デビルズパレス 食堂
主
ナック
毒
その物騒な言葉とは裏腹に
ナックは楽しそうにグラスをまわし
中の液体を全て飲み干した
主
主
主
変わらない穏やかな微笑みの中
ナック
ナック
赤と青のふたつの瞳が私をまっすぐにとらえた
主
ナック
主
主
主
主
ナック
主
主
ナック
いつものように
ナック
大げさな言葉と仕草で
ナック
彼は私に
またひとつ嘘をついた
主
主
ナック
ナック
主
主
私が彼のカクテルに入れたのは
睡眠薬だった
主
わたしは無意識に
隣の空席を眺めた
主
主
ナック
いつも悔しいくらいに
うまく本心を隠してしまうナックでも
ナック
ナック
ナック
この時ばかりは
言葉の端々が震えていた
主
主
ナックだけじゃない
今日は悪魔執事みんなが
それぞれの思いや葛藤に顔を 歪ませていた
主
いや、きっと今日だけではなくて
明日も明後日も
何年先もきっと
みんなの中にはあの人がいる
主
ナック
急に黙り込んでしまった私に
ナックが声をかけるけれど
私の溢れかえる思考の渦の中には
届かなかった
主
主
主
唇が震える
言葉にできない、言葉にするべきじゃないものが
今にも溢れだしそうで
でもそれをせき止めるために
全身に力をこめる
主
主
主
私の瞳からは
ボロボロと大粒の涙がこぼれていた
悔しさ、恨めしさ、羨ましさ、悲しさ
自分のどの感情からくるものなのかは
判別がつかなかった
ナック
ただ
次にこぼれた涙は
ナックが優しく抱きしめてくれたことがうれしかったからだった
ナック
ナック
耳元がじわりと熱い
飾り気のない
ナックの心からの言葉だと分かる
主
私は縋るように彼の背に腕を回した
主
主
ナック
ナック
彼は優しくもしっかりと 包み込んでくれた
主
主
主
私は目眩がするような渦の中で
どこか他人事のようにそう思った
ナック
ナック
ナックの優しい言葉が耳を撫でていく
ナック
ナック
優しくて心地よくてあたたかい
でもこれはきっと嘘だらけの言葉
主
主
主
主
私はナックの背から腕を離し
彼の頬を包むように手を添えた
主
主
主
ナック
ナック
私はそのまま
彼の方へ近づいていく
主
彼の頬の古傷を撫で
色の違うふたつの瞳を見つめ
まるで呪いをかけるように
主
主
唇を重ねた
今日は
先代の主の命日だった
そして
先代の主というのは 私のたった1人の姉のことであった
つづく
コメント
2件
、、、え最高❤︎え、天才ですね