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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

ガタンゴトン               ガタンゴトン

列車に揺られ、一体どれくらい経っただろうか

男性

まだ、先は長いな

しかし、それに不満はない

むしろ、この時間が永久に続いてほしいとも思う

男性

まあ、そんなことはないわけだが

ぼやき、目を瞑る

突然だが、列車は実に興味をひくものだと思う

まず一番に、種類の多さ

列車と一括りにしたが、その使用用途によって性能や形状は様々だ

旅客列車や貨物列車、その二つを合わせた混合列車など

その中でも私は蒸気列車、汽車が最も良いものだと思っている

なぜか、と問われるとうまく言い表せないが

安心する、という表現が一番適していると思う

その点で言うと、今私が乗っている列車も同じなのかもしれない

そんな考えをしている時、

「 あの、すいません」

どうやら、この列車もそろそろ駅につくらしい

私は目を開け、声の方へと顔を向ける

 

すいません、相席いいですか?

声の主はどうやら女性のようだった

男性

ええ、いいですよ

 

ありがとうございます

女性は私の隣の席に座り、続けてこう言った

 

あの、ここはどこか教えてもらってもいいですか?

私は慣れたように

男性

ここは列車です

当たり前のことを言う

 

いえ、そういうことではなくて

 

この列車はどこに向かっていて、
どんな目的で私はここにいるかが知りたいのです

男性

あぁはい、そうですよね

男性

私も詳しくは言えませんが

男性

この列車は、始点へと向かっています

 

始点、ですか?

男性

はい

男性

そして貴方は、その始点へ着くためにここへ来たのです

男性

理解できましたか?

一通りの説明をし、女性の言葉を待つ

 

ええ、なんとなくですけど

男性

それは、良かった

 

でも、また分からないことが出てきました

男性

何ですか?

 

貴方についてです

男性

私ですか?

 

貴方は、まるで私がここへ来ると知っていたように話してました

 

貴方は一体なんなのですか?

男性

……

男性

案内役といったところですかね

 

はい?

男性

列車には駅員、車掌さんたちがいますよね?

 

ええ

男性

私はその駅員の一人ということです

 

……

 

貴方は今まで、何人を案内してきたのですか?

男性

男性

ざっと、20人ほどですね

男性

普段は一人ずつ私のもとへ来るのですけど

男性

たまに二人同時で来たりしますね

男性

まだまだ新米ですよ

 

そうですか

 

この列車は、どれくらいで始点に着くのですか?

男性

ふむ、貴方がこの列車に来たことを考えると

男性

2週間程度ですかね

私は、今までの経験からそう伝える

 

そうですか

男性

それまでの間、私と話していましょう

男性

2週間なんて、ここではあっという間ですから

一週間ほど経った頃

 

あの、

男性

はい?

 

今、気づいたんですけど

 

駅員さんは、いや

 

駅員さんたちは、いつこの列車から降りるのですか?

この一週間で、女性とはだいぶ良い仲を築けた

だからこそ、気になるのだろう

男性

私たちは、この列車から降りることはありません

男性

強いて言うのなら、この列車が存在する意味を失ったとき

男性

この世界から、生命が途絶えたときですかね

男性

列車は終点へと行き、私たちと共に消えていくでしょう

 

……そんな

女性はショックを受けたようで、しばらく黙っていた

男性

ショックを受けているようで、申し訳ないですが

男性

私たちが存在する意味は、始点から終点までを見送ることです

男性

私は始点を担当していますが、今まで何人もの人を見送りました

男性

それで私は、幸せなのです

 

…そうですか

女性は、それ以上言葉を発さず黙ってしまった

なので私は、女性に言葉をかける

男性

私以外の駅員の話ですけど

男性

その駅員は、蛇担当でしてね

男性

幸い私は人担当でしたが、彼は言葉が通じにくくて困っていましたよ

そんな下らない話を数時間ほどしていた

すると、女性はだいぶ気力をとり戻したようだった

あれから4日後

ガタン…                 ゴトン……

男性

少し早めの到着ですね

 

着きましたか

男性

はい、ではそちらの出口から降りてください

出口には白く淡い光が漏れ出ていた

女性は出口へと向かい、一歩手前で足を止める

男性

どうしました?

 

私は、貴方のことを忘れません

男性

……

 

いつか私が、また列車に乗るときに

 

駅員に貴方の話をしてみせます

女性は、力強く宣言した

 

だから、駅員さんも私のことを覚えていてくれますか?

男性

男性

…はい、貴方が覚えていたらの話ですが

私の返事に、彼女は満足をしたのか

出口へと一歩踏み出し、光の中に消えていった

男性

……

男性

またのご乗車をお待ちしております

男性

なんて言うのですかね

私の言葉に返事はない

男性

さて、

私は出口のドアが閉まるのを確認し、席に着く

ドアが閉まる直前に、彼女の声が聞こえた気がした

男性

覚えるのは無理だろうな

私は、先ほどの彼女の言葉を思い出す

どう考えても、それは無理だと断言できる

こっちでの記憶はあっちには持っていけない

それは、この世界の法則だ

男性

まぁ、じっくり見守るとするか

一旦思考を止め、列車の揺れに身を任せる

ガタンゴトンと、規則的な揺れは心地よいという他ない

また列車は乗客を乗せ、始点へと向かう

まだ先は長い

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