ボク
ん?
ボク
ボクの心臓が見たい?
ボク
どして?
ボク
……
ボク
ふふっ
ボク
見せてあげるよ、ボクの心臓
ボク
見てて
ボク
ボク
ちょっと手首を深く切りすぎたかな?
ボク
まあいいか
ボク
この傷の隙間から引きずり出すんだよ
ボク
ほら、出てきた
ボク
これだよ、ボクの心臓
ボク
黒ずんでてどろどろなボクの心臓
アタシ
ん?
アタシ
アタシの心臓が見たいって?
アタシ
どうして?
アタシ
……
アタシ
まあいいけど
アタシ
ちょっと待ってて
アタシ
アタシ
このノコギリで頭を切るんだよ
アタシ
やってみて
アタシ
……上手いね
アタシ
ちょっと嫉妬しちゃうくらい
アタシ
なぁんてね
アタシ
どう?出てきた?
アタシ
……だろうね
アタシ
心臓なんて無いよ
アタシ
アタシは空っぽだからね
僕
それで?
僕
僕の心臓を見に来たの?
僕
僕の心臓は生憎と見せられる物じゃないんだ
僕
ごめんね
僕
……
僕
そんなに言うなら……
僕
……僕の心臓は、
僕
僕自身だよ
僕
意味が分からない?
僕
……例えるならそう、
僕
僕という存在自体が心臓なんだ
僕
僕を否定されれば心臓はダメージを受けるし
僕
体を傷つけられても心臓はダメージを受けてしまう
僕
僕の心臓は他の人の心臓より
僕
弱いんだよ
僕
他の人は心臓を液体にして
僕
酷い言葉を全部受け流したり
僕
心臓をからっぽにして保護したりするんだ
僕
けれど、僕にはそれができない
僕
心が剥き出しで
僕
少し刃物が触れるだけで激痛に喘ぐ
僕
吐きそうだよ
わたし
ねえねえ
わたし
あなたの心臓を見せて?
わたし
どうしても見たいの
わたし
ああ、包丁がいるのね
わたし
わたしのでよければ使って?
わたし
それで、どうやって見せてくれるの?
わたし
わたし
……すごい
わたし
あんなに深く胸を裂いていたのに
わたし
心臓には傷ひとつない
わたし
…普段からよくやってるの?
わたし
そう、普段は他人の心臓を……
わたし
……え?
わたし
わたしの心臓を見せて?
わたし
ふふっ、いやーよ
わたし
だってあなた、盗っちゃうんでしょ?
わたし
…まあ、ちょっとだけならいいよ
わたし
その包丁、返して
わたし
わたし
…っ、はぁ
わたし
わたし、このお腹を開く作業、嫌いなのよね
わたし
心臓を傷つけちゃうんじゃないかって、不安だから
わたし
さて、これがわたしの心臓よ
わたし
え?思ってたのと違う?
わたし
心臓の形は十人十色、千人千色なんだから
わたし
自分の心臓と同じわけないでしょ?
わたし
……あはは、変な冗談を言うのね
わたし
わたしの心臓が胎児に見えるだなんて