茜
(さっきからずっと男の人がついてきている)
茜
(誰もいない暗いところで)
茜
(男の人に後ろを歩かれてるのって)
茜
(何だか怖い…)
茜は背後にいる誰かに恐怖を感じ
足早に歩き出した
茜
(ウソでしょ…)
茜
(男の人が歩くペースに合わせてきた)
茜
(怖いよ…)
茜
(逃げなきゃ…)
茜が後ろにいる誰かに恐怖を感じ
その場から走り出したそのとき
顔をマスクで隠した男が茜の肩を強くつかんだ
茜
いや!何するの!?
茜
あ…あなたは誰?
通り魔
別にあなたじゃなくても良かった
通り魔
人を殺せれば誰でも
男は茜にそう言うと手にした包丁を振りかざし
逃げようとする茜の体を何度も刺した
茜
(苦しくて、体中が痛い…)
茜
(どうして私がこんな人に)
茜
(殺されなくちゃならないの…?)
通り魔
人を刺す感触ってこんな感じなんだ
通り魔
血がたくさん溢れてくるんだ
通り魔
人間ってこうやって死んでいくんだ
通り魔
もっと刺さなきゃ…
通り魔
もっと刺さなきゃ…
茜
(こんな死に方じゃ、死んでも死にきれない…!)
茜
(殺されるのは誰でも良かったのに!)
茜
(世の中の理不尽さを私は呪ってやる…!)
女子高生だった茜は通り魔に刺し殺された
だけど茜は死んで肉体を失っても世の中の理不尽さを憎み続けた
いつかの日か世の中に復讐すると誓って
芳江
千秋すごいね!
芳江
今回の中間テストも一番なんて
千秋
来年は受験だから
千秋
今から頑張らないとね
芳江
千秋は勉強でもスポーツでも何でもすごいから
芳江
本当にうらやましいよ
千秋
そうかなぁ
千秋
自分ではよくわからないけど
有希
(千秋がまた学年トップなんだ)
有希
(千秋って何にでも恵まれていて私は嫌い)
有希
(神様は絶対に不公平だよ)
有希
(どうして千秋ばかりに)
有希
(幸せをあげるんだろう)
勝
有希、いいとこに帰ってきたな
勝
ちょうど酒がなくなったんだ
勝
今すぐ買ってこい
有希
また仕事にも行かないで
有希
明るいうちからお酒を飲んでるの?
有希
うちにはお金なんてないし
有希
借金だってあるのに…
勝
オレは楽しく酒を飲んでるんだ
勝
つまらねぇことを言ってんじゃねぇよ
有希
私だって毎日バイトしてるのに…
有希
お父さんなんかよりずっと働いてるんだよ!?
勝
仕事が何だよ
勝
あんなにつまらねぇことやってられるか
有希
お父さんがそんなんだから
有希
お母さんはここから出て行ったんだよ!
勝
オレに意見するんじゃねぇ!
勝は有希を怒鳴るとコップを有希に向かって投げつけた
そしてそのコップは勢いよく壁に当たって割れてしまった
勝
子供のくせに偉そうにするんじゃねぇ
勝
お前なんかにオレの何がわかる
有希
もういいよ…
有希
お父さんには何を言っても無駄だから
有希
(早くこんな家から出て行きたい…!)
千秋
有希さん
有希
…千秋さん!
千秋
こんな遅い時間に会うなんて偶然だね
千秋
何してたの?
有希
…バイトの帰りだよ
有希
居酒屋でバイトしてるんだ
有希
千秋さんは何してたの?
千秋
私は塾の帰り
千秋
来年受験だし頑張らなきゃ
千秋
有希さんは塾に行かないの?
有希
…私は行かない
有希
進学もしないと思う
千秋
そうなんだ?
千秋
うちの学校じゃ珍しいね
有希
…私、勉強とか好きじゃないし
有希
働く方が自分に合ってるよ
千秋
え~私は十代のうちから働きたくないなぁ
千秋
進学した方が自分の可能性って広がると思うし
有希
…そうかもしれないけど、私はいい
千秋
ふーん。大変だね
有希
千秋さんだってこんな遅い時間まで勉強なんて、大変でしょ
千秋
大変だけど、その先に幸せが待ってるから
千秋
今度のテストの成績が良かったら
千秋
お父さんが旅行に連れてってくれるの!
千秋
楽しみなんだ
有希
ふーん…
有希
よかったね
千秋
あ、電車来ちゃった
千秋
有希さん、それじゃ
千秋
また明日学校でね!
有希
(私は千秋が大嫌い)
有希
(自分だけ幸せで)
有希
(私の気持ちになんて少しも気づかなくて…)
有希
(進学した方が自分の可能性が広がるって)
有希
(私に嫌味でも言ってるの?)
有希
(自分でもわかってるよ!)
有希
(私の未来には何の可能性もないって…)
有希は誰もいない学校で2年3組の教室に向かっていた
有希
(千秋に嫌がらせしてやるんだ)
有希
(千秋の私物をめちゃくちゃにして)
有希
(千秋の机に落書きをして…)
有希
(…でも、どうせこんな事したって)
有希
(千秋に私の気持ちなんて伝わらないだろうけど)
有希が夜の教室に忍び込み
千秋の私物にいたずらしようとしたとき
有希は背後に人の気配を感じて振り返った
有希
…!?
有希
(だ、誰かいる…!)
茜
あなたから不幸の匂いがしてくる
茜
私と同じ匂いがしてくる
有希
…!
有希
あ、あなた誰?
有希
どうしてここにいるの?
茜
私の名前は神野茜
茜
三年前まで、ここのクラスの生徒だった
有希
神野茜って、まさか…
茜
あなたは私のことを知ってるの?
有希
し、知ってるもなにも…
有希
三年前、通り魔に刺し殺された
有希
うちの学校の生徒だよね…?
茜
殺されるなんて思ってなかった!
茜
あの日の理不尽さを私は絶対に忘れない…
茜
誰でもいいから私の怒りをぶつけたいの…!
有希
(ほ、本物の幽霊だ…!)
有希
(怖いけど…でも、それ以上に)
有希
(茜さんの気持ちが分かってしまう…)
有希
…その気持ち、私もすごくわかる
有希
世の中って理不尽で不公平だよね
茜
刃物でめった刺しにされる苦しみを
茜
他の誰かにも味合わせたい
茜
私だけが不幸だなんて絶対に許せない
有希
…ねぇ
有希
茜さんの怒りをぶつけられる人を知ってるよ
有希
その人はお金持ちで勉強もすごくできて
有希
自分が世界で一番幸せだと思ってるんだ
有希
そんなのって不公平でしょ?
茜
…………
茜
そうだね
茜
不公平は絶対に許せない
有希
茜さんの怒りをそいつにぶつけて!
有希
私は千秋に…
有希
理不尽を教えたいの!!







