千才の話

私は神田千才［かんだ・ちとせ］、つい先ほど次作がヒットしないとクビたと告げられた小説家

ただ売れたら一生今私がお世話になってる出版社にサポートしてもらえる

10万部なんて中堅の安定した人の作品の売り上げだ

私みたいなデビュー作とその次しか売れなかったオワコン作家には程遠い数字

50万部なんて人気作家の数字、私には到底イメージできない

この一作で全てが変わる、人生を変えるチャンス

それと共にここでミスすれば人生は大きく崩れる

神田千才にもう逃げ道は残されていない

千才はずっと逃げ続けてきた、出来ないこと嫌なこと、怖いこと…

その全てから逃げ続けた結果…

高校、留年からの退学で中退

その時ダメ元で書いた趣味小説がまさかの大ヒット

なんとか首の皮一枚で繋がってこれから売れるとどの読者も思っていた、

それはもちろん千才自身も、

4作目を出版して少し経った頃のことだ

廊下を歩いていた千才は部屋の中で前原と社員が話していたのを耳にした

勉強から逃げ、部活から逃げ、学校を退学し、読者の批判も目を逸らした

その結果…

今に至る

私は一旦散歩に出かけた

外に出て家の近辺を一回り歩いた

見上げた私のマンションは大きく見えた

この運命を分ける一作…

私は何を書こうか…

答えはわからない

とにかく頭をリフレッシュしたくって旅行に出かけることにした

家のある神奈川から遠く離れた大分まできた

自然豊かで癒される

そもそも自暴自棄で、ダメ元で趣味で書いていた小説を送ってたまたま採用されて、たまたま売れただけ…

私なんて運だけの作家だ、それが売り上げという簡単な数字に出ている

もう、やめてしまいたい

これが本来の、私の実力なんだ…

旅行から帰ってからも気分が晴れず、ずっと作業部屋の椅子に座ってスマホゲームをしていた

日々サボること、諦めることの罪悪感は抱えていた

…でも

できなかった、自分は…変えられなかった

私は実家に帰った、日帰りだけど

私は全て打ち明けた、今の現象、そして私の気持ちを

母親はそう言い残し洗濯を干しに行った

神田千夜［かんだ・ちよ］私の妹で今は美容師をしてる

神田千才ってデビュー作しか面白くないよね

なにか退屈、ありきたり

終わったなw

消えた天才（笑）

第7作でしょ次、もう読む気失せたわ

千才は机の上に置かれていた8割ほど完成している構成をまとめたメモノートをグシャグシャにして破った