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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

騒然とした教室…

クラスメイト

ねぇねぇ、ゆらゆらさんって知ってる?

クラスメイト

何それ?

教室をこだまするいくつもの雑音

その中から、ふとそんな会話が高園の耳に入ってきた。

クラスメイト

10回続けてその名前を唱えると…

クラスメイト

どこか、別の世界へ連れて行かれちゃうんだって。

クラスメイト

えー、やめてよそういうの!

高園

(ゆらゆらさん…?)

聞き慣れない言葉に、思わず高園はその会話に耳を傾けた。

クラスメイト

心の中で唱えても連れていかれちゃうんだって!

クラスメイト

心の中も駄目なのー?うっかり唱えちゃいそー…。

クラスメイト

ゆらゆらさんは今も、その合図を心待ちにこの世界を見張ってるとか。

クラスメイト

えぇー怖…。

クラスメイト

あはは。な、なんか話してるあたしも怖くなってきちゃった…。

クラスメイト

そ、そういやさ…

高園

…。

一人の振った別の話題で、そのグループはまた盛り上がっていた。

しかし、そのグループの話題が幾度となく変われど

高園は「ゆらゆらさん」のことが胸につっかえたままだった。

高園

はぁー。

高園

気になるじゃないの…。

教室の窓際で数人と談笑する一人の少女の方を見て、高園はそう呟いた

芝岸

ええぇ!またUFOの報告が!!

芝岸

しかもこの辺りでですか!

芝岸

これは今日も深夜の偵察一択ですねぇ!

高園

(前はきっとあの会話も耳に入らなかっだろうけど…)

高園

(彼女と話したおかげで、すっかり私もオカルトにハマってしまった。)

高園

(オカルト好きの芝ちゃんは、この話知ってそうだな。)

高園

(帰りにでも話してみようかな。)

そんなことを考えていると、チャイムが鳴り響き、授業の五分前を告げた。

帰り道…。

昼休みのことを思い出した高園は芝岸に“あの事”を尋ねた。

高園

あ、そうだ。

高園

芝ちゃん、ゆらゆらさんって知ってる?

芝岸

んー?ゆらゆらさん?

芝岸

初めて聞いた!何それ!

高園

え、芝ちゃん初耳なんだ。

芝岸は、オカルトに関してはいつも聞いたことの10倍で返してくる。

なので、それに構えていた高園は少し面食らった。

高園

今日、教室で、チラッと聞いたんだけど…

高園

「ゆらゆらさん」って10回唱えると、異世界へ連れて行かれるんだって。

芝岸

そんな噂が!?

芝岸

初耳…!

芝岸

家に帰ってリサーチしないと!!

高園の予想通り、芝岸は目を輝かせ話に乗った。

その後、二人は少し雑談した後、分かれ道で別れた。

芝岸と別れた高園は、家へ続く路地を歩いていた。

陽は並ぶ建物を橙色に照らしており

高園の足音だけが聞こえる静けさだった。

高園

(ゆらゆらさん…。)

高園

(心の中でも、唱えるだけで連れて行かれる…。)

高園

(考えたら駄目。)

高園

(そんなの嘘だと思っても)

高園

(しないに限るし…。)

しかし、制御しようと思っても、禁止された事ほどしてみたいと思ってしまう。

高園

(ゆらゆらさん…。)

絶対にやらない方が良いと分かっている。

それでも、好奇心につられまた、一回、二回とその名を唱えてしまう。

高園

(ゆらゆらさん、ゆらゆらさん…)

緊張とともに早足になる。

高園

(ゆらゆらさん…ゆらゆらさん…。)

高園

(ゆらゆらさん…。)

生ぬるい風が後ろから高園にゆっくり吹き付けた。

何かがゆっくり高園に近づいてくるように。

それでも高園は続けた。

高園

(ゆらゆらさん、ゆらゆらさん。)

高園

(……ゆらゆらさん。)

きっと何も起こらない。

そんな思考が彼女の背中を押した。

高園

(ゆらゆらさん。)

高園が心の中でそう唱え終わった途端

さっきの生ぬるい風が突然強くなり、高園を通り過ぎていった。

高園

……!

