テラーノベル
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世界では
3秒に1人
人が死んでいく
おもしろいね、うん
最高にオモシロいことだ
千尋
でも
オモシロいね、死ぬって
3秒に1人
死ぬんだってさ
千尋
鳴き声を発することなく
烏が
視界の片隅を横切る
澱んだ
どこかでこの感情と繋がっているような
低い雲が
空を急ぎ流れる
これほど暗い気持ちで
家路を辿ったことはなかった
どうして俯いているんだろう
そう考える千尋
わざと俯いているのかもしれないし
そうではなく
何も見たくないのかもしれない
千尋の心の底に停滞しているものは
友達や担任が死んだという悲しさだけではなかった
自分が昨日送ってしまった
5通の手紙
それによって
また死者が出てしまうのだろうか
ただでさえ
人が死ぬ場面には直面したくないのに
今度は自分が
手紙を送りつけた者を
殺してしまうことになる
千尋
自分は
直接死に関与しているわけではない
そう思っていても
やはり
心に日差しが差し込むことはなかった
自分が送った手紙によって
人が死んでしまうかもしれない
そういう罪悪感が
彼女の心を圧迫していた
そしてそれがあるから
どうしても手紙という枷から
脱出できないという
先入観まで形成されていた
千尋
千尋
千尋
千尋は何度も
事実に反する願望を口にしていた
普通ならば
過去に起こったことを
悔やむようなタイプではない彼女だったが
今回ばかりは
そうもいかなかった
今の自分の行動には
事件に関係する理由など何もありはしない
そのはずなのに
どんどん人が葬られる
そして
自分も暗い闇の底に突き落とされていく
千尋
くよくよと考えている間に
家の玄関まで来ていた
千尋
重たいため息をついた
まるで
鉛でも含まれていそうな
重苦しい息だった
とりあえず内側に入り
ポストの中身を取り出す
薄っぺらい夕刊が入っていた
その見出しを目にして
再び身震いを禁じ得なかった
千尋
「県警察本部、生活安全部部長停職」
千尋
千尋
千尋
今月21日から
「チェインレター」による被害が
急速に拡大しており
これを受けて広島県警察の
生活安全部少年対策課が
情報の真偽の確認を怠った上で
「誤った情報」を流布させたため
「安全な対策を取れなかった」として
部長・大石泰はこれについて謝罪
さらに本人の停職をもって
「責任を取る」意向を明らかにした
午前2時を回ったとは思えないほど
警視庁の講習室には報道陣が押しかけていた
警官
警官
警官
演壇の脇に
マイクを持った職員が
声を張って報道陣に呼びかける
と
頭を項垂れたスーツ姿の男が
部下と思われる2人の男を連れ立てて
室内に現れた
一斉にフラッシュが焚かれる
警官
警官
警官
警官
警官
警官
会場は一瞬ざわついたものの
すぐにまた沈黙した
まるで語られる言葉を
渇望しているように
勅使川原は心底情けないというような顔つきで席につき
分厚いメガネを一度持ち上げて
マイクのスイッチを入れた
フラッシュの音が
幾重にも重なる
勅使川原
カメラのシャッター音が
喝采を向けているように鳴る
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
それは謝罪のようでもあったが
堂々巡りの責任逃れのような言明でもあった
ヤジは飛ばない
その代わり
激しいフラッシュの音が耳障りだった
映像は全国に中継されている
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
勅使川原
夏樹は朝定食を食べながら
耳をテレビに向けていた
夏樹
夏樹
#因習村
イキリ火の玉
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コメント
4件
あおいです🌷 第18話、読み終わりました。 千尋の「手紙さえなければ」という繰り返しが本当に重くて…。自分が送ったことでまた誰かが死ぬかもしれない、その罪悪感が彼女の心をじわじわと蝕んでいく様子が怖いくらい伝わってきました。警察の会見シーンも、謝罪のようで責任逃れにしか聞こえない空気感がリアルで、息苦しかったです。でも最後の夏樹さんの「やれやれだな」に、少しだけ胸が軽くなりました。続きがすごく気になります。