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時と生死

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時と生死

1 - 時と生死 1

♥

1,011

2019年11月30日

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先輩はー、

過去にやり残した
こととかって

あるっすか?

滝 和馬

そうだなー…。

滝 和馬

10年前…

滝 和馬

高校生のとき、かな

滝 和馬

俺の隣の席の子が

滝 和馬

自殺しちゃって

えっ

滝 和馬

いじめられてたんだよね

滝 和馬

その子

滝 和馬

俺は別にその子と仲が良か
った訳じゃないんだけどさ

滝 和馬

俺がいじめを止められて
いたら

滝 和馬

その子は死ななかった
のかなーって

……

滝 和馬

はは、ごめんごめん

滝 和馬

こんな昔のこと
引きずってて

滝 和馬

仕事、戻ろうか

あの頃は、学校が全てで

目立つグループに逆らったら終わりで

そんな、狭い世界が

息苦しかった。

「うける。あいつが死んで せいせいするわ」

「マジで死んじゃうとはねー笑」

「…っ!」

「佐々さん死んじゃったのに、 何笑ってんだよ!!」

「お前らのせいで 死んだんだぞ!!」

「は?何言ってんだよ。」

「お前だって黙って 見てたくせに。」

「あ…。」

「てか、邪魔なんだよ。 どけよ。」

「……っ。」

俺は、いじめられていた佐々さんを

今度は自分がいじめられるのが怖くて

助けなかったんだ。

滝 和馬

(もし…)

滝 和馬

(今あの頃に戻れたら)

滝 和馬

(死んでしまったあの子を
助けられるのかな)

ガヤガヤとした音で目を開けると

そこは、教室だった。

滝 和馬

…え?

懐かしい光景。

滝 和馬

(あれだ…。)

滝 和馬

(これ、高校の教室だ。)

篠崎 颯

おはよー滝

滝 和馬

は、颯!?

篠崎 颯

ドアの前で突っ立って
何してんの?

そこには、俺の高校時代の友人がいた

見た目は若返り、高校生の姿を している。

その時、女子達の不愉快な笑い声が 耳に飛び込んだ。

女子

本当きもーい

女子

昨日あそこまで
してやったのに、

女子

よく学校来れたよねー

女子

佐々。

それはわざと全員に聞こえるような、大きな声の陰口だった。

あ。

篠崎 颯

…あいつらまたやってるよ

バッと後ろを振り返ると

陰口を言っているやつなんて気にしない、という風に

席に座って、まっすぐ前を向いている 女の子がいた。

滝 和馬

(……)

滝 和馬

(佐々さんが、いる…)

思わず涙が溢れそうになった。

そしてその時、俺は悟った。

颯や佐々さんが若返ったのではなく

俺が10年前にタイムスリップ したのだ、と。

そして、それは

俺が佐々さんを助けて、未来を変えるためなのだ、と。

教師

おーい、お前ら
席つけよー

教師の呼びかけに、皆がささっと席へ 戻っていった。

俺は、少しためらいながら佐々さんの隣に座る。

滝 和馬

(佐々さんはまだ
生きてるんだ)

佐々さんが死んだと分かったのは

夏休みが終わって初めて学校に行った

始業式。

つまり、佐々さんは夏休み中に 自殺している。

黒板に書かれた日付をちらっと見た。

今は7月14日。

夏休みが始まる前に、

いじめを解決しないと…!

佐々さんは、死なせない!

…といっても。

俺が下手にいじめに関与して

余計いじめを悪化させたら 元も子もない。

俺はその日から毎日

朝は佐々さんより早く登校して

ぐちゃぐちゃにされた佐々さんの 下駄箱の中を掃除したり

放課後はいじめっ子よりも遅く帰って

佐々さんの机の落書きを消したりして

いじめが根本的に解決した訳じゃ ないけど

佐々さんにいじめが届かないように 先回りして回避した。

女子

あはははは

休み時間。

佐々さんの教科書に、ハサミが 当てられた。

そして、跡形もなくビリビリに 引き裂かれる。

女子

あいつきっと困るよ

女子

ざまあ笑

女子達は満足したのか

佐々さんの机にビリビリの教科書と ハサミを置いたまま

教室を出ていった。

滝 和馬

…くそっ。

滝 和馬

…最低だ

滝 和馬

(佐々さんが教室に
戻って来る前に)

滝 和馬

(机の後片付けを
しないと…)

篠崎 颯

滝。

滝 和馬

うおっ、何?

