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『ウマ娘』

それは、別世界に存在する名馬の名と魂を受け継ぐ少女たち

彼女たちには尾があり、耳があり、超人的な脚がある

これは、とある白毛のウマ娘の物語

そのウマ娘の名は───

『ユリノテイオー』

『君は俺の自慢の妹だよ』

俺の妹は、実力のあるウマ娘だ

初めてのレースで俺の妹は一番人気に推された

その人気に応えるかのように、妹は一着でゴール

初のレースで初の勝利を収めた妹

俺は、その走りを鈍らせないために、一日中勉強した

妹に心配されても、他の同期に心配されても、俺はペンを持つ腕を止めなかった

勉強するのは昔からの習慣だと思う

だから勉強で徹夜なんてもう慣れているし、心配することはないのに

それからしばらくして、妹は目標を掲げた

『無敗の三冠を取りたいんだ』と

正直、無理だと思った

でも、せっかく妹が決めたことだ

この子の夢を壊したくないから、俺はより一層勉強に励んだ

トレーニングも徹底的に行った

少し厳しいトレーニングだけど、妹は自分の走りが良くなる度に喜んでた

……と思う

皐月賞の、一週間前のことだった───

…………よしっ

いいタイムだ

なんの変哲もない、いつものトレーニング

追い切りでいいタイムを出したユリノは小走りで俺の元に戻ってきた

ユリノテイオー

……兄さん、どうだった?

またタイム更新。前よりも0.7秒も上がったよ

ユリノテイオー

………!やった………!

タイムを聞いて、嬉しそうな仕草を見せるユリノ

こんどの皐月賞、期待できそうだね

ユリノテイオー

うん。僕も結構自信あるの

そう

ユリノテイオー

…………あと、兄さん

ん?

ユリノはモジモジして、珍しく顔を赤らめた

ユリノテイオー

今日、僕と兄さんが初めて会った日……でしょ?

ユリノテイオー

だから……はい。プレゼント

………!ありがとう

ユリノは俺に小さな紙袋を渡した

…………そうだな そういえばそうだったよな

………ごめん。すっかり忘れてた

ユリノテイオー

………いいよ。別に

でも……

ユリノテイオー

僕は兄さんに何もしてないし。兄さんいつも優しいもん

ユリノテイオー

僕、別にプレゼントいらないから

…………ありがとう。ユリノ

俺はそう言い、照れて下を見た

ユリノのボロボロの靴が目に入る

さすがに、もらうだけってのは駄目だよな

ユリノテイオー

こちらこそ。いつもありがとう

ユリノテイオー

………兄さん

はぁ……

すっかり遅くなっちゃったな〜……

トレーニングが終わり、俺は帰路についた

ユリノにもらった紙袋を握りしめ、明るい照明に照らされた商店街を見る

(………)

(買おうかな。プレゼント)

4月10日

一週間後は皐月賞だ

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