一瞬の出来事に戸惑った高園の鼓動が早まる。

高園は思わず足を止め、辺りを見回した。

高園

は、は。何も居ない…。

高園

(所詮ただの噂よね…。)

高園はそうやって自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。

高園は、さっきまでなんとも思わなかった静寂さが急に奇妙に思えて、

辺りを照らす夕陽の朱さえ、禍々しく感じられた。

高園

いつもの帰り道なのに…不気味…。

異様な雰囲気が漂う路地。

そこから逃れるように高園は早足で家へ向かった。

高園

ただいまー…。

高園の声のみがリビングに響く。

高園

…今日はお父さんもお母さんも居ないんだった。

そう言うと高園はソファに倒れ込んだ。

高園

はぁー、今日も疲れた。

高園

……。

さっきの出来事のせいで、1人であることが怖く感じられる。

高園は、家のなかに何かが潜んでいるようにさえ思えてきた。

高園

(あぁ…。なんでこういうときに限って1人になっちゃうんだろ…。)

高園

(動画でも見て気分を落ち着かせよっかな…。)

それから暫くの間、高園はスマホで動画を見ていた。

イヤフォンで他の音が聞こえないようにしながら。

高園

(…この企画って最近はやってたりするのかなぁ。)

高園は恐怖を紛らわすため、なるべく明るい話題のものを、なるべく夢中になるようにして見ていた。

高園

(ふふっ。やっぱりこの人たちの動画面白いなぁ。)

高園

(あ…。)

ふと、動画が止まる。

高園

(…)

いきなり訪れた静寂に、忘れていた恐怖を高園は思い出した。

高園

(早く付いてよ…。)

しかし、いくら待てども画面は固まったまま動かない。

高園は変な音を聞いてしまわないよう、なるべく耳に意識を向けないようにした。

高園

(…あれ?通信環境は悪くないはずなのに…。)

高園がそう気付いた途端、突然画面が暗転し、画面には読み込みマークのみが残された。

高園

え、ちょっと。

画面の暗転により、反射で映る、高園と後ろの部屋がはっきりと見えるようになった。

そのおかげで

いつの間にか少し開いていたリビングの扉、その奥の暗闇から

こちらをじっと見つめる目まではっきりと見えた。

高園

えっ?

高園

(なにか…居る…!?)

高園は、反射した景色が揺れていることから、自分の手が震えていることに気がついた。

心臓が脈打つ音が大きく早くなる。

スマホ越しに、今も“目”が、瞬きもせずこちらを見つめ続けているのが見える。

高園

(…ど、どうしよう。)

高園

(もしかして、ゆらゆらさんなの!?)

高園

(振り返ったら…連れて行かれる?)

高園の心の声に応えるよう、“目”はにやりと笑うように目尻をあげ、見開いた。

そして、扉がさらにギイイイと音を立ててゆっくりと開きだした。

高園

(入ってくる!!)

恐怖に耐えられなくなった高園は、思わず振り返った。

直接その“目”を確かめるため。

高園

え…。

だが、反射越しでもあんなにはっきりと見えていた“目”はそこにはなかった。

ただ、扉の開く音がリビングに響いているだけだった。

高園

なん、なの?

いつもの家の風景。

それを確認してもまだ、高園の心臓は警鐘を鳴らしたままだった。

暫く高園が硬直していると、止まっていた動画が再び流れだした。

高園

…あ。動画が…。

動画の再開に、高園は少し安堵した。

と同時にメッセージの通知音が鳴った。

芝岸

高園ちゃん!

芝岸

ゆらゆらさんの話を今日してくれたじゃん

高園

うん

芝岸

あの後色々調べたんだ

芝岸

ゆらゆらさんって、人を連れ去るお化け…?じゃん

芝岸

実はね

芝岸

そのゆらゆらさんとお話しできちゃう儀式があるらしいよ!

影 -ゆらゆらさん-

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コメント

2

ユーザー

面白い!続き気になる〜

ユーザー

ヒッ……こ、コワクナイヨ…うん…ゼンゼンコンクナイヨ…!   とゆーか何故にそんな物語の構成が浮かぶ…?謎ダァ

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