篠崎 颯

…俺も、手伝うよ

篠崎 颯

片付け。

颯は「へへ、」とはにかんだ。

篠崎 颯

俺教科書の紙捨てて
来るからさ

篠崎 颯

女子のハサミはどっかゴミ
捨て場とかに捨てとけよ

滝 和馬

…ありがとう

滝 和馬

でもさすがにハサミは
捨てねーよ笑

滝 和馬

落し物コーナーに
置いて来るわ

篠崎 颯

おー笑 そうしとけ

颯は黙々と、佐々さんの机の後片付けをしてくれていた。

滝 和馬

(知らなかったな…)

滝 和馬

(颯も、佐々さんのことは
気にかけていたんだな)

滝 和馬

(10年後に戻ったら)

滝 和馬

(久しぶりに、颯に
電話しようかな)

ハサミを落し物コーナーに置いて

教室に戻った。

佐々さんの机は綺麗になっていた。

佐々さんと女子は、まだ来ていない。

滝 和馬

(佐々さん、教科書
なくなったんだよな)

滝 和馬

(俺の教科書と、交換
させとこ…)

そっと隣の机に、俺の教科書を 挿し込んだ。

しばらくして佐々さんが教室に戻り、

授業が始まる寸前のところで女子達が バタバタと戻ってきた。

起立、礼

「お願いします。」

着席。

隣の佐々さんは、

何の違和感もなく俺の教科書を 手にした。

滝 和馬

(気付かれなくて
よかったー…)

教師

おい滝

滝 和馬

教師

教科書はどうした

滝 和馬

あははー…

滝 和馬

すいません、忘れ
ちゃったみたいで

教師

何だとー?

教師

隣の佐々を見習えよー

女子

…!?

前の方の席にいる女子達が

一斉に後ろを振り返り、なんで、 というような顔をした。

滝 和馬

(へっ、ざまあだ)

滝 和馬

(お前達、佐々さんの
教科書)

滝 和馬

(ビリビリに破いた
はずだもんな?)

その時颯もこっちを振り返り、

俺に向かって小さく親指を立てた。

俺は、それに笑顔で答えた。

佐々 真由美

あれ?これって…

佐々 真由美

ごめん滝くん!

授業が終わった後

佐々さんがそう話しかけてきた。

滝 和馬

(えっ、な、何?)

佐々 真由美

この教科書、滝くんのだった

滝 和馬

(あぁーその事か)

佐々 真由美

私気付かず使ってた
みたいで…

滝 和馬

ああ、
そうだったんだ!

滝 和馬

席隣だし多分、俺が
間違えて

滝 和馬

佐々さんの机に入れ
ちゃってたんだわ

滝 和馬

ごめんね

俺は一方的にまくし立て

佐々さんから教科書を受け取った。

…女子から佐々さんに向けられていた

冷たい視線に気付かずに。

女子

あぁームカつく!

女子

あいつ最近なんなの?

女子

靴に画鋲入れたり

女子

机に雑巾入れたりしても

女子

全然反応しないじゃん

女子

てか、あいつの教科書
切ってやった筈だよね?

女子

なんで普通に教科書
持ってたの

女子

ねぇ。

女子

あいつに身の程思い知ら
せてやってよ

男子

はぁーい笑

事件が起こったのは、俺が佐々さんに教科書を貸した日の

放課後だった。

男子

佐々さぁーん

いつものように、いじめっ子よりも 遅く帰ろうとして教室にいたら

廊下から声が聞こえた。

男子

なあ、最近お前
調子乗ってんの?

佐々 真由美

調子に乗ってなんかない

佐々 真由美

あなたたちの方こそこんな
ことして、楽しんでるの?

佐々 真由美

いじめは立派な犯罪よ

男子

ごちゃごちゃ
うるせーんだよ!!

男子は思いっ切り、佐々さんに右腕を振り下ろそうとした。

…あの頃は

学校が全てで

目立つグループに逆らったら終わりで

そんな、狭い世界が

息苦しかった。

でも今はもう、

怖くない。

滝 和馬

やめろよ!

俺は勢いよく教室を飛び出し

佐々さんの前に立ちはだかった。

滝 和馬

お前ら、やめろよ
こういうの

男子

何だよ滝、佐々のこと
庇っちゃって

男子

もしかして好きなの〜?

佐々 真由美

……

滝 和馬

そうだよ

男子

は?

佐々さんは目を丸くして俺を見た。

滝 和馬

友達として、な

滝 和馬

だから暴力は佐々さんに
代わって

滝 和馬

俺が受ける!!

…どれくらい殴られただろう。

いや、高校生だからいけると 思ったんだ。

…相手が思ってたより強かったんだ。

佐々 真由美

ちょっと、どういう
つもり!?

