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風のように走った。

何なら、何事も無かったように、

消え去ってしまいたかった。

ただ、無事でいてと、

見開いた目に砂埃が突き刺さっても、

ただ、走り続けた。

イヴィ

───────!!!!

ロック

なっ!?

焼け野原だ。

逃げ惑う人々が、身体にぶつかる。

リエル

そん…な……

その熱気と、焦げ臭さに戦慄する。

町民

……たっ

町民

助けてくれ!

クランツ

落ち着け、何があった

町民

ね、寝返ったんだ…

町民

王に不満があるヤツらが!

イヴィ

シュバルツ……

町民

それに便乗して、変なヤツらも俺達を殺そうとしてきたんだ!

リエル

「変なヤツら」?

町民

バケモンだよ…俺達には理解もできない芸当さ!

クランツ

…もしかすると

クランツ

魔術結社かもしれない

イヴィ

イヴィ

(レーツェルが言っていた、時間稼ぎ…!)

ロック

ふ、ファーブラさんは無事なのか!?

イヴィ

イヴィ

(俺達は……何をすれば…)

心のどこかでは、いつかこうなると思っていた。

だけど、それはどこか他人事のようで、

信じるしかない状況なのに、

頭がそれを拒絶している。

それに圧迫された思考回路では、

冷静に物事を考える隙などあるはずがない。

クランツ

…まずは、避難誘導

イヴィ

クランツ

市民の命が最優先だ

兵士

クランツ様!!!

ディアベル

兵士かァ

クランツ

みたいだな

クランツ

市民の避難誘導を頼みたい

クランツ

シェルターの場所は把握しているな?

兵士

はい!

兵士

それと、ウォルフの方々に…

兵士

団長より、伝令がありました!

ディアベル

ファーブラさんからァ?

ディアベル

王サマからじゃねェのか

兵士

はい、団長からのご指示です

ロック

もしかして、それすら出来ない状況なんじゃないか!?

リエル

それは、そうですね…

兵士

それでは、お伝えします

兵士

“この惨状は、王の暴走と

兵士

魔術結社によって招かれた。

兵士

市民を護り、己を奮え、そして───

兵士

‘’殲滅せよ”

瞬時に、空気が張り詰めた。

リエル

殲滅…!?

兵士

はい

兵士

部隊の方々はもう戦っています

イヴィ

……

クランツ

…分かった

イヴィ

実感が湧かない。

クランツは後方のウォルフに向けて指示を放つ。

クランツ

ウォルフ軍へ命令!

クランツ

班ごとに定位置へ向かえ!

クランツ

この場にいる救護隊は団兵と市民の治療を!

クランツ

王様と団長の無事が分かるまで、報告は俺にしろ!

クランツ

魔術結社に対処しながら、王様が避難される場所に行くんだ

兵士

はっ!!!

一目散にウォルフ軍や他の軍も移動を始めた。

クランツ

俺は団長の方に向かう

イヴィ

だが……

イヴィ

シュバルツは?

クランツ

今は、何を優先するかだ

リエル

それこそ、命令に背くことになります!

クランツ

…いいさ、それで打首なら、本望だ

それから、

ディアベルはクランツと共にファーブラの元へ。

リエルは、救護班と共に市民の元へ。

イヴィ、ロックは部隊が戦闘している所へ向かった。

イヴィ班

家だった物を注意深く見ながら、騎士、兵士の元へ走り続けている。

イヴィ

(───どこもかしこも)

イヴィ

瓦礫の山だな…

ロック

大丈夫、まだ生きてる人はいるぞ!

イヴィ

イヴィ

すまない

ロック

ん?

イヴィ

もっと早く、気づけばよかった

イヴィ

…クランツに「罠」かもしれないって、言えば………

ロック

過去は過去!

ロック

悔やんでたって仕方ない!

ロック

今大事なのは、未来だ

イヴィ

ロック

反省会はその後でしようぜ!

イヴィ

…ああ

イヴィ

そうだな

イヴィ

(…敵わねぇな)

ピカッ

その時ほんの一瞬だけ、

さながら花火のように、そらの煙がハッキリと見えた。

イヴィ

ロック

伏せろ!

何かを察知したような顔をして、ロックがイヴィと共に地面に伏せる。

イヴィ

ロック

……

ゴロゴロッ!!!

大して秒数が経つ前に、空気を切り裂くような音が聞こえた。

イヴィ

(この雷は、まさか……)

ロック

近いぞ

ピカッ

ロック

っさせねぇ!!

