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コンテスト参加作品。踏切の前作品になります。メイ子の物語。
暑さで目を覚ました。
いつの間にか、うたた寝をしていたようだ。
メイ子
メイ子はベッドから起き上がると扇風機に当たった。
扇風機はぬるい風をおくりつづけるだで、ちっとも涼しくない。
渦を巻いた蚊取り線香は残りわずかだった。
メイ子
メイ子
部屋は十階建てマンションの西向き、それも最上階だ。
日中の容赦ない日ざしをまともに受けた部屋は、夜になっても熱がこもったままだった。
メイ子は昼間に引いていた遮光カーテンを開けた。
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子の肌は極端に弱かった。
一度蚊に刺されると一週間以上は腫れが続く。
最近は日光アレルギーも出始めた。
メイ子
メイ子
メイ子
ベッドを抜け出し、クローゼットを開けた。
メイ子
メイ子
メイ子
母親が買ってくる服はどおいうわけか男ものばかり。
メイコはしかたなしにネズミ色のパーカーとスエットパンツに着替えた。
おかん
おかん
玄関でビーサンを引っかけていると、バスタオルを頭に巻いた母親が風呂場から顔を出した。
メイ子
おかん
おかん
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子
そういう自分も毎回同じ返し。
おかん
おかん
おかん
母親はハハハと笑いながらリビングへと消えた。
玄関を出て廊下の奥にあるエレベーター。
正面に鏡がついている。
メイ子
と、毎回思う。
メイ子は自分自身を避けるかのように、フードをスッポリ被った。
マンションを出る。
踏切を渡る。
この踏切、あまり印象が良くない。
なぜならたびたび人身事故を起すからだ。
昼間、数十羽のカラスがカーカーとうるさく鳴き、線路の枕木をつつきに飛んでくる。
そんな時は決まって頭が痛くなる。
列車の異様な警笛音。
あれはもっと嫌だ。
心臓が締めつけられドキドキが止まらなくなるから。
コンビニをうろつき
ふたたびマンションのエレベーターに乗った。
ドアが締まる寸前、誰かが乗り込んできた。
メイ子
やってもうた……。
たしか名前は長谷川圭太。
たぶん同じ学年のはず。
部活か塾の帰りなのだろう、ここでよく遭遇する。
長谷川は最近あまり体調がすぐれないのか、顔は青ざめ、態度に落ち着きがなかった。
何度も顔を会わせているのに、もろ無視される。
ほんまイケスカナイ野郎だ!
したがって、こちらも思いきり無視することにした。
エレベータが開くと、長谷川はさっさと降りてしまった。
メイ子
自分でも嫌になるくらいの悪態をついた。
メイ子が降りたときには、すでに長谷川の姿はなかった。
ふと見ると
共用廊下にキラリと光るものが落ちていた。
メイ子
指の先で拾いあげたものは、青く光るディスクだった。
メイ子
メイ子
そういえば長谷川の家がどこにあるか知らなかった。
メイ子
管理人に届けようか迷ったあげく、面倒になって持ち帰ってしまった。
メイ子
部屋に帰ってもディスクの中身が気になった。
夜中、リビングにあるパソコンで再生を試みた。
カチッ〝゙
ブゥーン
メイ子
メイ子
メイ子
画像を見て驚いた。
ベッドに座るメイ子。部屋を出入りする姿が映っていた。
メイ子
メイ子
背筋がゾックと寒くなる。
メイ子
あわてて部屋に戻るなり家捜しを始めた。
クローゼットの上に置いてあった箱を開ける。中に小型のハンディカムが仕掛けてあった。
わーっ!
メイ子
メイ子
赤いランプが点滅している。
メイ子
箱からハンディカムを取り出すと録画ボタンを止めた。
▲マークの再生ボタンを押す。
再生画像に写し出されたのは── 暗闇にいる人影だ。
ガサガサとハンディカムの画像が落ち着かない。
その人物はハンディカムの向きを調整をしていると思われた。
驚くべきは動画に刻まれた時間だ。
20XX/9/12/11:28
メイ子
メイ子
メイ子
よく見るとパソコンの日付は午0:10を示している。
それならつい40分ほど前に、見知らぬ男がメイ子の部屋にいたことになる。
メイ子
メイ子はあわてて部屋を飛び出した。
と、同時に人影とぶつかった。
メイ子
メイ子は身を硬くした。
はっと目が覚めた。
メイ子
メイ子
メイ子は飛び起きた。
かなり寝汗をかいている。
メイ子
メイ子
遮光カーテンを開ける。
蚊取り線香はさっき見たときと同じく、くすぶりつづけている。
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子
時計を見る
メイ子
時間が2時間15分戻っている……しかし日付は4月12日のままだ。
メイ子
メイ子はネズミ色の パーカーにスエットパンツに着替えると部屋を出た。
玄関でビーサンを履いていると、頭にバスタオルを巻いた母親が顔を出した。
おかん
メイ子
おかん
いつもと変わりないセリフ。
まるで再生動画を繰り返し観ているかのようだ。
もしかして、これってデジャブ?
デジャブとは既視感のこと 。 未体験をすでにどこかで体験したような記憶のことだ……。
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子は先ほどより、早めに行動することにした。
コンビニへは行かずに、一階で長谷川を待ち伏せした。
マンションのエントランスに長谷川が入ってきた。
メイ子はエレベーターに乗った。
長谷川が乗り込んできた。
大きな荷物をかかえ、顔は相変わらず青ざめている。
十階で長谷川が降りる。
足早に駆けてゆく
カバンからディスクらしきものが落ちた。
メイ子
メイ子
なんと、長谷川はメイ子の家に駆け込んだのだ。
メイ子
メイ子
長谷川の持っていたカバン。
ナタでも入りそうな大きさだ。
メイ子
ストーカーが一方的な思いこみから殺人者に転じることは、 よくあることだ。
メイ子
玄関のドアが閉まっている。
西側のベランダから浸入を試み た。
いきなり遮光カーテンが開く。
長谷川圭太
長谷川の強烈な叫びにメイ子は驚き、ベランダの手摺から足を滑らせた。
落ちる!!!!!!!!!
ゆめ!
飛び上がった。
滝の汗をかいていて、今度は
パソコンの前にいた。
時計の針は午前1時
メイ子
メイ子
パソコンのDVDの再生は終わっていた。
たった今も夢をみているようで、不安に刈られる。
明日は永遠に来ないとさえ思えた。
カンカンカンカン
開いている窓から踏み切りの音が聞こえる。
メイ子
メイ子
メイ子
メイ子
自分の記憶に自信がない……。
メイ子
振り向いた瞬間
長谷川が光る何かを振りかざし 仁王立ちしていた。
メイ子
長谷川圭太
長谷川はお札のようなものを、ブンブン振り回す。
メイ子
メイ子
メイ子が叫ぶ。
まぶしい光
目が覚める寸前
長谷川が叫んだ。
長谷川圭太
長谷川圭太
長谷川圭太
まぶしい!
アッ!
記憶を思い出す。
異様な警笛をあげて
列車がメイ子に迫り来る!
ブオオオオオ━━━━━━ン
プッチ〝゙“
長谷川圭太
長谷川圭太
霊能者
長谷川圭太
霊能者
霊能者
長谷川圭太
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
長谷川圭太
長谷川圭太
霊能者
霊能者
長谷川圭太
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
霊能者
長谷川圭太は深々と頭を下げた。
本作品は第二回テラコン出品作品『踏切』の前作に当たります。
2018年の暑い盛りに
メイ子の死の経緯を書きました。