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マキリ
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深夜。 東京のオフィス街。
私は、スマホ片手に 慌ててビルから飛び出した。
マキリ
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マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
1人ぼやきながらも、 必死に早歩きする私の名前は、
――九隅 真霧。 (クズミ マキリ)
高校卒業と同時に上京し、 Web制作会社で働き始めて5年。
今じゃすっかり 中堅社員の22歳だ。
マキリ
マキリ
時刻は、終電5分前。
ホッと一息ついた次の瞬間――
――目の前が、
真っ白になった。
???
マキリ
マキリ
マキリ
我ながら、 なんて間抜けな声 だろう。
漫画みたいに ポカンと口を開けたまま、
とりあえず 周囲を見渡してみる。
マキリ
木、木、木、木、木…
360°どこを向いても “木” しか見えない。
マキリ
マキリ
すぅっと息を吸えば
体いっぱいに 爽やかな木の香り。
不思議とリラックスする……
……これがマイナスイオンってやつ?
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
たぶん終電で家に帰って、 そのまま倒れるように寝たっぽい。
きっと、疲れすぎてて 思い出せないだけ。
マキリ
マキリ
マキリ
私の今期最推しアニメ 『婚カツ兄貴』。
キャラも良いし、 ストーリーも毎週おもしろいし、
最終回は、絶対 配信リアタイしたかったのに…
マキリ
マキリ
起きたら ネタバレふまないよう気を付けて
どうにか早めに観ようっと。
マキリ
マキリ
マキリ
“相棒” こと “メガネ”。
悩みに悩んで選んだ 細フレームの度無しタイプ。
寝るとき以外ずっと愛用してて、 今や私の本体だ。
マキリ
マキリ
夢と分かれば、 選択肢は、ただひとつ。
マキリ
これは、私のモットーであり、
うちの祖母ちゃんの教えでもある。
「人間はねぇ、楽しめるうちが花なんだ…楽しめるうちに楽しみな!」
ってのが 祖母ちゃんの口癖で、
いつも元気に 笑ってたんだよなぁ…
???
ふいに、草木がこすれる音。
マキリ
好奇心の向くまま、 音の方向へ近づいてみる。
ウサギ?
マキリ
ちょこんと木の根元に座る、 薄茶色のウサギ。
モコモコおしりがとってもかわいい。
ウサギ?
ウサギ?
木の実を食べるのに夢中で、 私の存在には気づいてないみたい。
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
ウサギ?
牙を向いて 飛び掛かってきた?!
マキリ
――ズサッ
刺さった。
だけど痛みは無い。
刺されたのは 私じゃなく
“ウサギ” だったから。
私が「襲われる!」と身構えた瞬間。
白く輝く “光の矢” が飛んできて、 まっすぐウサギを貫いたのだ。
ウサギ?
力なく鳴くウサギの体は、
“キラキラ光る粒” に変わりながら 消えていった。
マキリ
足の力が抜け、 へなへな地面に座り込む。
遠くのほうから、声とともに 走ってくる “男” が1人。
金髪の男
金髪の男
マキリ
思わず、 止まりそうになる 心臓。
木と木の間から ひょっこり現れた彼の顔が、
あまりに “美しかった” のだ。
――どっかの アイドルか俳優さん――
そう言われても納得するぐらい、 全てが完璧に整っていた。
金髪の男
金髪の男
マキリ
マキリ
金髪の男
金髪の男
マキリ
優しく微笑んだ彼は、
そっと私へ手を差し出し、 立ち上がらせてくれた。
物語の“白馬の王子様”って こういう感じ なんだろうなぁ……
……馬には乗ってないけどね。
黒髪の男
マキリ
マキリ
マキリ
黒髪の男
何とも素朴な黒髪の彼は、 特徴も存在感も無さ過ぎる。
しかも黙って 金髪の彼の後ろに立ってたからか 森の木々と同化してたし!
