過去に囚われた君に

静かになった広場にて、 1人が紅茶を机に置いた

急に話しかけられて驚いたのか 慌てたような様子を相手が見せる

こちらが目を細めて笑ったような 表情をすると、相手もにこりと返す

女が男に顔をずいっと近づけると 男は後退りをした

そうしてずいっと迫った瞬間、 後ろから扉の開く音がした

すると女は立ち上がり

そう言ってまたにこにこと したまま広場を出ていった

男は困ったように頬をかいた

あれ、ちょっと反応おかしくないか？

自分でなんか作るって言ったのに…

この館のキッチン、 ある程度食材は揃ってるみたいだし

そう喋りながらキッチンに行き、 野菜の入ったダンボールを見ると

いや、間違いないな

しかも俺は記憶力に自信ある方だし…

昨日も見たはずなんだ。

この野菜、昨日までなかった…

広場の方へ向かい大きな声を出すと、 呼んだ相手は走ってきた

名前を伝えると、柊良は 苦笑を浮かべた

柊良くんは芸能人だったからね、 ファンの中にも色んな種類の人が居たんだ

話を聞き相槌を打ちながらも テキパキと手を動かすが、

それってさ、そう言おうとした瞬間 扉が空いた為口を閉じた

噂をすれば糸橋くん…

こう見ればただの陽気な青年だが…

問題は、何を隠しているのか

まぁそれは糸橋くんに限らず

この館にいる全員だが…

広場の方を指さすと、青年は 歩いていくが

青年の抱き上げていた猫は 腕からするりと抜け、この場に留まる

柊良が猫を撫でているのを見て、 独り言のように呟く

すっ、と二つ渡すと にっこりとしながら広場に出ていく

直後、広場から平の悲鳴が 聞こえたが どうせ柊良がなんかやったんだろう

柄木くんと糸橋くんはたしか 昨日の深夜から今日の早朝にかけて

広場に居たはず…

広場にて

ここから出るための事なら、 なんだってやってやろう