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ナンパ男の秘密

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ナンパ男の秘密

22 - 相思華

♥

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2022年04月19日

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ミサ

今日は彼と付き合って3年目の記念日だ

ミサ

これより今夜の夕食のリクエストを開始します

ユウト

ハンバーグとかオムライス!

ミサ

そう言うと思ってた

ミサ

相変わらず味覚はお子様なんだから

ユウト

とか言って、食材はもう揃えてるくせに

ミサ

どうしてわかったの?

ユウト

んー、透視能力使ったから

ユウト

ただし、俺が覗けるのは冷蔵庫だけだから

ミサ

なにそれ、ふふっ

ユウト

土産買って帰るよ

ミサ

楽しみに待ってる

ユウト

今夜ミサに大切な話するから

ミサ

大切な話?何?

ユウト

秘密。じゃ!

ミサ

大切な話って言ったら……あれしかないよね

私がずっと待っていた言葉への期待に胸が高鳴った

二時間後

ピンポーン

ミサ

おかえりなさい

ユウト

ただいま

ユウト

お。オムライス美味そうだな

ミサ

ちょっと形が歪になっちゃたけど

ユウト

気にすんな。形なんて関係ないさ

ミサ

良かった

ユウト

あ、俺からも……ほい、お土産

ミサ

ワインだ!ありがとう

ユウト

それと食後のデザート用にこれも

ユウト

この店のフルーツタルト好きだっただろ?

ミサ

うん!じゃあ早速食べようか

ユウト

おう!

一時間後

ミサ

3年ってあっという間だよね

ユウト

だなー

ミサ

私が会社の書類を電車に置き忘れて

ミサ

それをユウトが駅員室に届けてくれたのがきっかけだったね

ユウト

あの時のお前の顔、忘れられないわ

ミサ

そんなにひどい顔してた?

ユウト

しばらく俺の夢に出てきて睡眠不足になるくらいは

ミサ

えー、ひどい

ユウト

冗談だって。でも夢に出てきたのはマジ

ユウト

必死なところがかわいいなって思ったんだ

ユウト

だから礼をしたいからって言われて連絡先交換した時、

ユウト

心の中でガッツポーズしてた

ミサ

私は純粋にお礼がしたかったのに、下心満載だったのね

ユウト

下心じゃない。一目惚れっていう立派な恋心だ

ミサ

ふふっ……ふわぁ……ごめん

ユウト

眠いのか?

ミサ

ワインの酔いが回ってきたのかな?

ユウト

俺のせいだよな

ミサ

違うよ。私が飲み過ぎたせい

ユウト

いや、俺のせいなんだ。ごめん

ミサ

……ユウト?

ユウト

手放せないものなんて絶対ないと思ってたんだけどな

ユウト

子供の頃の夢も、入りたかった大学も、会社も

ユウト

叶わなくても簡単に手放せたのに

ミサ

私は苦手。しがみついちゃうタイプ

ユウト

はは、ミサは確かにそうかもな。でも……

ユウト

簡単に手放せるから大切じゃないってことじゃない

ユウト

全部が全部、大切なのは本当のことだから

ミサ

私のことも?

ユウト

ああ、もちろん

翌朝

ミサ

ん、朝……? っ、ユウト!?

ミサ

隣で寝ていたはずなのに、どこに?

ミサ

……なんだろ、不安で胸が苦しい

シャー……

ミサ

シャワーの音?お風呂か……良かった

ミサ

……左手の薬指に指輪?……あ、そうか

ミサ

眠る前、ユウトが結婚しようって言ってくれたんだ

ミサ

ふ……うっ……涙……どうして?

ガチャ

ユウト

どうした?

ミサ

わからないの。どうして泣いているのか

ミサ

……ユウトっ

ユウト

はいはい。よしよし

ユウト

泣き止めって、ミサ

ユウト

じゃないとプレゼントあげないぞ?

ミサ

……プレゼント?

ユウト

それは秘密だ

ミサ

ならいらない。ユウトさえいてくれればそれでいい

ユウト

……ミサ

ユウトは困ると少し眉が下がる

その顔が好きで時々わざと困らせたりした

困り顔だけじゃない。笑うとクシャってなる笑顔も

――全部全部好きだった

ユウト

笑って、ミサ。頼むよ

ミサ

……っ

いつもならずっと見ていた困り顔だけど今日は違う

何かが動き出す予感がした

きっと私たちにとってそれはとても大切なこと

ミサ

わかった。もう泣き止むから

ユウト

なら、ご褒美のプレゼントあげなきゃな

ミサ

……うん

ミサ

やっぱりその笑顔が一番好きだと思った

数時間後

ミサ

どこに行くの?