マキリ
黒髪の男
マキリ
黒髪の男
黒髪の男
マキリ
…気がつけば、森の中。
ウサギっぽい怪物に襲われ、
イケメン王子様たちに助けられた。
2人とも初めて会うはず…
…だけど “なぜか” 初対面な気はしない。
彼らは腰に “剣” を差している。
そしてさっきの “光の矢”。
マキリ
今日の夢は、
「剣と魔法の ファンタジー」
…ってわけね。
ならば心ゆくまで “王道” を楽しむ しかないでしょッ!
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
金髪の男
黒髪の男
無言で固まり、 顔を見合わせ合う2人――
あまりに 私の理解が早すぎて 驚いちゃった
――ってやつ?
金髪の男
マキリ
金髪の男
金髪の男
金髪の男
黒髪の男
う~ん、勇者じゃ ないのかぁ…
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
金髪の男
マキリ
黒髪の男
マキリ
黒髪の男
マキリ
マキリ
金髪の男
マキリ
マキリ
黒髪の男
黒髪の男
金髪の男
金髪の男
2人の顔は 真剣そのもの。
マキリ
…夢とはいえ、 きっと死んだら痛そうだな。
せめて夢の中ぐらい、 楽しく笑って過ごしていたい。
苦労するのは 現実だけで充分だもの…
マキリ
金髪の男
金髪の男
マキリ
黒髪の男
黒髪の男
黒髪の男
黒髪の男
マキリ
夢の割には ずいぶん凝った設定だな?
金髪の男
マキリ
脈絡も無く いきなり特技を聞いてくるとか、
一発芸でも やらせるつもり?
金髪の男
金髪の男
金髪の男
ゆ…夢の中まで来て 仕事すんのか…
…まぁ、ここまで来たら 合わせるけどさ!
黒髪の男
マキリ
仕事に使える特技なら、 ほんとは『Webサイトの制作・運営』
って答えるとこだと思う。
でも剣と魔法のファンタジーで、 それは “野暮” ってもんでしょ?
金髪の男
金髪の男
金髪の男
マキリ
エイバスは、
RPGとかに出てくる いかにもファンタジーで 穏やかな街だった。
街に入ってすぐ、
「そのままの服 (ジャケットの通勤着) は目立つから」と、
“街娘っぽい洋服” を 買ってもらうことに。
さっそく着替えて鏡を見て、
ようやくファンタジーの住人になった みたいでテンションが上がる。
やっぱり形からって大事だね!
それから美味しい サンドウィッチとジュースを ごちそうしてもらって、
『お菓子作りをいかせる仕事』に
『当面住める貸家』まで 紹介してもらっちゃった!
そして夕暮れ時。
今から街の外へ出発する2人組を、 門の前で見送る。
マキリ
金髪の男
金髪の男
金髪の男が渡してきたのは “小さな革袋”。
マキリ
金髪の男
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金髪の男
金髪の男
マキリ
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金髪の男
金髪の男
金髪の男
マキリ
金髪の男
金髪の男
金髪の男
そう言い残すと 金髪の男は門から旅立った。
最後の最後までかっこいいとか、 どこの完璧超人だよ…!
黒髪の男
黒髪の男
少し遅れて 黒髪の男も去っていく。
あの人も 良い人だったなぁ……
マキリ
マキリ
マキリ
マキリ
半日は歩きまくったせいか 疲れはとっくにピーク。
足も棒みたいだし…
したいことも 特に浮かばないし…
マキリ
マキリ
中心街から離れた 小さな1軒家。
寝室は2階。
荷物はその辺に置いといて、 一直線にベッドへ飛び込む。
着替え?
お風呂?
メイク落とし?
ぜんぶまとめて くそくらえ。
今は思いっきり寝たいんだ。
…なんだかんだ、とても 盛りだくさんな楽しい夢だった。
明日は、良い日に なりそうだ……
マキリ
起きた私が目にしたのは、
いつもの ワンルームマンションの 狭い自宅――
――じゃなくて、
夢で見たはずの 貸家の寝室。
両脚は、筋肉痛。
服装は、街娘。
窓の外は、異世界の街並み。
マキリ
マキリ
それが、
異世界での
私の日常の 幕開けだった。