去華就実の風

そういって、にこっと笑う巫女様

……なんで、笑っていられるのですか

貴女様の、大切な方ですよ？

その人に、殺されるために

……今を、生きているのに

……少し、寂しそうに見えて

思わず、止めたくなった

だけど

クルトに呼び止められて、止まった

クルトも、寂しい顔をしていた

……あんな顔、出来たのか

誰よりも忠実な、蒼空らしい理由付けだった

そんなこと、言われてしまったら

頑張る以外の道がない

それが、一生の別れに聞こえて

思わず、呼び止めた

こちらを振り向く巫女様が

太陽に当てられ輝いていた

……どうして巫女様と未門様なのか

不意に、そう思った

こんな、拙い理由で

繋ぎ止めておけるものか

……理解してる

でも、それに抗いたかった

このまま会えなくなるなんて

考えたくも、無い

その返事を聞いて

内心、ほっとする

貴女様のお願いならば

必ず、叶えてみせましょう

……貴女は、もう十分頑張ったのだから

｢あの時みたいに、勝手に居なくならないでください｣

そんな言葉が、喉で詰まった

言ってはならない

言ったところで、無駄

巫女様は、意見を変えない

そしてなにより

きっと、悲しい顔をするから

ひらひらと手を振って去っていく巫女様達

長いようで短いような

過去に戻ったような感覚のする

そんな、夢のような時間に

幕が降りた、瞬間だった

そういって、真剣な眼差しでボクを見る風魔

辺りは段々薄暗くなってきて

風も少し、冷たかった

まぁ、十中八九2代目様関連だと思うけど

歴代最強の巫女、2代目様に仕えた神の使い

その神の使いが、出来ないかもなんて言うことって

一体どれほど大きい用事なんだ…？

うーむ

白刀･白雪…

あれがもし贋作ならば

本物なんて見つけられるわけ…

そもそもの話、八大陸にあるかすら分からないのだ

……いや、どっちかというと猫っぽい

そういって、風魔は笑った

……なんか、作り笑いっぽいけど