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神様

──俺に、色んな事教えてくれよ

──え?

教えるって……

神様

俺、この町と神社とお祈りする人間しか見た事無くてさ

神様

でも、渚は色々知ってるだろ?

う、うん…?

神様

だから、全部教えてくれよ

神様

中々ないぞぉ?神様に教えられる機会なんて

(ここぞとばかりに上から目線だね?!)

う、うん、まぁ、良いけど……

それでいいの?

神様

あぁ、お前のこともっと知りたいしな

神様

幾年ぶりの人間の話し相手だと思ってんだ?

(…そ、そっか、ほとんどの人は視えないのかぁ)

神様

じゃ、今日からよろしくな!

うん……!

きっと傍から見れば

虚空に向かって話しかけている変な人と思われるだろう

でも、今はそんなことが気にならない程

私は混乱していたのだ

今日から、私の不思議なお盆休みが始まった

きっとこれまでに無い体験になるだろうと

神様が消えた後、布団に顔を埋め、目を瞑った

…溺れそうだ

8月14日

木々のお陰で、気が紛れるが

朝と言えど、夏は暑いものだ

陽光が日焼け止めを塗った頬に反射している

神様

──よっ!

…おはよ

神様

何だ?朝は苦手か?

……まぁ、うん…

神様

お前は、中学校までここに居たんだろ?

え、何で……

神様

母親が言ってたんでね

(そっか、私から視えなくなることもできるんだっけ…)

神様

俺、そこ行ってみたいんだ!

えぇ…?!

どうして?!

神様

俺、神社周辺から出れねぇからさ

そうだったね…

あれ、でも中学校はここから離れてるけど……

神様

ダメだなぁ

??

神様

この姿は「呪縛」でもあるんだ

え…?

神様

要は────

その瞬間

光が弾けた

太陽を直視した時のような

目の痛くなるような光が

段々と目も慣れ、周りが見えてきた頃──

神様

…こうすればいいんだ!

私より少し背丈の高い、少年がいた

──……え!?

か、神様、だよね?

神様

どうだ?お前ら人間となんも変わんないだろ?

そう自慢げにいう神様は、人の姿になっても

狐のお面を被っていた

その、お面は大丈夫なの…?

神様

あぁ?まぁ、何とかなるだろ

ぇ?えぇ…

神様

これから暫くは「人間」の俺だ

神様

よろしくな!

う、うん…?

幽霊にいくら話しかけられても

イタズラされても、驚かなかった私だが

この日、「神様」の力の片鱗を見て

初めて、脳が追いつかなくなったのだ

相模原中学校

神様

…へぇ、これがお前の中学校か

う、うん……

(……)

(…どうしよう、こんなの「亜里沙」に見られたら…───)

────あっれェ?!

「幽霊先輩」じゃないですかァっ?!

ぅぐっ…

神様

妙にハリのある声で後ろから叫ばれるのは

今でも慣れない

「彼女」の声だった

痩せて細い猫背の身体

徹夜続きでできた隈

それでも気合いの入ったツインテール

(…あ、亜里沙だ……)

私の後輩である名部 亜里沙が、そこにいた

名部 亜里沙

幽霊先輩、久しぶりですねェ?

名部 亜里沙

どうですかァ、やっぱり幽霊は視えるんですかァ??

名部 亜里沙

…あれ

名部 亜里沙

こちらの方はァ?

(しまった!神様がいたんだった…!)

神様

俺、こいつの友達だ

名部 亜里沙

へえェ、友達……フゥン…

あの、ほんとに友達で…

名部 亜里沙

あァっ、やっと喋ってくれた!

名部 亜里沙

取り憑かれてるのかとォ

(相変わらず、忙しい子だなぁ…)

名部 亜里沙

知り合ったのは小学生、夏の縦割り遠足の時

亜里沙は元からオカルトなどに興味があったらしい

亜里沙に迫られ口を開いた途端これだ

何でも、オカルト研究部を中学校に作ったらしい

オカルトに関する話を聞いた時の行動力は凄まじいのだとか

…まぁ、それは私がいちばん知っているけれど

名部 亜里沙

……や、でもおかしィんですよ!

えっ?!

名部 亜里沙

先輩、幽霊以外で男の人連れてるの見た事ないんですゥ

えっ、と…

そ、そんなこと─

名部 亜里沙

つまりィ、彼も幽霊ですねェ?!

っ……と

不意に、乾いた音が響いた

振り返れば、「神様」が拍手を送っていた

神様

──お見事

名部 亜里沙

わァ、当たっちゃった

名部 亜里沙

でもボク、霊感皆無だけどォ…

(…これは、説明した方がいいな)

あのね、亜里沙……───

名部 亜里沙

──じゃァ、この人は神様ってことですか?

名部 亜里沙

波浪神社の?

……うん、そうなの

名部 亜里沙

…神様だから、好き勝手できるってことか

名部 亜里沙

ヘェ、またとんでもないの連れてきましたねェ

…あはは……

神様

「また」?

あ、えっと…

私、この時期だけ幽霊が視えるんだ

神様

この時期だけ?いつもじゃないのか?

うん……

名部 亜里沙

でも、いつからかは分からないんですよねェ

そうなの!

思い出そうにも、思い出せなくて

神様

ふーん、思い出せないってことは

神様

それほど大事じゃないんじゃないか?

そうかなぁ?

名部 亜里沙

ボク的にはスッキリするんですがね

亜里沙は

少し変わっている

神様

何だかんだ仲良いんだな

だけど

私を気味悪がったりしなかった

…うん

名部 亜里沙

…そうだ、先輩

名部 亜里沙

先輩は、花火大会行くんですかァ?

そのつもりだけど……

名部 亜里沙

どーせ、神様とやらと一緒ですよね?

えっ?!

でも、神様は仕事とかあるんじゃないかなぁ?

神様

あ゙ー…

神様

…まぁ、花火大会はいけるかもな

名部 亜里沙

…ボクも着いてっちゃだめェ?

え、お祭りに?

名部 亜里沙

うん

全然大丈夫だけど……

名部 亜里沙

やったァ

名部 亜里沙

じゃ、花火大会は2人で楽しんでくださいねェ

神様

何だよ、お前も来りゃいいのに

名部 亜里沙

名部 亜里沙

いいんですよォ

名部 亜里沙

ごゆっくりィ

(勘違いしてそう…)

名部 亜里沙

じゃァ、お盆休み楽しんでくださァい

あっ、うん…?

またね!

(どうしたんだろう、いつもは実験だ!とか言ってるのに…)

亜里沙は口の端を吊り上げた、いつもの笑顔で

無言で手を振り返すと校門から校内へ入っていった

神様

…いやぁ、凄い人間が友達なんだな!

あれ、まだ序の口なんだ

神様

序の口……?

酷い時は、連れてかれるよ

神様

…何処へ?

地獄

神様

……

「さ、次の場所に行こう」と声をかけ、背を向いたが

神様が小さく「怖ぇな」と言ったのを

内心、首が折れるほど振って共感した

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