バチィッ

火花のようなものが舞う。

エクレール

久しいな

エクレール

イヴィと、ロック

エクレール

若きウォルフの子ら…

イヴィ

エクレール、だったか?

エクレール

ふむ

エクレール

ファーブラ「さん」にでも言われたか

イヴィ

「さん」?

エクレール

…言ったとて、支障はないか

エクレール

ファーブラさんは、俺の上司だ

ロック

上司……?

ロック

ってことは!

イヴィ

エクレール

そう

エクレール

あの方は元々、魔術結社の人間だったのだ

イヴィ

!!!?

ロック

あの人が!?

「デタラメ」だと、「そんなことは無い」と、

ここで切り捨てることができたら良かった。

だが、その言葉を出そうとする度に、彼の優しい声色から薫る、

支配者、冷酷、残忍な雰囲気を、

拭うことができなかったのだ。

エクレール

あの方は

エクレール

オーダー様と共に、魔術を世に知らしめた

エクレール

だが、いつからか狂ってしまったのだ

イヴィ

狂う?

イヴィ

狂ってんのは、お前らの方だろ

エクレール

我々にも正義がある

エクレール

あの方は、間違った正義に手を出した

エクレール

…そして、組織ごと全てを破壊しようとしたのだ

ロック

教科書とかでもあったぞ!

ロック

「魔術結社と戦った」って!

ロック

もしかしてそれのことなんじゃないか??

イヴィ

…有り得る

エクレール

それだけしか載っていないだろう

イヴィ

エクレール

あの方によって

エクレール

詳細は全て、消し去られた

エクレール

貴方らはそのような悪魔の元で転がされていたのだ

イヴィ

戯言だ

エクレール

部下が言うのだから、間違いない

ロック

俺はファーブラさんを信じるぜ!

エクレール

ほう?

ロック

多分、皆あの人に助けられてんだ!

ロック

魔術で歴史は変えられる

ロック

でも、その人自身の心は変えられないだろ?

ロック

だから、皆あの人に着いてくんだ!

イヴィ

……ロック…

イヴィ

(非の打ち所が全くない)

エクレール

…流石、あの方だ

炎が踊る音がよく聞こえる。

エクレール

あのまま抜け出していなかったらと、今も考える

エクレール

きっと、オーダー様と並んで、魔術結社を指揮していたに違いない

エクレール

ただ何も無かったあの方でよかったのだ

エクレール

…何処で、毒されたのだろうか

エクレール

悪いが俺は、オーダー様の所へ向かわねばならない

焦げた地面に背を向け、城へ歩き出す。

エクレール

ウォルフの子らよ

エクレール

貴方らが憧れたお方は、本来なら手の届かない人間だ

彼らの、投げ出された身体を、後にして。

リエル

!!!

どいてっ!!!!

うるせえな!

命かかってんだぞ!!

私もよ!!

開けて!!

ここを開けて!!

リエル

酷い…

引きちぎれそうな顔で叫ぶ人々が、

シェルターの前にごった返している。

リエル

(仕方がない、私だって冷静になれていない……)

リエル

…失礼します

ウォルフじゃない!

リエル

お待たせしました

リエル

少し入らせてもらっても?

ふざけたこと抜かすな!!

死んじまったらどう責任取るんだ!

リエル

そうですね

リエル

それでは

リエル

これでいかがでしょう?

「アンコーリオ」

瞬く間に結界が張り巡らされる。

その壁は荒れ狂う炎を断ち切った。

熱気を遮り、息のしやすい環境となる。

なっ

リエル

…この中に入れば安全です

リエル

さあ、治療を

…あ、ありがとう

リエル

一度救護班と合流してきますね

た、頼むぜ…

リエル

任せてください

扉に手をかける。

リエル

……ッ!!

リエル

ケホッ

その腕に、紅が差した。

リエル

(……使い所は、見極めなくちゃ…)

リエル

こ、こんなにいるなんて……

リエル

(考えないようにしていたけれど)

リエル

(これは戦争なのですね…)

救護隊

ウォルフのリエルさんね?

忙しなく動いていた救護隊の一人が話しかけた。

リエル

はい!

救護隊

心強いわ、さっそく手当に加わってくれる?

リエル

分かりました

リエル

……あの

周りを見渡し、何かに気がつく。

救護隊

何かしら?

