屋上。
彼女の柔軟剤の香りと思しき石鹸のにおいが、
夕焼けをバックに充満している。
留威
……で?俺に何の用すか?

彼女は部活の後輩。
モテるらしいが、そんな彼女が何故俺を呼んだ?
茜
え、えと!留威さん。

茜
私、あなたに一目惚れしました。

留威
はい。

茜
そ、その……付き合ってください!

留威
…すみません、俺はそんな簡単に彼女を作らない主義なんすよ。

留威
ましてや、あんまり話したことない相手なら無理っす。

留威
ごめんなさい。

茜
…………

石鹸の爽やかな匂いに合わない、重苦しい雰囲気。
早く逃げたい。
茜
何でですか?

留威
…え?だから、そんな簡単に彼女を作らないって…

茜
私はこんなに先輩を好きなのに?

茜
他の誰よりも好きでいるのに??

茜
それなのに……?

留威
…は?

「鈍感」というあだ名をつけられている、この俺でもはっきり分かる。
先程と空気が違う。
茜
私、先輩に一目惚れしたのは結構前なんですよ。

茜
まだ、入学したての一年生の時です。
その時、かっこいい先輩をみて一瞬で確信したんです。

茜
この人こそ、私の運命の人だと!!!!!

茜
そこからはもう大変でして、整形やメイクやヘアアップは先輩好みにしたんですよ?

茜
一から全部調べ通して!!

留威
………通りで…

茜
部活も勿論同じテニス部に入りましたし、あの忌まわしき女子共よりもたくさん先輩とお話ししましたよ?

茜
お話しだけじゃ先輩は全然知れないので、こっそり尾行もしちゃったんですよね〜

茜
先輩!!駅前のカフェに寄るのが日課らしいですね?

知られてる。
前偶然会ったのも、偶然じゃなかった。
留威
あ…………

茜
ふふふふふふふふふふふふふふ…!

茜
その顔、もっと見せてくださいよぉ…?

茜
どんな顔でも、私は大好きですからぁ………っ!!

留威
う…うわぁあっぁ!!!
