翔
おい涼太、まだ起きてるか?
涼太
なんか眠れなくてな。こんな時間にどうかしたか?
翔
いや、今車の中にいるんだけど、さっき自動販売機の前に白い服着た女がいてさ
涼太
運転中はメール禁止だろ
翔
今は停車しているから大丈夫だ
翔
そんなことより、その女は隣にいるんだが、なんか様子が変なんだよな
涼太
悪い、全く意味がわからない。一から説明してくれ
翔
分かった。俺が車を運転していたら、自動販売機前にさっきの女を見つけた。何か困ってそうだったから隣に乗せてやったんだ
翔
ただ、何を聞いても何も言わないし、ずっと俯いているだけなんだよな。様子もおかしいし、目も死んでるんだよ
涼太
そのシチュエーション、絶対そいつ幽霊だろ
涼太
そんなの乗せちゃって大丈夫なのかよ?
翔
さあな。どこに行きたいのか教えてくれないところは一番困るんだよな。せめて目的地ぐらい言ってくれればいいのに
涼太
お前もお人好しだな
翔
女がなんか喋ってんだけど
涼太
なんて言ってる?
翔
分からん。最初は「い」だな
涼太
一緒に死んでくれとかじゃないか?
翔
変なこと言うなよ
翔
まだ幽霊って決まったわけでもないんだし…
涼太
幽霊の方が面白いと思うけどな
涼太
まだ喋ってんのか?
翔
いや、もう喋ってない
翔
あ
涼太
?
翔
「出さないの」っぽい
涼太
そうだよ。停車しすぎだろ。早く行けよ
翔
まだ起きててくれるか?
涼太
子供みたいなこと言うなよ
涼太
まあ、真相が気になるし、起きててやるよ
翔
良かった
涼太
ああ
涼太
面白い展開を楽しみにしてる!
翔
冗談じゃねえよ
涼太
(笑)
30分後
翔
今、ちょっとタバコ吸うって言って外出てきた
涼太
なんかあったのか?
翔
いや、運転してる時にふと見たら、にんまり笑ってたんだよ
翔
それ見た瞬間全身に悪寒が走ったよ…
涼太
思い出し笑いじゃないのか?それぐらい誰だってするだろ
翔
お前は見てないからわかんないんだよ。見たやつならわかる。あいつはヤバいやつだって!
翔
それに、よく考えたら夜中にあんなとこで女1人で突っ立ってんのおかしいだろ…なんで俺気づかなかったんだよ…
涼太
確かにそうだな
翔
俺、普段だったら人助けなんかしないんだよ
翔
あいつのせいだ。多分、あいつのよく分からない妖気のせいで俺はあいつを車に乗せなんかしたんだ
涼太
妖気って、やっぱ幽霊か?
翔
幽霊じゃなかったらもっと怖い
涼太
写真でも撮ってみればいいんじゃないか?幽霊だったら映らないとかなんとか言うし…やってみる価値はあるだろ
翔
なるほど!ここから撮ってみる
2分後
翔
俺の思い違いかもしれない
涼太
やっぱ幽霊だったか?
翔
分からん…だから涼太に見て欲しいんだよ
涼太
はっ?お前俺が怖いの苦手なの知ってんだろ。特に画像は無理なんだよ
翔
頼む。一生のお願いだ
涼太
何回一生のお願いって使ってんだよ。俺は見ねーぞ。絶対にな。っていうかその画像送ったらマジで呪うぞ。祟るぞ。いいのかよ?
翔
分かった。諦める
涼太
お前はいい選択をしたな
翔
お、おう(笑)
涼太
それより、幽霊だったのか?幽霊じゃないのか?
翔
幽霊じゃないっぽい
涼太
ぽい?
翔
映ってはいたんだけど、オーブっていう幽霊の怨念とか悲しみだとかそういう丸いのが大量に浮かんでたんだよ
涼太
それは、ただ単にそこが幽霊スポットでその女は幽霊じゃないのか、幽霊スポットじゃないけどその女が幽霊なのか…どっちなんだよ?