リエル

この数の患者に対して、救護隊員が少ないような気がするのですが…

救護隊

…仕方がないのよ

救護隊

この国の何処も似たような状況ですもの

リエル

そう、ですか…

リエル

(いつどのような患者が来るか分からない以上)

リエル

(救護隊はここを離れる訳にはいかない)

リエル

ここの治療を終えた後、他のシェルターにも移動した方が良さそうですね?

救護隊

その方が助かるわ

救護隊

あなたは大丈夫?

リエル

任せてください!

リエル

(私には、私のできることを…!)

────い、痛い…

その時、一人の兵士に担がれて負傷者がやってくる。

リエル

救護隊

あの人のとこいける?

リエル

ええ

リエル

どこが痛みますか?

が、瓦礫が…足に!

リエル

これは折れていそうですね

まったく、動かないんです……

リエル

ご心配なく

リエル

すぐに良くなりますよ

リエル

──「アンコーリオ」

患部が光で包まれたかと思えば、

足は元の形状に戻っていた。

え!

も、元に戻ってる!?

しかもそれ、魔術ですよね…?

リエル

ええ

リエル

ほら、使用許可証…免許もありますよ

リエル・ソンブラ…

え!

お姫様じゃないですか!

リエル

ケホッ…

リエル

ふふ、まあそんなところです

そんな、大丈夫ですか?

リエル

勿論、私が目指していたものなので

っ違うんです!

リエルの言葉が遮られる。

リエル

…?

聞いた事、あるんです

噂程度ですけど

リエル…さんの父親が、入隊を反対した理由

…リエルさんが────

ディアベル

────焦ってんのか?

イヴィ達がエクレールと接敵する前。

ディアベルとクランツは、城の方向へ走っている。

辺りがなびき、風を切る音が聞こえるほどの速度だ。

クランツ

…集中しろ

ディアベル

ふーん

クランツ

…はあ

視線に耐えかねたクランツが大きく息を吐く。

クランツ

俺は、団長に恩がある

ディアベル

クランツ

だから、少し急いでいるだけだ

ディアベル

そォかい

ディアベル

…!

ディアベル

止まりなァ

火の粉と煙が漂い、視界も定かではない中、

ディアベルはクランツを止める。

クランツ

何か見つけたか?

ディアベル

血の匂いがする、近くで戦ってるぜ

クランツ

…土埃と煙で分からんぞ

ディアベル

無駄に傷を負いたくないなら歩きなァ

クランツ

…団長が

食い入るように、少し強い口調でクランツが言う。

余裕のなさが顔に現れていた。

ディアベル

あんな奴らには負けねェよ

ディアベルはきっぱりと、しかしどこか言い聞かせるように言い切る。

クランツ

…そう、か

ディアベル

……

ディアベル

俺も、ファーブラさんにはお世話になったなァ

クランツ

…人狼の血を継いでるんだったか?

ディアベル

あァ

ディアベル

小せェ頃、襲いかかったのがファーブラでよかった

クランツ

そういえば、強制的に人狼化させられた時、何故元に戻れたんだ?

ディアベル

…まあ記憶がボヤついてんだが

ディアベル

あれはなァ

ディアベル

リエルの魔術のお陰かもな

クランツ

ソンブラの魔術…

クランツ

そういえば見たことがない

ディアベル

見れないっつーか

ディアベル

使い所が限られんだよ

クランツ

俺の魔術みたいなか

ディアベル

かもな

ディアベル

あんま易々と魔術について開示するのはあれなんだが

ディアベル

知っといた方が役立つよなァ

クランツ

…教えてくれ

ディアベル

(明日があるかも分かんねェから……)

ディアベル

その方がいいか

ディアベル

リエルの魔術は「やり直し」だ

ディアベル

対象を過去の状態に戻すことができるヤツだな

クランツ

どんなものにでも効くのか?

ディアベル

そォだよ

クランツ

使い所しかなくないか、それ

ディアベル

まァそれはそうだ

ディアベル

やりようによっては、死人すら生き返るな

クランツ

一歩間違えれば脅威になってしまうな

ディアベル

だがまァ、代償と言うべきか

ディアベル

ちと厄介な所もあってなァ

クランツ

何だ?

ディアベル

アイツ、魔術を使うと拒否反応でんのよ

ディアベル

使われる場合もなァ

クランツ

そうか…

クランツ

ならば、使い所を厳選しないといけないのも納得が行く

ディアベル

そうだなァ

ディアベル

あァちなみに

ディアベル

お前さん、「お守り」持ってっか?