男子が飽きて帰っていくと

殴られた俺に、佐々さんが 駆け寄ってきた。

滝 和馬

……佐々さんに、

滝 和馬

怪我して欲しくなかった
から…

佐々 真由美

なんで…!

佐々 真由美

…ごめん

佐々さんは怒ったように 声を荒げたが、

すぐに俯き俺に謝った。

佐々 真由美

保健室、行こう…

滝 和馬

いや、保健室はいいよ

滝 和馬

いじめが原因って
先生にバレたら

滝 和馬

余計いじめ悪化
するでしょ

教師がアテにならないことは 分かっていた。

佐々 真由美

……

佐々 真由美

じゃあ

佐々 真由美

私の家来て

滝 和馬

へ?

佐々 真由美

ここから近いし
手当てする

滝 和馬

……

滝 和馬

じゃあ、よろしく
お願いします…

この展開は予想外だ。

滝 和馬

おじゃましまーす

佐々 真由美

そこに鞄置いといて

滝 和馬

佐々さんのお母さん方は…

佐々 真由美

あ、親今いないから

滝 和馬

えっ!

滝 和馬

佐々さんてば
ダ・イ・タ・ン♡

佐々 真由美

そーいうのじゃないから

佐々 真由美

そこに座ってて

佐々さんは少しイラついたように 言い放った。

滝 和馬

はは、冗談だよ

しばらくして、佐々さんは救急箱を 持ってやって来た。

俺の腕に、湿布を貼り、包帯を 巻いていく。

滝 和馬

佐々さん手当て
上手いねー

佐々 真由美

……なれてるから

そういった彼女は、ふと目を伏せた。

佐々 真由美

本当に、ごめんね…

佐々 真由美

私のせいで

滝 和馬

!?

滝 和馬

佐々さんは何も
悪くない!!

滝 和馬

俺の方こそ、
ごめんだよ

佐々 真由美

何で?

佐々 真由美

滝くんは何も
悪くないじゃん

佐々さんは驚いたような表情をした。

滝 和馬

ほら、俺佐々さんのこと
好きとか言っちゃったじゃん

滝 和馬

あれで俺たちのこと
イジってくるかも

でも、本当に謝りたいことは 別にあった。

一度死なせてしまってごめん。

佐々 真由美

ははっ

佐々 真由美

いいよ別に

佐々さんはそう言って笑った。

佐々 真由美

ああ言ってくれて
嬉しかった

佐々 真由美

嫌いだって言われる
かと思ったから

佐々 真由美

私のこと助けてくれて、
本当にありがとう

滝 和馬

……!

滝 和馬

うん。

佐々さんの嬉しそうな顔を見て

俺も自然と笑みがこぼれた。

佐々 真由美

私も滝くんのこと

佐々 真由美

好きだよ

滝 和馬

…え?

佐々 真由美

友達としてっ。

顔が赤くなった俺を見て

佐々さんはそう言って笑った。

滝 和馬

じゃあ、また明日
学校でね

佐々 真由美

うん

滝 和馬

もしまた学校で
何かあっても

滝 和馬

俺もいるから大丈夫!

佐々 真由美

…うん。

佐々 真由美

ありがとう

滝 和馬

よっし、じゃあ
ライン交換しようぜ!

佐々 真由美

スマホ、持ってない

滝 和馬

え!マジ!?

滝 和馬

じゃあ家電教えてー

佐々 真由美

うん。

佐々 真由美

050ー×××ー…

佐々 真由美

×××…

滝 和馬

おっけー!

滝 和馬

何かあったらいつでも
かけてきていいよ!

滝 和馬

俺もかけるね

滝 和馬

じゃ、

滝 和馬

また明日!

それから何日か学校に通って

とうとう夏休みに入った。

これで

滝 和馬

(あれ?佐々さんから
着信きてた)

滝 和馬

(どうしたのかな?)

佐々さんが死ぬことは回避した

プルルルル…

プルルルル…

滝 和馬

(…出ないや)

はずだった。

教師

…まことに残念なことだが

教師

君達に話さなければ
ならないことがある。

始業式。

俺の隣は空席だった。

教師

佐々真由美さんが

教師

自殺して亡くなりました

…なんで。

また、佐々さんは

自殺して死んだ。

To Be continued…

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1,011

コメント

10

ユーザー

ミネちゃんテストお疲れ様!! 夏休みの間に佐々さんがどんなことを考えてたのか...死んだら全部分からないままだね...

ユーザー

カサミネさん、テストお疲れ様です!滝は佐々の自 殺 を止められなかったのか…次は滝がいじめられる側になる可能性が少々…((うるさい

ユーザー

え…?佐々ちゃん亡くなったの…?夏休みの間に何が… というか、いじめをしてた奴達が許せない…

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