シーン1 ―― 水瀬家 リビング / 平日の午後
白いカーテン。二人掛けのソファ。結婚記念日に買ったコーヒーメーカー。
八年間、ここが真子の世界だった。
テーブルの上に置かれたスマホには、既読のつかないLINEが一件。
「今日、夕飯何がいい?」
送ったのは三時間前だった。
真子
チャイムが鳴った。
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
って言ってた」
南
真子
南
真子
南はしばらく黙った。
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南
真子
南が帰った後、リビングに静けさが戻った。
真子はスマホで検索した。
真子
しばらく番号を見つめてから、発信ボタンを押した。
受付
真子
受付
真子
受付
真子
受付
真子
電話を切って、スマホを胸に当てた。
深呼吸を一つ。
真子
シーン2 ―― 桐谷探偵事務所 応接室 / 二日後 午後2時
雑居ビルの四階。すりガラスのドアに「桐谷探偵事務所」とあった。
真子はドアを開けた。
受付
真子
受付
通された応接室は小さかった。白いテーブル、向かい合う椅子、観葉植物が一つ。
しばらくして、男が入ってきた。
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子は書類を手に取った。
夫の名前、勤め先、住所を書きながら、少し手が震えた。
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子
桐谷
真子が部屋を出た後、桐谷は書類を見つめたまま動かなかった。
桐谷
かすかに、眉をひそめた。
シーン3 ―― 水瀬家 自宅 / その日の深夜
帰宅の音がしたのは、午前一時を過ぎていた。
真子は布団の中で目を閉じたまま、息をひそめた。
真子
廊下の足音。洗面台の水音。リビングの電気。
真子は起き上がって、リビングへ向かった。
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
慶一はネクタイを緩めてソファに座った。
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
沈黙が流れた。
以前は、この沈黙が苦にならなかった。でも今は違う。沈黙の中に、何かが隠れている気がして仕方がない。
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
慶一がスマホを出した。画面を確認して、すっと伏せる。
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一が止まった。
一秒、二秒、三秒。
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
真子
慶一
寝室に戻って布団に入った。
暗い天井を見上げながら、さっきの慶一の顔を思い出す。
「好きだよ」
三秒の間があった。
本当のことを言ったのか、嘘をついたのか。
そして自分は——
真子
リビングで慶一がスマホを操作する気配がした。
素早い。誰かに何かを送っている。
枕の下にスマホを滑り込ませる音がして、慶一がベッドに入ってきた。
背中合わせになった。
八年間、隣にいた人間。
こんなに遠く感じたことは、なかった。
真子
桐谷の言葉が浮かんだ。
「調査を進める中で、依頼者の方ご自身に関係する情報が出てくることがある」
あの言葉の意味は、何だったのか。
私に関係する情報。
私に——
真子
時計が午前二時を指した。
真子は目を閉じた。
二週間後、すべてが分かる。
そのとき真子はまだ、報告書に写っているのが自分自身だとは——夢にも思っていなかった。






