テラーノベル
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麗太
……スケ……!キョウ…… …どう…!……っ……!
暗闇の中から頭の中へと誰かの声が訴えかけてくる
その声と同時に身体がぐらんぐらんと揺れ始める。地震なんかではない。 直接的に誰かに触れられてる感覚が──
青嶺 キョウスケ
勢いよく身体は目覚めたと対照的に、瞼は重たく脳は働いていないように感じた
デスクに手をつき、腰をやや曲げたままの状態で目を前にやると、見知らぬ男が目を皿のようにしてこちらを見ていた
岡 コウスケ
頭の整理が追いつかないまま部屋を見渡してみる。
殺風景かつ小さなオフィスだ。複数人で誰かが会議でもしていたのだろうか。ホワイトボードには「石垣島星空ファームガイドツアー」の内容が細々と、しかし太文字で書かれていた。
窓からは橙色の日差しが差し込んでいたが、すりガラスのせいか少し息苦しさをも感じた。
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
青嶺 キョウスケ
青嶺 キョウスケ
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
物事を整理し始めた途端に声をかけられると知能レベルが一気に下がった気分になる。並べようとしていた物が男の一言で雑然と化した。
青嶺 キョウスケ
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
整理しようとする青嶺の頭の中は何度も岡の言葉で崩されていく。
青嶺 キョウスケ
目線は岡の方に向けたまま、青嶺は手当り次第自分のポケットに触れ始める。
岡 コウスケ
青嶺はスマホの電源ボタンを押すと壁紙には高校時代のバレー部皆で撮った写真がいつもの様にお出迎えしてくれた。
この写真を見ると3位決定戦で惜しくもフルセットで逆転負けされた記憶が蘇る。でもそれ以上に楽しかったからという単純な理由付けで壁紙を頑なに青嶺は変えなかった。
2025年2月18日 15時44分
青嶺 キョウスケ
必死に記憶を辿ろうと試みるが、何故か大学の教室で国際経営の講義を受けている自分の姿と、バレーボールサークルの先輩に挨拶をしている自分の姿の2つばかりが脳裏に映り込んでくる。
しかし、その2つの記憶は共通して冬ではなかった事だけは確かだった。なんなら殆ど散ってしまった桜の木の景色が浮かび上がってくる程だった。
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
岡 コウスケ
岡 コウスケ
2025年2月18日 15時45分
岡は日付の浮かび上がった画面を青嶺に向け、設定がおかしい訳では無い事を示唆した。
二人は徐々に嫌な汗が滲み出始めるのが分かった。夢にしてはデスクの冷たさ、自分自身の手汗、もちろん頬を抓ってみても痛みを生じている事からそうであると疑えなかった。
青嶺 キョウスケ
急かされるように青嶺は父親のいる職場に電話をかけ、それに続くように岡も弟にLINE通話を試みた。
圏外ではないのだが、二人とも繋がることはなかった。その後も両親、友人、従兄弟から4,5年も連絡を取っていなかった知人達にも連絡をするも全て繋がらなかった。
岡 コウスケ
青嶺 キョウスケ
青嶺 キョウスケ
青嶺は再びスマホに目を向けた。
岡 コウスケ
岡 コウスケ
1…19…
固唾を呑んで電話をかける。繋がってくれと願う反面、内心は諦めていた。
………………
…結果は同じだった。
岡 コウスケ
青嶺 キョウスケ
目覚めた時とは比にならないくらいの声のボリュームに岡は眉をひそめた。
岡 コウスケ
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
何を言いたいのかを理解するのに意外にも時間がかからなかった。岡は恐る恐る青嶺のスマートフォンを覗き込むと現在地は「石垣島の市民会館」にピンが立っていた。
岡は瞳孔が開くと同時に、やや震える手を抑えようとしながら同様にマップを開く
しかし岡のスマートフォンにもマップには同じ位置が示されていた
岡 コウスケ
今が現実である事を実感すればするほど二人の焦りが募っていく
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
誰かぁっ!!誰かいないのかぁっ!?
青嶺 キョウスケ
岡 コウスケ
重厚感のあるスチール扉を挟んで、何者かの騒がしい声が二人の耳に届いてきた。
青嶺は重く冷たい扉を挟んでここまで聞こえてくるのを不自然に感じたが、ふと壁面の上の方に目をやると横長の高窓が設けられているのに気づいた
岡 コウスケ
岡は何者かの声の方へすぐさま反応し、扉に手をかけた。焦るあまりに、丁寧にテプラで''押しドア''と表記されている扉を2,3度程引いてしまう。
───扉を開けるとすぐ目の前に声を張り上げていた男が額に少量の汗を流しながら立っていた
飯塚 ショウジ
──出会ったばかりの人間に対してここまでも落胆した事はあっただろうか。
岡は期待していた人間、勝手に期待していた言葉とは違い、勝手に裏切られた感覚に陥り、呆気を取られた。
飯塚 ショウジ
飯塚は無言の時間が続くにつれ、二人が自分自身と同じ状況である事に気づき始める。
青嶺 キョウスケ
飯塚 ショウジ
飯塚 ショウジ
青嶺 キョウスケ
飯塚は小さく頷くと外を見渡せる窓の方へ歩いていく。
明順応のせいか、眩しさに目を細める。
自分たちが3~4階の高さにいた事を初めてそこで気づく。見下ろしてみれば木々がゆらゆらと靡いている。内側からでも伝わってくる程に麗らかな風が吹いているのが分かった。
飯塚の背を見越しながら青嶺も覗かせる。
横長の木製のベンチ、立形水飲水栓が設けられていたが水受けの部分は乾き切っていた。
青嶺 キョウスケ
飯塚 ショウジ
青嶺 キョウスケ
飯塚 ショウジ
飯塚は一点を見つめたまま突然微動だにしなくなった。
青嶺 キョウスケ
飯塚 ショウジ
肩に力が入っていたように思えたその背中を勢いよくこちらに向け、飯塚は二人の間を抜け両扉の空いた方へ飛び出して行った。
岡 コウスケ
違和感を感じた青嶺はすぐさま身を乗り出し飯塚の見ていた方向へ目線を合わせる。
青嶺 キョウスケ
吸い込まれるように、焦点を張り付けられたように、青嶺はその異様な光景から離れなくなった。
窓の外に見えたのは、骨が皮膚を突き破ってしまいそうなほど不自然に曲がった肢体だった。
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