轟音の中へと吸い込まれていった。
Twitterお題より ・手足を失った主人公 ・片目のない少女 ・秘密を抱えている
コメント
6件
世界設定から終わり方まで、綺麗に纏められていてとても面白かったです!
「ダイヤ」を憎みながらも、それを売る事でしか生きていけない。 負の連鎖ですが、「悪」というのは、そういう事情で続くのかも知れませんね。