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美奈

本当のパパでもないくせに

美奈

そんなこと言わないでよ!

また言ってしまった。

美奈!

なんてこと言うの!

美奈

ちょっと帰るのが遅くなっただけで

美奈

そんな怒ることないでしょ!

美奈

ばっかじゃないの!

違う...

美奈!

パシッ!

美奈

いった...

ママもパパもお前のことが心配なのがわからないのか!

女の子がこんな夜遅くまで外にいるのがどんなに危険かわかってるのか!

美奈

うっさいなー

美奈

もうほっといてよ!

私は自分の部屋に戻った。

わかってる。

2人が自分のことを心配してあんなに怒っていることも

「本当のパパじゃないくせに」って言えば

あの人が悲しい顔をすることも

私はわかってる。

それでもあんなにひどいことを言ってしまう自分が嫌になる。

あの人が本当のパパじゃないとママから聞いたのは3年前の中学1年生。

美奈、ちょっといい?

美奈

なに?

美奈ももう中学生になったことだし

そろそろ言ってもいいかなって思うから言うね

美奈

え、なに...

実はね

あなたのパパは本当のパパじゃないのよ

美奈

美奈

え?

あなたが3歳くらいのときだからよく覚えてないわよね

美奈

ママ離婚したってこと?

美奈

私の本当のパパには会えないの?

そのうちわかるから

私が覚えてないときの話なら

知らないままでよかった。

この日以来

自分の家にいる「あの人」を、私はそういう目でしか見れなくなった。

それでも、私はもう高校生だ。

なにを言ったら「あの人」が傷つくのかくらい心の底ではわかっている。

もう何年か経てば、本当の親子のように話したり、一緒に出かけたりしたいと

心の底では思っている。

美奈

はぁ

美奈

明日謝ろう

翌朝

美奈おはよう

美奈

おはよう

美奈

あれあの人は?

お仕事の関係でいつもより早めに家を出たのよ

美奈

そうなんだ...

美奈も早く食べないと遅刻するわよ

美奈

美奈

ねえママ...

私は心の底で思っていることをママに打ち明けた。

よかったわ

そう思ってくれて

きっとパパもそれを聞いたら喜ぶわ

美奈

そう...かな

私は恥ずかしい気持ちをかき消すように朝食を平らげ、学校に行った。

学校の昼休みが終わるころ

私は先生に呼び出された。

美奈

私、なにかしましたか?

先生

いや、そうじゃない

先生

落ち着いて聞いてくれ

先生

お前のお父さんが...

職員室にママがやってきた。

あ、先生

美奈の母です

美奈がいつもお世話になってます

先生

こちらこそ...

先生

そんなことより早く行ってください!

はい...

美奈、行くわよ

美奈

うん...

ママの車に乗って隣町の病院に向かった。

いつもおしゃべりなママは黙り、車のテレビの音がうるさく感じた。

「お前のお父さんが...歩道に突っ込んできたトラックにひかれて病院に運ばれたらしいんだ」

さっき言われた先生の言葉が頭の中で反響する。

病院に着いたときには

もう「あの人」の息はなかった。

そんな...

美奈

ぱ...

美奈

パパ...

昨日のあの会話が最後になるとは

思ってもいなかった。

美奈

ごめん...

美奈

ごめんなさい、パパ!

こんなことになるなら

引き受けるんじゃなかった...

ママがボソッと言った言葉の意味がわからなかったが、目の前の悲しみに今はなにも考えられない。

通夜や葬式が終わり一段落した日曜日

パパの寝室にある、パパが仕事で使っていたカバンが目に入った。

美奈

こんなにボロボロになるなんて...

美奈

痛かったよね

見るとカバンのチャックが開いていた。

美奈

なにが入ってるんだろう

中をのぞくと、仕事関係の書類が入っていた。

美奈

ん?なんだろう

そこには仕事の書類とは違う感じの、冊子になったものがあった。

美奈

ニセパパ実験?

冊子の表紙には「ニセパパ実験」と書かれていて、私は中を開いた。

美奈

この度は本実験に参加していただきありがとうございます...

美奈

この実験は、血の繋がった「本当の父親」が「ニセモノ」だと嘘の情報を知らされても、良好な親子関係を築いていけるかを、長期間調査する実験です...

美奈

って、これをパパが...!?

その冊子には、実験の概要や方法、注意事項などが細かく書かれていた。

美奈

注意事項...

美奈

父親が本当の父親ではないと嘘の情報を子どもに伝えるのは、子どもが中学1年生になった年の父の日とする...

美奈

なお、その時点で発狂したり、調査の続行が不可能だと判断した場合は、速やかに中止してください...

私は3年前のことを思い出した。

本当のパパに会えるのかとママに聞いたとき

「会える」とか「会えない」ではなく

「そのうちわかるから」とママは言っていた。

そして、この前病院でも

「こんなことになるなら、引き受けるんじゃなかった」と。

そういうことかと、過去の点と点の記憶が一本に繋がった。

冊子を読み進めていくと、この実験は希薄になりがちな親子関係を改善しようと考えられたものらしく

場合によっては、「ニセモノの父親」だと知らせた方がより強い絆が形成されるのではないかと仮説を立てて行われた研究らしい。

美奈

どうしてパパ、こんな実験を...

美奈

あっ

私は数ヶ月前のある会話を思い出した。

美奈ももう高校生かー

大学には行きたいのか?

ちょっとまだ早いわよパパ

あ、でも行きたいんなら行きたいって言ってね

美奈

正直大学行って色々勉強したいけど

美奈

うちにはそんなお金ないでしょ!

お金のことなら気にするな!

今はあんまりお金に余裕はないけど

お前が受験生になるころには

パパ大金持ちになってるはずだから!

美奈

実験期間と謝礼について...

美奈

この実験は子どもが18歳になる年の父の日まで行い、リタイアせずに最後まで行った家族には1億円を謝礼として渡す...

あぁ、そういうことか

パパは私の将来のために

家族が崩壊するかもしれないこんな実験に参加したんだ...

美奈

うっ...うっ...

視界が滲んできて、目の前が絶望の色で染まっていく。

冊子の開いていたページに涙が落ち、次のページの文字がうっすら浮かび上がった。

※家族が崩壊しても一切の責任は負いません

小さくそう書かれたページが最後のページだった。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

8

ユーザー

レナさん 読んでいただきありがとうございます! そうなんですか!? 知らなかった...😅

ユーザー

これスカットジャパン🇯🇵のパクリだ。でも面白かったです!

ユーザー

早速読んでいただきありがとうございます! 皆さまの予想を裏切れたようで嬉しいです😊 自分でもなんでこんな展開を思いついたのかわからないんですけどね笑

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