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#シングルファザー
「あ! そうそう! 美花さん、奏ちゃんたちの披露宴で入場曲を作曲されたんですよね?」
沈み掛けた空気を払い飛ばすように、瑠衣が声をワントーン高く上げる。
「はっ……はい。DTMで音楽を作りました」
「えっと、DTMって………何でしょう?」
「ざっくり言えば、パソコンを使って音楽を作る事ですね……」
「カッコいいっ! やっぱり音大とか音楽系の専門学校に通われてたんですか?」
「いえ……。父が趣味でDTMで音楽を作ってて、私もやってみたいって思って、父に教えてもらったのがきっかけです。なので、私、楽譜が読めないんです」
「わぁっ…………お父様が師匠だなんて素敵っ!」
濃茶の瞳を輝かせながらDTMの話を聞く瑠衣にとって、美花は出会った事のないタイプの女性のようだ。
「…………瑠衣は、学生の頃から楽器を演奏する人としか関わってこなかったから、浦野さんのように、作曲する人に出会うのは初めてだし、興味深々なんだろう」
「立川音大にも、作曲科はあっただろ? 管弦打楽器学科と絡みはなかったのか?」
圭が不思議そうな面持ちで、侑に問い掛ける。
「…………作曲科はあったが、繋がりは、大してなかったかもしれん」
美花と瑠衣の会話を耳に挟みながら、侑とおにーさんが談笑している。
瑠衣が彼女にDTMに関する質問を続けると、美花も笑みを浮かべながら答え、自己紹介をした時と比べたら、大分打ち解けてきたようだった。
「あのっ……美花さんがよろしければ、連絡先、交換しませんか? もっとDTMのお話も聞いてみたいし……」
美花は、まさか瑠衣から連絡先の交換の申し出があるとは思わなかったのか、薄茶の瞳を瞬かせる。
「わ……私で良ければ……是非っ」
美花と瑠衣はスマートフォンをバッグから取り出し、美花がQRコードを瑠衣に見せると、瑠衣もカメラを起動させ、読み込ませる。
「わぁ……ありがとうございますっ! 嬉しい!」
「こちらこそ……!」
互いにペコリと会釈をすると、美花は新たな縁ができた事で、温かな気持ちが心の中に浸透していった。
「さて、そろそろ行くか」
侑のひと言で、三人が立ち上がると、お茶代は侑が支払ってくれて、美花はお礼を述べる。
「響野さん、お茶、ごちそうさまでした。美味しかったです」
「…………浦野さん。俺が言うのもおかしな話だが…………瑠衣と、今後も仲良くしてやってくれないか?」
「もちろんですっ! こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
眼光鋭い一重瞼の眼差しが鳴りを潜め、美花に柔らかく向けられると、ペコリと頭を下げる彼女。
ホテルを後にした美花と圭は、響野夫妻を立川駅の改札まで見送った。
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