ユウト

それは秘密だってさっきも言っただろ?

ミサ

もー、今日は秘密ばっかりじゃない

ユウト

今日だけじゃないよ

ユウト

俺はずっと秘密にしていたことがある

ミサ

……え?

ユウト

大切だから、手放すことを決めたんだ

ミサ

何言って――

ユウト

着いたよ。ここに一緒に来たかったんだ

ミサ

彼岸花……畑?

血のように真っ赤に広がる世界に背中がゾクリとする

ユウト

きれいだな

ミサ

……きれいだけど、なんか怖い

ユウト

怖くなんてないさ。ここ、見てごらん

ユウトが指さす先には一輪だけ白い彼岸版が咲いていた

ユウト

これが俺からのプレゼントだ

ユウト

ミサにはこれからもっと幸せなことが待っている

ミサ

ユウト?

突然視界が揺らいで目の前のユウトがぼやけ始める

ミサ

待って、ユウト……行かないで!

白く光って消えゆくユウトに手を伸ばす

ユウト

はは。その必死な顔、やっぱかわいいわ

ユウト

だから、お互い手放そう

ユウト

大切だから、思い出の中で生きるのはもうやめよう

ミサ

嫌よ、行かないで。ずっと傍にいるって言ったのに!

ミサ

無理、出来ない。手放すことなんて、出来ないよ……っ!

ユウト

大丈夫、出来るよ。ミサにだって

ミサ

――逝かないで、ユウト!!

濡れた瞼を開けると、彼岸花達が私を優しく迎えてくれる

そうだった。彼はもう……この世にはいない

恋人になって3年目の記念日の夜、

私のマンションに来る途中の事故だった

見知らぬ男性

……ハンカチ貸しましょうか?

ミサ

え?

見知らぬ男性

ぼーっとしながらここへ来たら突然泣き始めたので

見知らぬ男性

……声をかけようか迷ったんですけど

同い年くらいの見知らぬ男性が顔を赤くしながら

私にハンカチを差し出してくれる

ミサ

……すみません

ミサ

彼岸花があまりにもきれいだったので

見知らぬ男性

本当にきれいですよね

ミサ

大切な人が来たいなって言っていた場所なんです

見知らぬ男性

なるほど

ミサ

私、ずっと夢の中にいたんです

ミサ

幸せでずっとそこにいたいって思うくらいに

見知らぬ男性

……?

訪れることのなかったあの時間を何度も何度も繰り返して

困らせていたんだろうな、あの人のことを……

ミサ

あの、質問してもいいですか?

見知らぬ男性

……僕で答えられることなら構いませんが

ミサ

もう会えない人のことを思い続けることは辛いことでしょうか?

見知らぬ男性

彼岸花みたいな愛し方もありますから

ミサ

彼岸花みたいな愛し方?

見知らぬ男性

彼岸花は花と葉が同時に出ることはないんです

見知らぬ男性

――葉は花を思い、花は葉を思う

見知らぬ男性

だから相思華とも呼ばれているんですよ

ミサ

相思華……きれいな名前

見知らぬ男性

二度と会えなくても、そこにはちゃんと愛がある

見知らぬ男性

ちなみにあなたの足元に咲いている白い彼岸花の花言葉は

見知らぬ男性

「思うはあなたひとり」、「また会う日まで」

ミサ

……っ

見知らぬ男性

彼岸花のような愛し方を悲しいと思う人もいるかもしれない

見知らぬ男性

でも、僕は好きですよ。それも立派な愛の形だから

いつまでも君を思っている。また会う日までどうか幸せに

ユウトがそんな風に言っている気がした

見知らぬ男性

では、僕はこれで

ミサ

あのハンカチは……

見知らぬ男性

いらなかったら捨てて下さい

ミサ

だったら、お礼させてください!

ミサ

あ、これからお茶とかどうでしょうか?

見知らぬ男性

……実はもっとあなたと話がしたいなって

見知らぬ男性

思っていたから嬉しいです……はは

見知らぬ男性

……って、別に下心はありませんから!

ミサ

ふふっ。ええ、わかってます

いつかまた会えたら、胸を張って伝えたい

……とても幸せな人生だったよって

プレゼント……ちゃんと受け取ったよ、ユウト

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