翔
幽霊でも幽霊じゃなくてもいいけど、あの女はただただ怖い
涼太
ならさ、追い出せばいいじゃん
翔
そうじゃん!
翔
あ、ただ、どうやって追い出せばいいのか分からないんだよ
涼太
ストレートに言うのは流石に怖いよな…
翔
じゃあ、やんわり言ってみるわ
翔
待たせすぎたしな。じゃあまた後でな
涼太
おい!
涼太
もっと計画練ってからの方が良かった気がするんだが…
10分後
翔
あー良かったわ
涼太
成功したみたいだな
翔
ああ。本当にありがとな
涼太
じゃあ俺もう寝るわ
翔
おう。また今度な
涼太
またなー
30分後
翔
ヤバい
翔
もう流石に寝てるか?
翔
起きてくれ
翔
頼む
翔
一生のお願いだ
翔
自動販売機にあの女がいるんだよ!
翔
起きてくれ
翔
涼太!
15分後
翔
助けてくれ
翔
俺はもう抜け出せない
翔
起きろ!
翔
涼太!
涼太
涼太
何があったんだよ?
翔
良かった…
翔
どこまで走っても走っても家に帰れないんだ
涼太
どういう意味だよ?
翔
分かんねえよ。運転してしばらくすると、自動販売機があって、その前にあの女が立ってるんだ
涼太
同じ場所を走ってる?
翔
一体どうすればいいんだよ
涼太
スマホ
涼太
スマホのGPS機能使え
翔
やってみるよ
2分後
翔
出てこない
翔
GPSの現在地が出てこないんだよ!
涼太
落ち着けよ
涼太
涼太
自動販売機だ
涼太
自動販売機にはそこの所在地が書いてあるんだよ
翔
そこには女がいるんだぞ!見られるわけがねえだろ!
涼太
所在地がわかれば警察だって呼べる!大丈夫だ。行け!
翔
警察呼んだってここに来られないかもしれないだろ!来たって出られないかもしれない…
涼太
じゃあ、やっぱり…女を乗せるしかないだろ
翔
お前正気か⁉︎あの女はただの女じゃない!俺には出来ない!
涼太
大丈夫だ
涼太
お前が助かるまでちゃんと起きてる。さっきだって何もされなかっただろう?直接害は与えられてないんだから。お前が勝手に怖がってただけだろ?
涼太
頑張れよ!そこから抜け出すためだ!
翔
翔
わかった
翔
やってみる
涼太
ああ。きっと成功する
20分後
翔
やばい!
翔
おんながわらいはじめた
翔
こわい
涼太
今どこにいるんだ?
翔
しじのとおりにすすんだ
涼太
女が言った方へ進んだってことか?
翔
なんかいってる!
翔
あなたも…
翔
だって
涼太
ちゃんと聞くんだ
涼太
ちゃんと向き合えばきっと助けてくれる!
翔
あなたも…わ……てる……ね
涼太
わからない
涼太
なんて言っているのかわかればどうすればいいかわかるはずだ
翔
あし!!
涼太
足に何かされたのか?
翔
つかまれた
翔
やばい
翔
たすけてくr
涼太
翔!
涼太
大丈夫か?
涼太
耐えろ!
涼太
頑張れ!
1分後
翔
おまえのいっていたことは
翔
ただしかった
翔
あのおんなは
翔
いっしょにしんでくれ
翔
って
翔
あなたもわたしをすてるのね
翔
おれはあいつをたすけてやれなかった
涼太
何言ってんだよ翔
涼太
なんで過去形なんだよ!
翔
おれはもうしぬ
翔
い
涼太
いってなんだよ!
涼太
ふざけんなよ!
涼太
翔!
翔
きろ
涼太
お前もだろ!
涼太
生きるのは俺だけじゃない!お前もだよ
涼太
戻ってこいよ…