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次に目を覚ました時雨は止んでいた
代わりに聞こえてきたのは規則正しく刻まれる時計の音とさらさらと紙をめくる音
与謝野
与謝野
視線を向けるとボブヘアに大きな蝶の飾りをつけた女性がカルテを片手に椅子に座っていた
凛
与謝野
与謝野
与謝野
与謝野先生は私の額に手を当て、熱を測るように優しく微笑んだ
その手は驚くほど温かくて雨の中にいた私の体温を少しずつ呼び戻してくれる
与謝野
与謝野先生の表情が医者としての真剣なものに変わる
与謝野
与謝野
与謝野
凛
凛
自分の存在が少しずつ削り取られていく恐怖
私は布団を握りしめ、震える肩を抱いた
このまま自分が何者かもわからないまま空っぽの人形になってしまうのではないか
そんなことを思っていると控えめなノックの音がして扉が少しだけ開いた
敦
入ってきたのは白髪の少年だった
彼は私と目が合うとお盆を抱えたままあわあわと頭を下げた
敦
敦
私は首を横に振った
彼は安心したような表情で自己紹介を始めた
敦
敦
彼はベッドの脇にお粥を置くと心配そうに私の顔を覗き込んだ
敦
敦
凛
敦
敦くんの真っ直ぐな言葉
それは残酷な診断に対する彼なりの精一杯の言葉だった
与謝野先生も「ふん、生意気云うようになったじゃないか敦」と苦笑しながら私の背中を優しく叩いた
与謝野
与謝野
与謝野
私は差し出されたスプーンを手に取った
一口食べたお粥は温かくてほんのりと出汁の味がした
凛
名前のない私に初めて与えられた「今」という実感
けれどこの温かささえいつか忘れてしまうのだろうか
そんな不安を抱えたまま私はお粥を一口ずつ大切に飲み込んでいった
コメント
2件
敦くん優しい… 記憶が徐々に無くなる異能力… パピコォォォさんの発想力すごすぎます✨