テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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銃口の先のエンディング

第148話 - 後日談　【上】

2025年03月07日

#一次創作

#ファンタジー

#冒険

#殺し屋

#人間関係

#日常

四阿朧

新しい王が即位することが決まった。

即位のその日、アメリアは城に出向き──…

…気分は？

アメリア

悪くないよ

自首した

私でさえ殺し屋アメリアの存在は知っていたが

…出頭、するような人間か？

アメリア

…違った

アメリア

だけどな、大切なことに…気持ちに、気づいてしまってからはさ

アメリア

殺しが怖いんだ

アメリア

仲間は無論殺せない。しかし今まで当然のように殺した民でさえ…

アメリア

脳をよぎり、私を責める。

アメリア

殺したい。殺せない。ゆるされたい。

アメリア

でも私は、ソイツらの顔さえ思い出せない。

アメリア

…こんな獣が、必要以上に情を得てしまってはもうダメだったんだ

…ヒトに、なってしまったんだな

まあ…処刑の時刻までは何もしまい

最期に頭に留めておきたいことでも考えておけ

アメリア

そうするよ

アメリア

気遣いをありがとう

そして、アメリアは死んだ。

メラ

…っぅぐ、う…っうぅ

サミュエル

…

サミュエル

これから…どうするの、メラは

メラ

言ったでしょ…？アメリア様が死ぬなら生きていけないの！

メラ

…メラは……死ぬよ、こんな世界なんて要らない！

メラ

そうだ、今ならまだアメリア様の銃があそこに…ふふ……

サミュエル

…メラ、待って

メラ

なに？

メラ

止めても…何も、変わんないよ

サミュエル

分かってる

サミュエル

…俺も行く

メラ

…そ

サミュエル

…ねえメラ

サミュエル

メラは…もし、今からでもまたアメリアに生きててほしいって言われたらどうする？

メラ

そんなの…っ分かんないよ

メラ

そんなこと、あり得ないんだから。

サミュエル

…

メラ

でも…っ言われたって、

メラ

そんなのってひどいよ。メラだってアメリア様に生きててほしかったのに。

サミュエル

…そう

サミュエル

俺はね

サミュエル

生きるつもりだよ。これからも…誰かにもし、死ねと言われたってね

メラ

…知ってる

メラ

じゃあメラ…行くよ、"あっち"に

そう言うとともに、メラは駆け出した。

おい！！コラ、誰だお前は！

メラ

うるさい！！邪魔しないで！

メラはそこに飛び込み、まずアメリアの死体をぎゅうっと抱きしめた

メラ

（…認めるしかない）

メラ

（アメリア様が死ぬつもりだってことは分かってたはずでしょ…っ！）

止まれ！

そしてアメリアの銃をバレないように掴み、その場から逃げる

サミュエル

…

そしてメラは引き金を引き────

カチ。

メラ

…あ、れ？

カチ、カチ。

メラ

弾が…入ってない、？

メラはハッとする

メラ

（嘘）

そして、バッと振り返った

メラ

…サミュエル？

そこに彼は、いない。

メラ

！

代わりに腕の側からカシャンと音がして、手枷が付けられる

…お前のことを調べさせてもらう。ついてこい。

メラ

（そうだ、アイツは───）

メラ

（…メラが死ねず捕まるってこと…見据えて…）

メラ

（…はは、逃げたのか）

メラ

（アイツはこれからもそうやって自由に生きるんだなぁ…）

サミュエル

…一緒に捕まるなんてごめんだよ

サミュエル

…

サミュエル

俺は今までだって…オーウェンさんの死も乗り越えて生きてきた

サミュエル

今更、後悔も罪悪感も何も…ないし

サミュエル

…

サミュエル

（…テヘルくんたちも…アメリアに続いて罪を償おうとしてる）

サミュエル

（…まぁ……もう、関係ないけど。）

サミュエルは城下を見下ろし、目を細める

サミュエル

…あの人、美味しそう

サミュエル

今夜は…あの人を食べよう。

テヘル

…なん……なんで？

…

アメリアの死を期に、殺し屋やならずものの自白が増えた。

近ごろ減少傾向にあったならずものたちがさらに、自死してしまったり自首してきたりしているわけだ

全てを諦めた者、新たな国への恐怖、己の罪悪感…アメリアはいろんな"きっかけ"を作ったね

しかし処刑を行うにも精神力や財力がいる

そして一番に、牢が足りない。時間が、足りない。

この国には罪が多すぎた。

全員を処するには…装置が足りないんだ。

お前の罪は無くならない。それでも、お前の罪にかけられるものがない

…だからお前の罪は、実質無効だ

テヘル

俺は人を…殺してるんだぞ！？

テヘル

おかしい…だろ、人の命を奪った者が、何も罰を受けないなんて…

…そうだな

だが調べたところ、故意ではないな？

それに殺しはその一件だけ。

お前に比べたら凶悪犯と呼べる者が、この国にはたくさんいるんだ

これは仕方ないことだ。自分で反省して…改心して生きてくれ

テヘル

…っそんなの……

理不尽だが…分かってくれ

私だってやむを得ない判断なんだ

今国が変わるために必要なのはお前への罰では無い

他にもっと…やらなければならないことが山積みなのだ

テヘル

…っ…そうかよ

アイザック

…どうするの？

テヘル

─────っ…、街に戻る…。

テヘル

俺に罪を償うことさえ許されないなら

テヘル

俺は…街に戻り、もし民から認められなくてもまた1から頑張るよ

テヘル

そしてあの街の経済を回し、繁栄させ、幸せな国を作る。その支えになる。

テヘル

それが…俺にできるこの国への最大の貢献だから──。

アイザック

じゃあ俺も───…

アイザック

…

アイザックはそこで言葉を止めた。

ミュール

…

ミュールが仲間から離れたのにはある理由があった

ミュール

…ふ、ぅ……

ミュール

（…私は人間ではなかった。）

ミュール

（それでもみんな、私に最大の"人間らしさ"をくれた。）

ミュール

（生まれてこられて…よかった）

ミュール

（…こういう結末になってしまうのは悲しいけれど仕方ないことなのね）

ミュール

（私たちは所詮…社会の"ならずもの"、殺し屋。）

ミュールはふと目を閉じる

ミュール

…きっと、そろそろ──

すると、静寂した辺りに、ピ、と機械的な電子音が響く

ミュール

（…私には皆様にもう一つ、秘密があった。）

ミュール

（────それは。）

ピーーーーー。

ミュール

（主様のいない私に、未来などないということ────。）

「強制終了プログラムを実行します。」

ミュール

…共に過ごした皆様に、幸福が有らんことを。

バン！！！！！

大きな爆発音がして、一面は煙に包まれる

そして二度と、ミュールが立ち上がることは無かった。

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