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#シングルファザー
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「今日は…………すまなかった……」
響野夫妻を見送った後、隣にいる圭が徐に美花と向かい合う。
「え? おにーさん…………何で謝ってるの?」
「いや…………俺が……君をお茶に誘ったのに…………」
言葉を濁らせている彼に、美花は無言で首を横に振った。
「……かなチーとれいチェルの結婚式に出席したからこそ、新たな出会いもあったし。それに…………ユウユウとルイルイ、お二方、いい夫婦っていうか……いいコンビだね」
「…………フッ……響野夫妻にも、さっそくあだ名呼びが発動したか」
「えへへ……」
圭に見下ろされて気恥ずかしくなった美花は、後頭部を撫でた。
週末の喧騒と多くの人波が、立川駅のコンコースで交錯する中、美花と圭は互いに眼差しを絡ませ合う。
ひとしきり無言のままでいた二人だったけど、おにーさんが何かを言いたげに、形の綺麗な唇を微かに震わせていた。
「なぁ……」
圭の呼び掛けに、彼女が小首を傾げると、彼は躊躇いがちに言葉を置いていく。
「君がまだ時間が大丈夫なら…………俺は時間の許す限り…………君と一緒にいたいんだが……」
目力の強い奥二重の瞳に射抜かれた美花は、吸い込まれそうな深さを湛える瞳から、逸らしたくても逸らせられない。
それは、『俺から目を逸らすな』と、眼差しで迫られているみたいで、美花の喉の奥を、甘く締め付けていた。
今、彼女は恋心を抱いている男の人と一緒にいる。
その男性から、まだ二人でいたいと、はっきり言われているのだ。
美花は、急激に羞恥に襲われ、根負けしたように辿々しく瞼を伏せる。
「…………わっ……私……」
「……どうした?」
消え入るような声音でポツリと零すと、圭が屈んで美花の顔に寄せてくる。
低くて落ち着いた声音が彼女の耳朶をそっと掠め、背筋がゾクリと迸った。
「…………私も……まだ…………おにーさんと……一緒にいたい……」
やっとの思いで振り絞った声を耳にした圭が、美花の小さな手を取る。
「行くぞ」
彼が来た道を戻り、彼女の手をしっかりと繋いだまま、ファーレ立川方面へと引き返していく。
美花は、胸中に漣が幾重にも広がっていくのを感じながら、彼の広い背中を、黙ったまま見つめる事しかできなかった。