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―ABCDEの殺人―
プロローグ
腹部が急に熱くなり、それが異常なことだということは、すぐに、理解することができた。
E
思わず腹部に当てた手を見ると、それは真っ赤に染まっていた。
こうしている今も、血がどくどくと流れているのが分かる。
E
自分の体のことは誰よりも自分が分かる。
Eは自らの命が風前の灯火であることを実感しつつ、ナイフを持って立ち尽くす相手を睨みつける。
E
E
こんな状況になった当初、それぞれが誰かに殺されるかもしれないという状態で、Eは場を和ませるために会心の冗談を放った。
だから、犯人はEが息絶えているのを待っている。
そう、自分の名前を書き残されないために。
E
E
E
E
腹部からの出血は止まりそうもない。
もはや圧迫止血ではどうにもならないのであろうが、それでも傷口に手を当ててしまうのは、生きたいと願うゆえの生存本能なのかもしれない。
E
火事場の馬鹿力とばかりに、Eは行動に出た。
腹部から流れる血に指先をひたし、床にメッセージを書き残す。
E
【犯人はEだ】
渾身の力を込めて書いたメッセージだった。
E
E
E
血が足りなくなってしまったのか、目の前がゆっくりと暗くなる。
重力に逆らっていられずに、Eはゆっくりと倒れ込んだ。
E
死の間際にEが見た光景は、床に残したメッセージを犯人の足が揉み消そうとしている光景だった。
それを見たEは、人生で最期の笑みを浮かべたのであった。