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みいこはママと一緒に久しぶりでおばあちゃんのおうちに行きました。

春休みの事です。 パパはお仕事があるのでお留守番でした。

おばあちゃん家は、みいこの家からはとても遠い町にあるので、そんなにいつもは行けないのでした。

何年かに1回、それくらいじゃないと行けないようなところです。

ママ

ただいま

ママがげんかんの扉をガラガラとあけて、家の中に声をかけると、 おばあちゃんが、

おばあちゃん

おかえり

といいながら、 スリッパをパタパタ鳴らしてむかえにきてくれました。

みいこ

ただいま、おばあちゃん

私がママのとなりで、少し照れながら言うと、おばあちゃんはにっこりと笑って私の頭をなでてくれました。

おばあちゃん

ふかふかの可愛い髪が、またのびたねぇ

おばあちゃんは前にも私の茶色いくせっ毛を可愛いとほめてくれました。

おばあちゃんもママも、お父さんも黒くてまっすぐな髪なのに私だけふんわりしたくせのある髪なのでした。

こういう髪のことを「猫っ毛」と言うのだと前にママに教えてもらったことがあります。

可愛い感じがして、私はその言葉も、自分の髪も大好きでした。

私は、おばあちゃんの家が大好きでした。 古くて天井が高いところも、 庭から土や緑のにおいがするところも。 なんだか懐かしいような気持ちがして好きなのでした。

私の家は、大きな都会の中にある背の高いマンションです。 土も緑もベランダや公園にほんの少ししかありません。

春の日がふりそそぐ古い縁側で、 おばあちゃんとママと3人でお茶を飲みながらおせんべいを食べているとほっこりしました。

「ほっこり」って多分こういう時に使う言葉なんだろうなって、私は思うのです。

あったかくって、おだやかな気分で、 そしてやっぱりどこかなつかしいような、そんな感じ。 ずーっと昔からここでこうしていたような気持ちになるような、楽しい気持ち。 このまま丸くなってママのおひざでお昼寝したくなるような、そんな気持ちです。

ママとおばあちゃんのお話を聞きながら私は空を見上げました。

空に、さくらの花びらがひらひらと、 小鳥の羽のように舞っています。

おばあちゃんの家の庭には、 古い桜の木があります。 雲のように満開になったその木から花びらが散っているのでした。

それはとても大きな桜の木でした。 私が生まれる前、それどころかママが子供の頃から咲いていた桜の木だと言う話でした。

縁側で花びらを見つけ続けていたら

木の根元に猫が1匹いることに気がついました。

その猫はとても汚れていたけどなんだか愛嬌のある優しい顔をしていました

みいこ

ママ…!こっちきて!

ママ

あら?

ママ

随分と汚れた猫ちゃんね…洗ってあげないと…

おばあちゃん

ハイハイ…ちょいとお待ち。

そう言うとおばあちゃんはしおれたかつお節と、水に濡れたタオルを持ってきました。

おばあちゃんがかつお節の入ったお皿を置いた瞬間、猫は飛びつくようにかつお節にかじりつきました。

おばあちゃん

あらあら…よっぽどお腹が空いていたのねぇ

しばらくすると猫は顔をあげた。食べ終わったみたい。 私はお母さんの服の裾をつかみながら言った。

みいこ

ママ、早く拭いてあげよう?

ママ

えぇ。そうね

ママはにっこり私に微笑み返した後、タオルで拭きながらこんなことを話始めた

ママ

そういえばこの猫、タマに似てるわね。

みいこ

タマ?

ママ

えぇ

ママ

昔、お母さんが子供だった頃よくここに遊びに来ていた猫よ。

おばあちゃん

でも…それは随分昔の話だからこの猫は別の子だろうねぇ

みいこ

ねぇ…その猫、どんな猫?

ママ

そうね…

ママ

茶色のフワッとした毛並みの猫だったわ

ママ

そういえば

ママは思い出したと言わんばかりの顔をした後、みるみる悲しい顔になっていった。

ママ

タマを見なくなったのはあの日以降ね。

みいこ

あの日?

ママ

うん…お母さんが縁側でお茶を飲んでいる時ね

ママ

タマが小さな子猫をくわえてやってきたの

ママ

お母さんはすぐさま近寄ったんだけど……

ママの声は途切れてしまったけど、私はその子猫がどんな様子だったかなんとなくわかった。

そして、コクリと頷き、うつむいてしまった…

ママ

ほら、あそこにたっている砂山

ママが指を指した先は木のすぐ近くの丁度日陰になっているところでした。

私がそこに近ずいて眺めていたら…

ママ

だからね。お母さんあの日子猫言ったの

ママ

もしまた生まれ変わる時は人間の子供になってねって

ママ

そしたら寒い中寝らずにすむからねって

みいこ

そうなんだ…

ママ

だから!ママはみいこに愛情をそそいでいるのよ!

そう言ってママは私の頭を撫でてくれた。

それはどこか

懐かしかった

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