クランツ

ああ、団長にも言われているからな

ディアベル

ならいいな

ディアベル

無くすんじゃねェぞ

クランツ

……?

クランツ

分かったが……

やがて、城が見えてくる。

ディアベル

…音が聞こえた

ディアベル

まだ生きてる

クランツ

…引き締めろ

ディアベル

ったりめェだ

城は轟々と、空気を喰らうように炎をあげている。

石造りとはいえ、崩壊するのは時間の問題だと分かった。

その上空を、2つの影が飛び回っていた。

クランツ

団長!!!

ディアベル

高ェな、壁を使えば応戦できるかァ?

ガサッ

ディアベル

ヒュンッ

音の次に早い速度で空気を斬る音がしたかと思えば、

ディル

ひっ……

物陰からディルが顔を出した。

ディアベル

なんでィ、アンタか…

ディル

し、死ぬかと思った……

ディル

…奇襲というべきか、突然魔術結社が現れたんです!

ディル

それから団長は、被害を拡大させないため、ずっと上空で戦っています!

首元まで迫っていた刃から恐る恐る離れ、怯えた様子で話す。

クランツ

────避けろ!!

ディル

バンッ

パチパチパチ…

ディアベル

…派手にやってんねェ

ディル

ううぅ…

上空から火玉が降ってきたかと思えば、地面を爆風が飲み込んだ。

熱風に耐え、ディルを守りながら、ディアベルは目を開く。

クランツ

無事か!

ディル

あ…ありがとうございます……

ディアベル

いいってことよ

────ごめんね、皆

受け流そうと思ったんだけど

クランツ

クランツ

団長、ご無事で!

ディアベル

血の匂いはしねェなァ

ファーブラ

うん、この通り何ともないよ

ファーブラ

それより─────

高速で回転しながら、鋭利な何かがディアベル達へ向かう。

ガキ゛ンッ

ファーブラはいとも簡単にバリアのようなもので防いでしまった。

チッ……

クランツ

その、血鎌は……

ファーブラ

そう、君達は会ったことがあるよね

カリゴ

まーた防ぎやがって…!!

ディアベル

カリゴ、だったかァ

ディアベル

連れはどこにいんだ?

カリゴ

はあ!?

カリゴ

ふざけないでよ!

カリゴ

連れとかじゃねーし!

ディアベル

(……クソガキがよォ…)

ディアベル

(だがまぁ、十中八九イヴィ達んとこだな)

カリゴ

どーせ今頃死んでんじゃない??

───トドメは刺していない

カリゴ

うわ、噂するから来ちゃったじゃん

カリゴ

というか、殺さなかったわけ?

エクレール

…当分動けまい

ディアベル

死んでねェならすぐ合流できんなァ

カリゴ

その慢心が命取りになんだよ!

エクレール

すまない

エクレール

速く終わらそう

カリゴ

うっざ

ディアベル

(仲悪ィなコイツら)

ファーブラ

私はオーダーと戦っているから

ファーブラ

残党を頼めるかな?

クランツ

勿論です

ディル

う……が、がんばります…

ディル

ドロシー…早く戻ってきて……

ディアベル

無駄死にはさせねェよ

ディアベル

構えろ

廃墟同然の城で、血戦が行われようとしていた。

どうして騎士団に入ったの?

ディアベル

……ファーブラさんに誘われたからだ

ディアベル

まァ、俺はヴァルク帝国の生まれでよォ

ディアベル

そこはお隣さんのラビスト帝国とずっと戦争してんだ

ディアベル

そんで、ヴァルクのヤツらは狼ばっかでなァ

ディアベル

めんどーなことに、俺にもその遺伝子が入っちゃってるってわけよ

ディアベル

そんでェ、毛むくじゃらで背も2mあるヤツらと違って

ディアベル

俺はThe 人間

ディアベル

そんなんだから、群れを追い出された

ディアベル

でまァ、この国に逃げ込んできて

ディアベル

運悪く暴れちまったのを、ファーブラさんが助けてくれたんだよ

ディアベル

あの人すげェんだわ、努力の塊

ディアベル

そんでそこに魔術の知識が加わったらもう無敵でィ

ディアベル

だから、何か返さなくちゃって思ったんかもなァ

ディアベル

……柄にもなくこんな喋っちまった

ディアベル

あァ?リエルがいつも困ってるってェ?

ディアベル

いやァ、「ストッパーっていうイヴィ」が来てよかったねィ

イヴィ

……逆じゃね?

この作品はいかがでしたか?

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