💚「舘さーーん」
風呂場から阿部の声が反響している。火を止めて、阿部のもとへと駆け付けると、風呂場のすりガラスを少し開けて、髪を濡らしたまま困った顔で俺を見る阿部が口を尖らせた。
💚「シャンプー、なくなっちゃったんだけど?」
❤️「ああ、ごめんね?買い置き持ってくる」
💚「舘さんは?一緒に入らないの?」
拗ねるように甘える阿部が可愛いけど、こっちは火を使ってる最中。そもそも、右脚もまだ本調子じゃないし、バスタブもそこまで広くないので、唆られはするけど、今夜は初めから別々に入るつもりだった。
💚「……ありがと。後でね」
新しいシャンプーを渡すと、阿部は俺にキスをして、また風呂場へと消えた。
風呂上がりの阿部が戻るちょうどのタイミングで料理が出来上がった。
手の込んだものを作るには長い時間立っていないといけないので、夕食は、簡単にパスタとサラダにした。チーズたっぷりのカルボナーラと初夏の新玉ねぎをふんだんに使ったサラダ。
阿部はありがとう、とまたキスをして、俺を座らせ、俺の代わりに、作った料理をテーブルに並べてくれた。
💚「やっぱり美味しい。舘さんと一緒にいるようになって、俺、太った気がする」
❤️「え?全然だよ、どこが」
本当はもっと抱き心地がいい方がいいなと、密かに多めにカロリーを取らせてるけど、体質なのか、阿部はちっとも太らない。むしろ、痩せすぎていて、俺が食べさせてないみたいで心配になる。
💚「俺も翔太みたいに身体鍛えようかな?そうしたら、少しはいい感じになるかも」
❤️「え!絶対ヤダやめて!!」
思わず大きな声が出てしまい、阿部が大きな目をぱちくりとさせている。
痩せていても多少はぷにぷにした二の腕や、柔らかいお腹が、筋トレで引き締まるなんて嫌だ。楽しみが半減する。
💚「もー。変な舘さん」
阿部はそれでも上機嫌に、パスタをおかわりしてまで食べていた。
今では少しはまともに踊れるようになってきたのだが、それでも長いこと立っていると、脚が引き攣れるように痛む。それを知っている阿部は、食べて一休みすると、俺に風呂に入るように言った。
💚「洗い物はしておきます。一緒に寝ようね」
❤️「ありがとう」
今日は金曜日。
阿部は朝から何かと忙しかったはずだ。この曜日に俺の家に来ると、よくうつらうつらしているのを見かける。
案の定。
風呂から上がると、阿部は先にベッドで寝落ちしていた。枕元にはメモで走り書き。
💚『後で起こして』
優しく頭を撫でてやり、キスを落とすと、俺は大人しくそのまま寝た。
💚「起こしてって言ったのに」
少し拗ねている阿部に、キスをして、朝が早い俺は支度を済ませ、出掛けるばかり。阿部も、仕事に合わせてもうそろそろ帰る時間だった。
❤️「ごめんね。今度ゆっくりね?」
💚「……わかった。次会う時はゆっくりしようね」
❤️「うん。じゃ、また。朝ごはん作ってあるから、持っていって」
💚「おにぎり?」
❤️「そう」
💚「やったあ!!」
包みを受け取り、無邪気に喜ぶ阿部が可愛い。阿部の好きそうな具材を詰めて、簡単に握っただけなのにこんなに喜んでくれるなんて本当に嬉しい。
好きな人の胃袋を掴む、なんて言葉があるけど、好きな人に掴まれる、ってこともあると思う。俺は阿部の笑顔や喜ぶ顔が見たくて、腕を振るうのが最近の楽しみになっているし、これからも阿部の笑顔を独占したい。
そう言うと、阿部が嬉しそうにはにかんで笑った。
おわり。
コメント
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ほっこりします☺️
なんてかわいい彼女💚にやさしい彼❤️なのかしら😍